現場コンパス

リスクアセスメントのやり方|記入例・テンプレート付き【2026年版】

著者: GenbaCompass16

「リスクアセスメントって、難しそう…」

そう思っている人は多い。確かに、法律用語が並んでいて、最初は取っつきにくい。

でも、やっていることはシンプルだ。「危険を見つけて、対策を決める」。これだけだ。

この記事では、リスクアセスメントの基本から、現場ですぐに使える5ステップの進め方まで解説する。実際のシートの書き方についてはリスクアセスメントの書き方ガイドも参照してほしい。


リスクアセスメントとは何か

リスクアセスメントとは、職場の危険を事前に特定し、リスクの大きさを評価して、対策の優先順位を決める手法だ。

従来の安全管理との違い

従来の安全管理は、事故が起きてから対策を打つという「後追い」の考え方だった。

リスクアセスメントは違う。事故が起きる前に、危険を潰しておくという「先回り」の考え方だ。

項目 従来の安全管理 リスクアセスメント
タイミング 事故後 事故前
アプローチ 再発防止 予防
範囲 発生した事故 すべての危険

なぜ今、リスクアセスメントが必要なのか

労働安全衛生法の改正により、2016年(平成28年)から一定の化学物質を取り扱う事業場ではリスクアセスメントが義務化された。

また、厚生労働省は業種を問わず、すべての事業場にリスクアセスメントの実施を推奨している。

背景:

  • 労働災害の減少ペースが鈍化している
  • 技術の高度化で新たな危険が生まれている
  • ベテラン退職による安全ノウハウの喪失

リスクアセスメントの5ステップ

厚生労働省の指針に基づく、リスクアセスメントの標準的な進め方を紹介する。

ステップ1:危険性・有害性の特定

まず、職場にどんな危険があるかを洗い出す。

特定の方法:

  • 作業手順書をもとに、各作業の危険を列挙
  • 過去のヒヤリハット報告や事故事例を参照
  • 現場をウォークスルーして、危険箇所を確認

特定すべき危険の例:

  • 機械への巻き込まれ
  • 高所からの墜落・転落
  • 重量物の落下
  • 有害物質への接触
  • 転倒・つまずき

この段階では、思いつく限りの危険を出し切ることが重要だ。

ステップ2:リスクの見積もり

特定した危険について、リスクの大きさを評価する。

リスクの見積もり方法:

リスク = 重篤度 × 発生可能性

重篤度 点数 内容
致命的 3点 死亡・永久障害
重大 2点 休業災害
軽微 1点 軽傷・応急処置
発生可能性 点数 内容
高い 3点 頻繁に発生する可能性
中程度 2点 時々発生する可能性
低い 1点 まれに発生する可能性

点数を掛け算して、リスクの大きさを数値化する。

ステップ3:リスク低減措置の検討

リスクの大きさに応じて、対策を検討する。

対策の優先順位(効果が高い順):

  1. 本質的対策:危険な作業や物質をなくす
  2. 工学的対策:安全装置や防護設備を設置
  3. 管理的対策:作業手順やルールを整備
  4. 保護具の使用:最後の手段として保護具を着用

例えば、高所作業の場合:

  • 本質的対策:高所作業をなくす(地上で作業できないか検討)
  • 工学的対策:足場や手すりを設置
  • 管理的対策:作業手順書の整備、教育の実施
  • 保護具:安全帯(フルハーネス)の着用

ステップ4:リスク低減措置の実施

検討した対策を実行に移す。

実施時のポイント:

  • 責任者と期限を明確にする
  • 必要な予算を確保する
  • 関係者に周知徹底する

対策の実施状況を記録しておくことも重要だ。

ステップ5:記録と見直し

実施した内容を記録し、定期的に見直す。

記録すべき内容:

  • 特定した危険性・有害性
  • リスクの見積もり結果
  • 実施した対策
  • 残留リスク(対策後も残るリスク)

見直しのタイミング:

  • 定期的(年1回など)
  • 作業内容や設備が変わったとき
  • 事故やヒヤリハットが発生したとき

リスクアセスメントの具体例

実際の例で見てみよう。

例:フォークリフト作業

ステップ1:危険性の特定

  • フォークリフトと作業者の接触
  • 荷崩れによる落下
  • 積載物の視界不良による事故

ステップ2:リスクの見積もり

危険:フォークリフトと作業者の接触

  • 重篤度:3(致命的)
  • 発生可能性:2(中程度)
  • リスク:3 × 2 = 6(高リスク)

ステップ3:対策の検討

  • 本質的対策:自動搬送システムの導入(将来的に検討)
  • 工学的対策:歩車分離、警報装置の設置
  • 管理的対策:運行ルートの明確化、教育の実施
  • 保護具:反射ベストの着用

ステップ4:対策の実施

  • 歩行者通路をテープで明示(即日実施)
  • 警報装置の設置(1ヶ月以内)
  • 安全教育の実施(来週)

ステップ5:記録と見直し

  • リスクアセスメント表に記録
  • 3ヶ月後に効果を検証

よくある失敗と対策

リスクアセスメントで陥りやすい失敗を紹介する。

失敗1:危険の洗い出しが不十分

一人で考えると、見落としが多くなる。

対策:複数人でブレインストーミングする。現場の作業者にヒアリングする。過去のヒヤリハット報告を活用する。

失敗2:対策が「保護具の使用」だけになる

保護具は最後の手段だ。それだけに頼ってはいけない。

対策:対策の優先順位(本質的→工学的→管理的→保護具)を意識する。「危険そのものをなくせないか」を最初に考える。

失敗3:やりっぱなしで見直しをしない

一度やって終わりでは、効果が持続しない。

対策:定期的な見直しをスケジュールに組み込む。事故やヒヤリハット発生時は必ず見直す。


リスク見積り方法の比較:マトリクス法・加算法・積算法

リスクの見積もりには複数の方式が存在し、現場の状況や要求される精度に応じて使い分けることが重要だ。代表的な3つの方式を比較する。

マトリクス法(リスクマトリクス)

最も広く使われているリスク見積り方式だ。重篤度と発生可能性の2軸をマトリクス(表)上にプロットし、リスクレベルを「高・中・低」などのカテゴリで判定する。

特徴と適用場面

項目 内容
評価結果 カテゴリ(高・中・低)での判定
計算方法 マトリクス表を参照して判定
適した場面 製造現場、建設現場、日常的なリスク評価
メリット 視覚的に理解しやすく、担当者間でのコミュニケーションが容易
デメリット 境界値付近の判定があいまいになりやすい

マトリクス法はISOやOHSAS(ISO 45001の前身)の安全管理規格でも推奨されており、製造業・建設業を問わず幅広く適用できる。厚生労働省の「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」でもこの方式が例示されている。

加算法(リスク加算方式)

重篤度と発生可能性に各スコアを設定し、足し算でリスクスコアを算出する方式だ。

計算例:重篤度スコア(1〜4点)+ 発生可能性スコア(1〜4点)= リスクスコア(2〜8点)

項目 内容
評価結果 数値スコア(合計値)
計算方法 各指標のスコアを合計
適した場面 重篤度が高い場合でも低リスクと判定されすぎない調整が必要な場面
メリット 重篤度が高い危険が過小評価されにくい
デメリット 積算法に比べてリスクの大小の差が分かりにくい

加算法は、「発生頻度は低いが致死的な事故」を適切に高リスクと判定できる点が積算法との大きな違いだ。

積算法(リスク積算方式)

重篤度と発生可能性のスコアを掛け算してリスクスコアを算出する方式だ。本記事のステップ2でも紹介した「重篤度×発生可能性」がこれにあたる。

項目 内容
評価結果 数値スコア(積)
計算方法 各指標のスコアを掛け合わせる
適した場面 数値による明確な優先順位付けが必要な場面
メリット スコアの差が大きくなるため優先順位が付けやすい
デメリット 高重篤度×低発生頻度の組み合わせが過小評価されることがある

3方式の比較まとめ

比較項目 マトリクス法 加算法 積算法
計算の複雑さ 低(表参照のみ) 低(足し算) 低(掛け算)
数値の直感的理解 高(カテゴリ表示)
致命的事故の表現力 高(直接カテゴリ化) 中〜高 中(発生頻度低いと過小評価の恐れ)
法令・規格との適合性 高(多くの指針で例示) 高(多くの現場で採用)
推奨場面 汎用・日常的なRA 安全重視が強い業界 優先順位付けを重視する場面

実務では、厚生労働省の指針に基づくマトリクス法または積算法のいずれかを採用し、自社の業種・規模・作業内容に合わせて評価基準を定めることが推奨される。リスク低減措置の具体的な選定方法についてはリスク低減措置の選定と実施で詳しく解説している。


残留リスクの許容判断基準

対策を講じた後も、リスクをゼロにすることは現実的に不可能だ。対策実施後に残存する「残留リスク」をどの基準で許容するかを明確にしておくことが、実効性のあるリスクアセスメントには不可欠だ。

残留リスクとは

残留リスクとは、リスク低減措置を実施した後もなお残存するリスクのことだ。安全設備の設置や作業手順の改善を行っても、人的要素や不可抗力による危険を完全に排除することはできない。残留リスクは以下の理由で必ず発生する。

  • 本質的対策(危険の除去)が技術的・経済的に困難な場合
  • 工学的対策を施しても人の行動に依存する部分が残る場合
  • 合理的に予見できない使用方法・環境変化によるリスク

残留リスクの許容判断基準の考え方

残留リスクが「許容できるレベル」かどうかを判断するための代表的な基準を示す。

1. ALARPの原則(As Low As Reasonably Practicable)

「合理的に実行可能な限り低く抑える」という考え方だ。追加の対策にかかるコスト・労力と、その対策によって得られるリスク低減効果を比較し、費用対効果が合わない場合に残留リスクとして許容する判断基準となる。ISOや欧州機械指令でも採用されている概念だ。

2. リスクマトリクスによるゾーン判定

多くの企業では、残留リスクを以下の3ゾーンで分類して管理する。

ゾーン リスクレベル 対応方針
許容不可ゾーン 高リスク 追加対策を必ず実施する。対策が困難な場合は作業中止も検討
ALARP(条件付き許容)ゾーン 中リスク 費用対効果を評価し、合理的な追加対策を検討・実施する
許容ゾーン 低リスク 現状の管理措置を継続しながら定期的にモニタリングする

3. 残留リスクの労働者への通知義務

厚生労働省の指針では、リスク低減措置を講じてもなお残留するリスクについては、「関係者に周知すること」が求められている。具体的には以下の対応が必要だ。

  • 残留リスクの内容と対処方法を作業手順書・安全マニュアルに記載する
  • 対象作業者への教育・訓練を実施する
  • 作業場所への掲示、注意ラベルの貼付などで注意喚起する

残留リスク管理の実務運用

残留リスクは「記録して終わり」ではなく、継続的に管理することが重要だ。以下のサイクルを回すことで残留リスクの累積的な低減が実現できる。

  1. 記録:残留リスクの内容・リスクレベル・許容判断の根拠を文書化する
  2. 周知:関係作業者への教育と現場掲示で周知する
  3. モニタリング:ヒヤリハット報告・定期パトロールで残留リスクの状態変化を監視する
  4. 見直し:技術進歩や設備更新のタイミングで追加対策の可能性を再評価する

よくある質問(FAQ)

Q. リスクアセスメントの実施は法律で義務付けられていますか?

化学物質を取り扱う事業場では、一定の化学物質について2016年(平成28年)から義務化されている。それ以外の業種・危険については努力義務とされているが、厚生労働省はすべての事業場への実施を推奨している。また、建設業では元請事業者が作業計画策定時にリスクアセスメントを実施することが求められる。

Q. リスクアセスメントは誰が実施するべきですか?

作業内容を熟知している現場管理者・作業者が中心となって実施することが推奨される。安全管理者や産業医の専門的意見も取り入れながら、多職種が連携して行うことで見落としが減る。一人の担当者だけで行うと視点が偏りやすく、危険の見落としにつながる。

Q. リスクアセスメントの結果はどのくらいの期間、保存すればよいですか?

法律上の明確な保存期間は定められていないが、記録は3〜5年以上保存することが実務的な目安とされる。設備や作業内容の変更があった際に過去のアセスメント結果を参照できる状態を維持することが重要だ。

Q. パート・アルバイト・外国人労働者のリスクアセスメントへの参加はどう対応すべきですか?

雇用形態や国籍に関係なく、すべての作業者が対象となる。外国語対応が必要な場合は、多言語版のリスクアセスメントシートや翻訳ツールを活用し、言語の壁なく危険情報を共有することが安全確保の観点から不可欠だ。


リスクアセスメントを効率化する

正直、リスクアセスメントは手間がかかる。危険の洗い出し、リスクの見積もり、対策の検討…。

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まとめ

リスクアセスメントは、事故が起きる前に危険を潰す予防的な手法だ。

5ステップの進め方

  1. 危険性・有害性の特定(危険を洗い出す)
  2. リスクの見積もり(重篤度×発生可能性)
  3. リスク低減措置の検討(優先順位をつける)
  4. リスク低減措置の実施(責任者と期限を明確に)
  5. 記録と見直し(定期的にPDCA)

対策の優先順位

  1. 本質的対策(危険をなくす)
  2. 工学的対策(安全装置を設置)
  3. 管理的対策(ルールを整備)
  4. 保護具の使用(最後の手段)

リスクアセスメントは、一度やって終わりではない。作業内容や設備が変わるたびに見直し、継続的に安全レベルを高めていくことが重要だ。


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國分 良太

著者

國分 良太

制御設計エンジニア → AI・IoT・DX推進|東京の製造業メーカー開発部門

製造業の現場で設備設計・改善プロジェクト・品質向上施策に従事。なぜなぜ分析(RCA)やリスクアセスメントの実務経験をもとに、現場DXを支援するアプリケーションの開発と情報発信に取り組んでいます。

※ 本サイトは所属企業とは関係のない個人活動です。記載の見解は筆者個人のものです。

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