「最近、あの設備の音がいつもと違う気がする…」
ベテランの技術者は、設備の音を聴いただけで異常を察知する。しかし、その「耳」は長年の経験でしか養えないと思われてきた。
設備の異常は、多くの場合「音」に現れる。音の変化に気づけば、故障を未然に防ぐことができる。
この記事では、設備の異音から故障の兆候を見つける方法と、最新のAI異音検知技術について解説する。
なぜ設備は異音を発するのか
設備が異音を発する原因は、主に以下の通りだ。
異音が発生する主な原因
| 原因 | 具体例 | 発生する音 |
|---|---|---|
| 摩耗 | ベアリングの劣化、歯車の摩耗 | ゴロゴロ、シャー |
| 潤滑不良 | グリース切れ、油膜不足 | キーキー、ギシギシ |
| 異物混入 | ゴミ、切粉の侵入 | カラカラ、ジャリジャリ |
| 緩み | ボルト、ナットの緩み | ガタガタ、カタカタ |
| 共振 | 回転数と固有振動数の一致 | ビーン、ウォーン |
| 過負荷 | 想定以上の負荷 | うなり音の増大 |
ベアリング(軸受)の異音
設備の異音で最も多いのが、ベアリングの異常だ。
正常なベアリング: 滑らかに回転し、音は静か。
異常なベアリング:
- 「ゴロゴロ」:玉やころの欠け、転走路面の損傷
- 「シャー」:摩耗による高周波成分の変化
- 「キーキー」:潤滑剤の不足
- 周期的な衝撃音:内輪・外輪の損傷
異音が聞こえたら、早急に点検することが重要だ。
異音診断の基本
設備の異音を診断する基本的な方法を紹介する。
聴診棒による診断
最もシンプルな方法が「聴診棒」を使った診断だ。
使い方:
- 聴診棒を設備に当てる
- 反対側を耳に当てて音を聴く
- 正常時と比較して変化を確認
ポイント:
- 同じ場所、同じ条件で比較する
- 定期的に聴いて、変化に気づけるようにする
- 複数箇所を比較する
振動計による診断
振動を数値化して診断する方法。
測定項目:
- 振動速度(mm/s)
- 振動加速度(G)
- 周波数スペクトル
メリット:
- 定量的に評価できる
- 経時変化を記録できる
- 基準値との比較ができる
音響診断(マイクによる診断)
マイクで設備音を録音し、分析する方法。
メリット:
- 非接触で測定できる
- 広い範囲を一度に診断できる
- 人間の聴覚では分からない異常も検出可能
ベテランの「耳」をAIで再現
近年、AI(人工知能)を使った異音検知が注目されている。
AI異音検知の仕組み
学習フェーズ:
- 正常時の設備音を大量に録音
- AIが正常音のパターンを学習
- 「正常な音」のモデルを構築
検知フェーズ:
- 設備音をリアルタイムで取得
- 学習したモデルと比較
- 異常を検知したらアラート
AI異音検知のメリット
1. 24時間監視 人間のように疲れることなく、常時監視できる。
2. 定量的な判断 「なんとなくおかしい」ではなく、数値で異常度を評価。
3. 早期検知 人間の耳では気づかない微細な変化も検出。
4. 技術継承 ベテランの「耳」をAIに移植し、若手でも同じ判断が可能。
5. ノイズ耐性 工場の環境音に対するノイズ耐性が高く、誤検知を低減。
外れ値検知という手法
異常音が稀にしか発生しない場合、「外れ値検知」という手法が使われる。
仕組み:
- 正常音のみを学習
- 「正常音以外の音」を異常と判定
- 異常データがなくても学習可能
これにより、過去に発生したことのない異常も検知できる。
異音診断の対象設備
異音診断が特に有効な設備を紹介する。
回転機器
- モーター:ベアリング、巻線の異常
- ポンプ:インペラの摩耗、キャビテーション
- ファン:羽根のアンバランス、軸の異常
- コンプレッサー:弁の異常、ベアリングの劣化
伝達機構
- ギアボックス:歯車の摩耗、欠損
- チェーン:伸び、スプロケットの摩耗
- ベルト:緩み、亀裂
工作機械
- スピンドル:ベアリングの劣化
- 送り軸:ボールねじの摩耗
- 加工音:工具の摩耗、びびり
異音診断を始めるステップ
異音診断を現場に導入するためのステップを紹介する。
ステップ1:対象設備の選定
すべての設備を診断するのは現実的ではない。以下の基準で優先順位をつける。
選定基準:
- 故障時の影響が大きい(ボトルネック設備)
- 過去に突発故障が多い
- 異音が発生しやすい回転機器
ステップ2:正常音の記録
異常を検知するには、まず「正常な音」を知る必要がある。
記録のポイント:
- 設備が健全な状態で録音
- 複数の運転条件で録音(起動時、定常運転、停止時)
- 同じ場所、同じ条件で録音
ステップ3:定期的な診断
定期的に音を聴いて、変化を確認する。
診断の頻度:
- 重要設備:毎日または毎週
- 一般設備:毎月
- 変化があれば頻度を上げる
ステップ4:異常時の対応
異常を検知したら、速やかに対応する。
対応の流れ:
- 異常の確認(本当に異常か)
- 原因の推定
- 対策の実施(計画停止、部品交換など)
- 効果の確認
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スマートフォンのマイクで設備音を録音するだけで、異常の兆候を分析。高価な専用センサーを設置しなくても、手軽に異音診断を始められる。
ベテランの「耳」をAIが再現し、経験の浅い担当者でも異常を検知できる。
まとめ
設備の異常は、多くの場合「音」に現れる。
異音の主な原因:
- ベアリングの摩耗・損傷
- 潤滑不良
- 異物混入
- 部品の緩み
異音診断の方法:
- 聴診棒による診断
- 振動計による診断
- 音響診断(マイク・AI)
AI異音検知のメリット:
- 24時間の常時監視
- 人間の耳では分からない異常も検出
- ベテランの「耳」をAIで再現
導入のステップ:
- 対象設備の選定
- 正常音の記録
- 定期的な診断
- 異常時の対応
「いつもと違う音がする」と気づいた時には、もう手遅れかもしれない。日頃から設備の音に耳を傾け、変化に気づける体制を整えよう。
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