建設業の労災死亡232人
2024年データで見る事故の実態
厚生労働省 確定値を徹底分析|現場で使える対策も解説
厚生労働省が発表した2024年の確定データを見ると、「対策を講じているはずの現場」でも事故が発生している実態が浮かび上がる。本記事では、最新データをもとに事故の傾向と、現場で実践できる対策を整理した。
2024年の建設業労災データ
まず、押さえておくべき主要な数値を確認する。
過去3年の推移を見ると、注視すべき動きがある。
| 年度 | 死亡者数 | 前年比 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2022年 | 281人 | — | — |
| 2023年 | 223人 | ▼20.6% | 大幅減少 |
| 2024年 | 232人 | ▲4.0% | 再び増加 |
2023年に大幅減少したものの、2024年は再び増加に転じた。一時的な改善で終わらせないためには、継続的な安全対策の徹底が不可欠である。
事故タイプ別に見る傾向
232件の死亡事故について、タイプ別の内訳を確認する。
墜落・転落が77人で約3割を占め、最多となっている。
| 事故タイプ | 死亡者数 | 割合 | 主な状況 |
|---|---|---|---|
| 墜落・転落 | 77人 | 33% | 足場、屋根、はしごから |
| 交通事故(道路) | 約50人 | 22% | 現場への移動中 |
| 挟まれ・巻き込まれ | 約40人 | 17% | 重機との接触 |
| その他 | 約65人 | 28% | 飛来落下、崩壊など |
墜落事故が減らない理由
建設業労働災害防止協会のデータから、重要な事実が判明している。
墜落事故の56%は、安全帯を「装着していたが使用していなかった」ケースである。
設備の問題ではなく、運用面の課題であることが明らかになっている。
墜落事故の発生場所別データも確認しておく。
| 発生場所 | 割合 | 特徴 |
|---|---|---|
| 屋根・屋上・開口部 | 約30% | 開口部への墜落が多い |
| 足場 | 約20% | 組立・解体時に集中 |
| はしご・脚立 | 約15% | 不安定な設置が原因 |
熱中症は過去最多を記録
2024年の熱中症データは、特に注意が必要な結果となった。
| 項目 | 全産業 | 建設業 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 熱中症 死傷者数 | 1,257人 | 228人 | 過去最多を更新 |
| 熱中症 死亡者数 | 31人 | 10人 | 建設業が業種別で最多 |
死亡者31人のうち、30人が7〜8月に発生している。
また「作業後型」の熱中症も増加傾向にある。作業中は症状が出なくても、帰宅後に重篤化するケースが報告されている。作業後の体調確認も重要な対策となる。
高齢化と労災の関係
建設業の高齢化は、労災リスクにも影響を与えている。
| 年齢層 | 就業者の割合 | 特徴 |
|---|---|---|
| 55歳以上 | 約37% | 全産業平均より高い水準 |
| 29歳以下 | 約12% | 若手人材の確保が課題 |
労災データにおいても、60歳以上の死傷者が全体の約4分の1を占めている。
高齢者に多い事故タイプは以下のとおりである。
- 転倒:バランスを崩しての転倒事故
- 動作の反動:腰痛、筋肉痛などの身体負担
明日からできる対策
データを踏まえ、現場で実践できる具体的な対策を整理した。
- フルハーネス型安全帯の使用確認(装着だけでなく、フックの固定まで確認)
- 足場の作業開始前点検(毎日実施を徹底)
- 手すり先行工法の採用検討
- 開口部の養生確認・転落防止柵の設置
- WBGT値のチェック(28℃以上で厳重警戒態勢)
- 20〜30分ごとの水分・塩分補給の声かけ
- 作業後の体調確認(帰宅後の発症リスクに注意)
- 暑熱順化期間の確保(夏本番前に身体を慣らす期間を設定)
- 作業内容と体力のマッチング(適材適所の配置)
- こまめな休憩時間の確保
- 滑りにくい床材・十分な照明の設置
- 若手とのペア作業体制の導入
まとめ
2024年のデータから明らかになった重要ポイントを整理する。
- 建設業の死亡者数 232人、うち墜落転落が 77人(約3割)
- 墜落事故の56%は安全帯を装着していたが使用していなかったケース
- 熱中症は過去最多を更新、建設業で10人が死亡
- 60歳以上の労災事故が増加傾向
特に安全帯の「未使用」問題は、設備投資なしで改善できる重要なポイントである。
まずは朝礼等でこれらのデータを共有し、現場全体の安全意識向上につなげていただきたい。