リスクアセスメントとは?書き方・記入例
5ステップ実践ガイド【2026年版】
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リスクアセスメント、ちゃんと書けていますか?
「リスクアセスメントを提出してくださいと言われたけど、何を書けばいいか分からない」
「毎回同じような内容になってしまう」
こんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
リスクアセスメントは、労働安全衛生法で定められた重要な安全管理手法です。しかし、正しい書き方を学ぶ機会は少なく、形式的な書類作成で終わっているケースも見受けられます。
本記事では、リスクアセスメントの正しい進め方と書き方を、記入例を交えて解説します。
リスクアセスメントとは
リスクアセスメントとは、職場に潜む危険性や有害性を特定し、リスクの大きさを見積もり、優先度を付けて低減措置を講じる一連の手順のことです。
法的根拠
労働安全衛生法第28条の2において、製造業や建設業等の事業者は、リスクアセスメントの実施が「努力義務」とされています。
また、2016年6月からは、一定の危険有害化学物質を取り扱う場合のリスクアセスメントが「義務」となりました。
KY活動との違い
| 項目 | KY活動 | リスクアセスメント |
|---|---|---|
| 実施タイミング | 毎日(作業開始前) | 定期的・変更時 |
| 対象範囲 | 当日の作業 | 作業全体・設備全体 |
| リスクの評価 | 定性的 | 定量的(点数化) |
| 実施者 | 現場作業者 | 管理者・専門家を含む |
| 記録の詳細度 | 簡易 | 詳細 |
KY活動は毎日の「気づき」を共有する活動、リスクアセスメントは体系的に「評価・対策」を行う活動です。両者を組み合わせることで、より効果的な安全管理が可能になります。
リスクアセスメントの5ステップ
1970年代にイギリスで確立された手法が、2006年に日本で法制化されました。基本は5つのステップで進めます。
1危険性・有害性の特定
まず、作業や設備に潜む危険性・有害性を洗い出します。
特定のポイント
- 作業手順に沿って、一つずつ危険を確認する
- 過去の事故事例、ヒヤリハット報告を参考にする
- 現場を実際に見て回り、危険箇所を確認する
- 作業者からヒアリングを行う
危険性・有害性の例
- 高所からの墜落・転落
- 重機との接触・挟まれ
- 感電
- 有害物質へのばく露
- 騒音・振動
2リスクの見積り
特定した危険性・有害性について、リスクの大きさを数値化します。
一般的な見積り方法は「重篤度」×「発生可能性」で点数を算出します。
重篤度の基準例
| 点数 | レベル | 内容 |
|---|---|---|
| 10 | 致命的 | 死亡または障害が残る |
| 6 | 重大 | 休業1ヶ月以上 |
| 3 | 中程度 | 休業1週間〜1ヶ月 |
| 1 | 軽微 | 不休災害または軽傷 |
発生可能性の基準例
| 点数 | レベル | 内容 |
|---|---|---|
| 4 | 高い | 日常的に発生する可能性がある |
| 2 | 中程度 | 時々発生する可能性がある |
| 1 | 低い | ほとんど発生しない |
リスクポイント = 重篤度 × 発生可能性
3優先度の設定
リスクポイントに基づいて、対策の優先度を決定します。
| リスクポイント | 優先度 | 対応 |
|---|---|---|
| 20以上 | 最優先 | 直ちに対策を実施。作業中止も検討 |
| 10〜19 | 高 | 速やかに対策を実施 |
| 5〜9 | 中 | 計画的に対策を実施 |
| 4以下 | 低 | 現状維持または改善検討 |
4リスク低減措置の検討・実施
優先度の高いリスクから、低減措置を検討・実施します。
低減措置の優先順位
- 本質的対策:危険な作業・物質そのものをなくす
- 工学的対策:安全装置、防護柵、換気設備の設置
- 管理的対策:作業手順、教育訓練、立入制限
- 個人用保護具:ヘルメット、安全帯、保護メガネ
上位の対策ほど効果が高く、下位の対策は「最後の手段」と考えます。
5記録・見直し
実施したリスクアセスメントの結果を記録し、定期的に見直します。
見直しのタイミング
- 設備を新設・変更・解体するとき
- 作業方法・手順を変更するとき
- 労働災害・ヒヤリハットが発生したとき
- 定期的な見直し(年1回以上推奨)
リスクアセスメントシートの記入例
🏗️ 建設業|足場組立作業の例
🏭 製造業|プレス作業の例
よくある間違いと対策
間違い1:危険性の特定が抽象的
❌ 悪い例:「高所作業で危険」
✅ 良い例:「足場2段目で配管取付け作業中、足場板の隙間から工具を落とし、下の作業者に当たる」
具体的に、どこで・何をしているときに・何が起きるかを記載します。
間違い2:リスク評価が主観的
「なんとなく危なそうだから10点」ではなく、基準表に沿って客観的に評価します。評価基準は事前にチーム内で統一しておきましょう。
間違い3:対策が「注意する」で終わっている
❌ 悪い例:「高所作業時は注意する」
✅ 良い例:「親綱を先行設置し、安全帯のフックを常時掛けた状態で作業する」
具体的な行動レベルで記載します。
間違い4:作成後に見直さない
リスクアセスメントは作成して終わりではありません。作業条件の変化や新たなヒヤリハットに応じて、定期的に見直すことが重要です。
実施体制の作り方
1. 経営者によるコミットメント
まず、社長や工場長などのトップが、リスクアセスメント実施を表明します。安全管理方針に組み込み、全社的な取り組みであることを明確にします。
2. 推進チームの編成
- リーダー:安全管理者または現場責任者
- メンバー:各部門・工程の代表者、作業者代表
- 必要に応じて:安全衛生委員会、外部専門家
3. 教育・訓練の実施
メンバー全員が、リスクアセスメントの目的と手法を理解していることが重要です。初回実施前に勉強会を開催することをおすすめします。
業種別リスクアセスメントの違い:建設業 vs 製造業
リスクアセスメントは法律上は共通の枠組みだが、実際の実施方法・評価の観点・書式は建設業と製造業で大きく異なる。自社の業種に合ったアプローチを理解しておくことが重要だ。
| 比較項目 | 建設業 | 製造業 |
|---|---|---|
| 実施タイミング | 工事着工前・工程変更時・天候変化時 | 新製品導入時・設備変更時・年次定期 |
| 評価対象 | 作業ごとに変化(高所・掘削・重機等) | 設備・ライン単位で固定的 |
| 主なリスク | 墜落・落下・挟まれ・崩壊 | 機械への巻き込み・化学物質・爆発 |
| 評価メンバー | 現場監督・職長・安全管理者 | 生産技術・品質管理・設備保全・安全担当 |
| 記録保存 | 工事完了後3年以上推奨 | 設備廃棄まで保存が望ましい |
| 特有の規制 | 足場・クレーン等の設置届出と連動 | 化学物質リスクアセスメント(2024年義務化) |
建設業のリスクアセスメントの特徴
建設業では作業内容が日々変わるため、工程ごとの動的なリスクアセスメントが必要だ。特に以下の3点が製造業と異なる。
- 天候・環境変化への対応:雨天・強風・夏の熱中症リスク等を作業前に評価する「当日版リスクアセスメント」の実施が効果的
- 混在作業のリスク:複数の業者が同じ現場で作業する場合、相互の作業が干渉するリスクを元請が統括して評価する義務がある
- 仮設物のリスク:足場・仮囲い・仮設電気等は本設設備と異なり、設置・解体も含めてリスク評価が必要
製造業のリスクアセスメントの特徴
製造業では設備・機械が固定的なため、より体系的で詳細なリスクアセスメントが可能だ。
- 機械安全の国際規格対応:ISO 12100やJIS B 9700に基づくリスクアセスメントが求められる場面がある
- 化学物質リスクアセスメントの義務化:2024年4月以降、危険性・有害性のある化学物質を製造・取り扱う場合はリスクアセスメントが義務(努力義務から格上げ)
- FMEAとの連携:設計段階ではFMEA(故障モード影響解析)で予防的評価を行い、製造段階でリスクアセスメントに引き継ぐ企業が増えている
よくある記入ミスと修正方法
リスクアセスメントシートの提出後に「記入が不十分」と差し戻されるケースは多い。現場でよく起きる5つのミスとその修正方法を解説する。
ミス1:危険性の特定が抽象的すぎる
❌ ミス例:「高所作業で危険がある」
✅ 修正例:「外壁塗装のため高さ8mの足場上で作業中、足場板の隙間に足を踏み外し墜落する」
修正ポイント:「どこで・何をしているときに・何が起きるか」を具体的に書く。場所・高さ・作業内容・発生する災害の種類を明記する。
ミス2:リスクスコアの根拠が不明
❌ ミス例:重篤度「4」発生可能性「3」→リスクスコア「12」(根拠なし)
✅ 修正例:重篤度「4(死亡・重篤:骨折以上)」発生可能性「3(過去に類似事故あり)」→スコア12。備考欄に根拠を記載
修正ポイント:評価基準表を書類に添付するか、評価の判断根拠を備考欄に一言添える。「なぜこのスコアか」を誰でも理解できるようにする。
ミス3:対策が「注意する」「気をつける」だけ
❌ ミス例:「高所作業時は注意する」
✅ 修正例:「フルハーネス型安全帯を使用し、作業開始前に親綱への掛け替えを完了してから移動する」
修正ポイント:「誰が・いつ・何をするか」が分かる具体的な行動で記載する。精神論(「注意」「徹底」)は対策として認められない。
ミス4:リスク低減後の再評価がない
❌ ミス例:対策を記入しているが、対策後のリスクスコアが空欄
✅ 修正例:対策後のリスクスコアを「5(許容可能な範囲)」と記入し、残留リスクを明記する
修正ポイント:対策前と対策後のリスクスコアを両方記入することで、対策の効果が定量的に示される。
ミス5:見直し日・担当者の空欄
リスクアセスメントには「いつ実施したか」「誰が実施したか」「次回見直し予定」の記載が必要だ。これらが空欄だと、書類の有効性が問われる場面がある。特に労基署の調査では実施日と担当者名が確認されるため、必ず記入する。
まとめ
- リスクアセスメントは労働安全衛生法で定められた安全管理手法
- 5ステップ(特定→見積り→優先度→対策→記録)で進める
- リスクは「重篤度×発生可能性」で数値化する
- 対策は本質的対策から順に検討する
- 定期的な見直しで実効性を維持する
形式的な書類作成で終わらせず、実際の事故防止につながるリスクアセスメントを実施しましょう。
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よくある質問(FAQ)
Q: リスクアセスメントは法律で義務ですか?
労働安全衛生法第28条の2により、事業者にはリスクアセスメントの実施が「努力義務」として定められています。ただし、化学物質を取り扱う場合は2024年4月から一部義務化されています。実質的に多くの現場で実施が求められています。
Q: リスクアセスメントシートの書式に決まりはありますか?
法定の書式はありません。厚生労働省が「職場のあんぜんサイト」で推奨するフォーマットを参考に、自社の業種・作業内容に合わせてカスタマイズするのが一般的です。最低限「危険性の特定」「リスクの見積り」「対策」の3項目は必要です。
Q: リスクアセスメントはどのくらいの頻度で見直すべきですか?
最低でも年1回の定期見直しが推奨されます。加えて、新しい機械・設備の導入時、作業方法の変更時、労働災害やヒヤリハットが発生した時にも見直しを行うべきです。
Q: リスクの見積り方法にはどんな種類がありますか?
代表的な方法は3つあります。①マトリクス法(重篤度×発生可能性の表で評価)、②加算法(重篤度+発生頻度+回避可能性のスコア合計)、③枝分かれ図法(分岐チャートで判定)。建設業ではマトリクス法が最も多く使われています。
Q: リスクアセスメントとKY活動の違いは何ですか?
KY活動は「その日の作業に対する危険予知」で、毎朝5〜10分で実施します。リスクアセスメントは「作業全体のリスクを体系的に評価」する仕組みで、事前に計画的に実施します。両者は補完関係にあり、リスクアセスメントの結果をKY活動に活用するのが理想的です。