リスクアセスメントの書き方
5ステップで進める実践ガイド
建設業・製造業の現場監督向け|記入例とテンプレート付き
リスクアセスメント、ちゃんと書けていますか?
「リスクアセスメントを提出してくださいと言われたけど、何を書けばいいか分からない」
「毎回同じような内容になってしまう」
こんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
リスクアセスメントは、労働安全衛生法で定められた重要な安全管理手法です。しかし、正しい書き方を学ぶ機会は少なく、形式的な書類作成で終わっているケースも見受けられます。
本記事では、リスクアセスメントの正しい進め方と書き方を、記入例を交えて解説します。
リスクアセスメントとは
リスクアセスメントとは、職場に潜む危険性や有害性を特定し、リスクの大きさを見積もり、優先度を付けて低減措置を講じる一連の手順のことです。
法的根拠
労働安全衛生法第28条の2において、製造業や建設業等の事業者は、リスクアセスメントの実施が「努力義務」とされています。
また、2016年6月からは、一定の危険有害化学物質を取り扱う場合のリスクアセスメントが「義務」となりました。
KY活動との違い
| 項目 | KY活動 | リスクアセスメント |
|---|---|---|
| 実施タイミング | 毎日(作業開始前) | 定期的・変更時 |
| 対象範囲 | 当日の作業 | 作業全体・設備全体 |
| リスクの評価 | 定性的 | 定量的(点数化) |
| 実施者 | 現場作業者 | 管理者・専門家を含む |
| 記録の詳細度 | 簡易 | 詳細 |
KY活動は毎日の「気づき」を共有する活動、リスクアセスメントは体系的に「評価・対策」を行う活動です。両者を組み合わせることで、より効果的な安全管理が可能になります。
リスクアセスメントの5ステップ
1970年代にイギリスで確立された手法が、2006年に日本で法制化されました。基本は5つのステップで進めます。
1危険性・有害性の特定
まず、作業や設備に潜む危険性・有害性を洗い出します。
特定のポイント
- 作業手順に沿って、一つずつ危険を確認する
- 過去の事故事例、ヒヤリハット報告を参考にする
- 現場を実際に見て回り、危険箇所を確認する
- 作業者からヒアリングを行う
危険性・有害性の例
- 高所からの墜落・転落
- 重機との接触・挟まれ
- 感電
- 有害物質へのばく露
- 騒音・振動
2リスクの見積り
特定した危険性・有害性について、リスクの大きさを数値化します。
一般的な見積り方法は「重篤度」×「発生可能性」で点数を算出します。
重篤度の基準例
| 点数 | レベル | 内容 |
|---|---|---|
| 10 | 致命的 | 死亡または障害が残る |
| 6 | 重大 | 休業1ヶ月以上 |
| 3 | 中程度 | 休業1週間〜1ヶ月 |
| 1 | 軽微 | 不休災害または軽傷 |
発生可能性の基準例
| 点数 | レベル | 内容 |
|---|---|---|
| 4 | 高い | 日常的に発生する可能性がある |
| 2 | 中程度 | 時々発生する可能性がある |
| 1 | 低い | ほとんど発生しない |
リスクポイント = 重篤度 × 発生可能性
3優先度の設定
リスクポイントに基づいて、対策の優先度を決定します。
| リスクポイント | 優先度 | 対応 |
|---|---|---|
| 20以上 | 最優先 | 直ちに対策を実施。作業中止も検討 |
| 10〜19 | 高 | 速やかに対策を実施 |
| 5〜9 | 中 | 計画的に対策を実施 |
| 4以下 | 低 | 現状維持または改善検討 |
4リスク低減措置の検討・実施
優先度の高いリスクから、低減措置を検討・実施します。
低減措置の優先順位
- 本質的対策:危険な作業・物質そのものをなくす
- 工学的対策:安全装置、防護柵、換気設備の設置
- 管理的対策:作業手順、教育訓練、立入制限
- 個人用保護具:ヘルメット、安全帯、保護メガネ
上位の対策ほど効果が高く、下位の対策は「最後の手段」と考えます。
5記録・見直し
実施したリスクアセスメントの結果を記録し、定期的に見直します。
見直しのタイミング
- 設備を新設・変更・解体するとき
- 作業方法・手順を変更するとき
- 労働災害・ヒヤリハットが発生したとき
- 定期的な見直し(年1回以上推奨)
リスクアセスメントシートの記入例
🏗️ 建設業|足場組立作業の例
🏭 製造業|プレス作業の例
よくある間違いと対策
間違い1:危険性の特定が抽象的
❌ 悪い例:「高所作業で危険」
✅ 良い例:「足場2段目で配管取付け作業中、足場板の隙間から工具を落とし、下の作業者に当たる」
具体的に、どこで・何をしているときに・何が起きるかを記載します。
間違い2:リスク評価が主観的
「なんとなく危なそうだから10点」ではなく、基準表に沿って客観的に評価します。評価基準は事前にチーム内で統一しておきましょう。
間違い3:対策が「注意する」で終わっている
❌ 悪い例:「高所作業時は注意する」
✅ 良い例:「親綱を先行設置し、安全帯のフックを常時掛けた状態で作業する」
具体的な行動レベルで記載します。
間違い4:作成後に見直さない
リスクアセスメントは作成して終わりではありません。作業条件の変化や新たなヒヤリハットに応じて、定期的に見直すことが重要です。
実施体制の作り方
1. 経営者によるコミットメント
まず、社長や工場長などのトップが、リスクアセスメント実施を表明します。安全管理方針に組み込み、全社的な取り組みであることを明確にします。
2. 推進チームの編成
- リーダー:安全管理者または現場責任者
- メンバー:各部門・工程の代表者、作業者代表
- 必要に応じて:安全衛生委員会、外部専門家
3. 教育・訓練の実施
メンバー全員が、リスクアセスメントの目的と手法を理解していることが重要です。初回実施前に勉強会を開催することをおすすめします。
まとめ
- リスクアセスメントは労働安全衛生法で定められた安全管理手法
- 5ステップ(特定→見積り→優先度→対策→記録)で進める
- リスクは「重篤度×発生可能性」で数値化する
- 対策は本質的対策から順に検討する
- 定期的な見直しで実効性を維持する
形式的な書類作成で終わらせず、実際の事故防止につながるリスクアセスメントを実施しましょう。
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