過去最少でも油断禁物!2024年労災統計から読み解く建設現場の新リスク
2024年、労働災害による死亡者数は746人で過去最少を記録しました。しかし...
- 建設業: 232人(前年223人から+9人、+4.0%増)
- 製造業: 142人(前年138人から+2.9%増)
- 陸上貨物運送: 108人(前年110人から-1.8%減)
さらに深刻なのは、全死亡災害746人中188人(25.2%)が墜落・転落によるものだという事実です。
他業種は改善しているのに、なぜ建設業だけが悪化しているのでしょうか?
全業種では改善も、建設現場だけが悪化している理由
「過去最少」の数字に隠された真実
確かに労災による死亡者数は減少傾向にあります。
- 2024年: 746人(過去最少)
- 2023年: 755人
- 2022年: 774人
しかし、死傷者数は4年連続で増加しています。
- 2024年: 135,718人
- 2023年: 135,371人(+347人、+0.3%)
- 2022年: 132,355人
- 2021年: 130,586人
このギャップは何を意味するのでしょうか?**「死なないが重傷は増えている」**のです。安全対策が進み致命傷は避けられるようになったものの、事故そのものは減っていません。
建設業の「死亡増加・死傷減少」という奇妙な現象
建設業の数字を見ると、さらに奇妙な現象が浮かび上がります。
- 死亡者: 232人(前年223人、+4.0%)← 増加
- 死傷者: 13,849人(前年14,414人、-3.9%)← 減少
この数字が意味することは、軽微な事故は減少しているものの、致命的な事故は増加しているということです。
⚠️ 重要な警告 建設業の死亡災害増加は、**「小さな事故は減ったが、大きな事故が増えている」**ことを示唆しています。墜落・転落などの重大リスクへの対策が急務です。
なぜ建設業だけが改善しないのか - 3つの構造的問題
要因1: 建設業の高齢化率は全産業トップクラス
建設業就労者の年齢構成を見ると、高齢化の深刻さが分かります。
- 55歳以上: 35.4%(全産業平均31.0%)
- 60歳以上の割合も高い水準
高齢者の墜落リスクは若年者と比べて著しく高くなります。
- 60歳以上男性の墜落・転落度数率: 0.48
- 30代男性: 0.13
- 倍率: 約3.6倍
要因2: 5人未満の事業者が60%超 - 安全投資の遅れ
建設業の事業者構造も問題を複雑にしています。
- 建設業許可業者: 約47万社
- うち5人未満: 60%超
- 一人親方: 約100万人
小規模事業者の課題:
- 安全帯・ヘルメット等の最新設備への更新遅れ
- フルハーネス型安全帯は1万円超 → コスト負担大
- 安全教育の機会不足
要因3: 重層下請構造が生む情報断絶
建設業の重層下請構造も安全管理を困難にしています。
重層下請構造の問題:
- 元請 → 一次下請 → 二次下請 → 三次下請...
- 情報が伝わるたびに劣化・簡略化
- 最末端の作業員には「とにかく早くやれ」という指示のみ
安全情報の伝達不足:
- 元請の安全方針が現場に届かない
- KY(危険予知)活動が形骸化
- ヒヤリハット情報が共有されない
188人が命を落とした「墜落・転落」の深層分析
全死亡災害の4分の1が墜落・転落
- 全死亡災害746人中**188人(25.2%)**が墜落・転落
- 前年は204人だったので、-7.8%減
- しかし依然として最多の事故型
建設業に占める割合では、建設業死亡232人のうち、墜落・転落は推定**50%以上(約116人)**を占めています。
高さ別の内訳(推定):
- 2m未満: 約30%(脚立、低い足場など)
- 2-5m: 約45%(住宅の1-2階部分)
- 5m以上: 約25%(ビル、高層建築)
「低いから大丈夫」が最も危険
意外かもしれませんが、2m未満の墜落でも致命傷となります。
- 脚立(高さ1.5m)からの転落 → 頭部強打 → 死亡
- 低い場所ほど安全帯を使わない傾向
- 「このくらい大丈夫」という油断が命取り
【実例】2024年6月・某建設現場での死亡事故
- 状況: 3階建て住宅の外壁塗装中、足場(高さ6m)から転落
- 原因: 安全帯は所持していたが、「少しの移動だから」と未装着。足場の手すりに体重をかけたところ、手すりが外れて転落
- 結果: 頭部強打により死亡。50代男性、建設業歴30年のベテラン職人
- 教訓: たった数メートルの移動でも安全帯は必須。ベテランほど油断しやすい
なぜ安全帯を着けないのか?
理由1: 作業効率の低下懸念
- フックの付け替えが面倒
- 「時間がもったいない」という意識
- 実際は慣れれば5秒で付け替え可能
理由2: コスト
- 最新のフルハーネス型は1万円超
- 古い胴ベルト型は5,000円程度
- 一人親方には大きな負担
理由3: 教育不足
- 正しい使い方を知らない
- フルハーネス型の特別教育を受けていない
- 法改正(2019年)で義務化されたが、未だに浸透していない
明日から実践!建設現場の転落事故ゼロを目指す5ステップ
ステップ1: ハーネス型安全帯を全員に支給
フルハーネス型安全帯を全員に支給しましょう(1人1万円 × 人数)。
予算確保の方法:
- 厚労省の「安全衛生機器等導入支援補助金」活用
- 補助率: 1/2(上限50万円)
- 申請時期: 毎年春頃
ステップ2: 足場の安全点検を徹底
- 手すりの設置状況確認(組立途中でも必須)
- 足場板の固定確認(緊結がしっかりしているか)
- 幅木の設置確認(工具の落下防止)
- 点検頻度: 週1回(作業開始前)
ステップ3: 朝礼で安全意識を高める
- 「安全帯、よし!」「ヘルメット、よし!」の掛け声
- 相互確認の徹底(ペアで確認し合う)
- その日の危険作業の共有
- 所要時間: 5分
ステップ4: ヒヤリハットを共有する文化づくり
- 月1回のヒヤリハット共有会(15分)
- 報告者に報奨金(500円/件)→ 報告のハードルを下げる
- WhyTraceの5Why分析で根本原因分析
ステップ5: 安全管理のデジタル化
- 無料トライアル活用から始める
- まずは1現場からスモールスタート
- 効果を確認してから他現場に展開
| ステップ | 内容 | コスト | 実施時期 |
|---|---|---|---|
| 1 | 安全帯支給 | 1万円×人数(補助金で1/2) | 即時 |
| 2 | 足場点検 | 0円(作業時間のみ) | 毎週 |
| 3 | 朝礼唱和 | 0円 | 毎朝 |
| 4 | ヒヤリハット | 報奨金500円×件数 | 月1回 |
| 5 | デジタル化 | 初期+月額(規模による) | 3ヶ月以内 |
まとめ:建設業の安全管理は「待ったなし」の状況
全産業では改善傾向にあるものの、建設業は悪化しています。しかし、対策は「できることから」で良いのです。
2025年の目標: 「転落事故ゼロ」を目指しましょう。
建設業の安全管理は待ったなしです。しかし、適切な対策とテクノロジーを活用すれば、必ず改善できます。あなたの現場から、転落事故ゼロを実現しましょう。
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