「設備の故障が多い」「保全が後手に回っている」
こんな悩みを抱えていないだろうか。
TPM(Total Productive Maintenance)は、設備のロスをゼロにし、生産性を最大化するための日本発の管理手法だ。1971年に日本プラントメンテナンス協会(JIPM)が提唱し、世界中の製造業で採用されている。
この記事では、TPMの基本概念と8本柱を解説する。自主保全、計画保全、個別改善など、設備効率を最大化する活動を紹介する。
TPMとは
TPM(Total Productive Maintenance)は、日本語で「全員参加の生産保全」と訳される。
TPMの定義
TPMとは:
- 生産システムの効率化を極限まで追求する企業体質づくり
- 設備のライフサイクル全体を対象とした「ロスゼロ」の仕組み
- 生産部門だけでなく、開発、営業、管理部門を含む全社活動
- トップから第一線までの全員参加
TPMの歴史
| 年代 | 出来事 |
|---|---|
| 1960年代 | 米国から予防保全(PM)が日本に導入 |
| 1971年 | JIPMが「TPM」を提唱 |
| 1980年代 | 日本の製造業でTPMが普及 |
| 1990年代〜 | 世界中の製造業に展開 |
TPMの目的
設備総合効率(OEE)の向上: TPMの究極の目標は、設備のロスをゼロにし、設備総合効率(OEE)を最大化することだ。
OEE = 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率
世界トップクラスの工場は、OEE 85%以上を達成している。
TPMの8本柱
TPMは、8つの活動(8本柱)で構成される。
8本柱の全体像
| 柱 | 活動名 | 概要 |
|---|---|---|
| 1 | 個別改善 | 設備のロスを徹底的に排除 |
| 2 | 自主保全 | オペレーターによる日常保全 |
| 3 | 計画保全 | 保全部門による計画的な保全 |
| 4 | 品質保全 | 不良ゼロを実現する設備づくり |
| 5 | 初期管理 | 新設備の垂直立ち上げ |
| 6 | 教育・訓練 | 設備に強い人材の育成 |
| 7 | 管理・間接 | 間接部門の効率化 |
| 8 | 安全・衛生・環境 | 災害ゼロ、公害ゼロ |
第1の柱:個別改善
目的:設備の16大ロスを徹底的に排除し、効率を最大化する。
16大ロスとは:
- 設備の8大ロス:故障、段取り・調整、刃具交換、立ち上がり、チョコ停、速度低下、不良・手直し、停止
- 人の5大ロス:管理、動作、編成、自動化置換、測定・調整
- 原単位の3大ロス:エネルギー、型・工具・治具、歩留まり
進め方:
- ロスの実態を把握する
- ロスを金額に換算し、優先順位をつける
- プロジェクトチームで改善に取り組む
- 効果を検証し、水平展開する
第2の柱:自主保全
目的:オペレーター自身が設備を守り、異常を発見できる人材を育成する。
自主保全の7ステップ:
| ステップ | 活動内容 |
|---|---|
| 1 | 初期清掃:設備を徹底的に清掃し、不具合を発見・復元 |
| 2 | 発生源・困難箇所対策:汚れの発生源を断ち、清掃しやすくする |
| 3 | 自主保全仮基準の作成:清掃・給油・増し締めの基準を作成 |
| 4 | 総点検:設備の機能・構造を学び、点検スキルを習得 |
| 5 | 自主点検:点検基準を見直し、効率的な点検を実施 |
| 6 | 標準化:作業標準を整備し、管理の仕組みを確立 |
| 7 | 自主管理:設備と作業を自主的に管理する体制を構築 |
ポイント:「私の設備は私が守る」という意識を醸成する。
第3の柱:計画保全
目的:保全部門が計画的にメンテナンスを行い、故障ゼロを実現する。
計画保全の種類:
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 事後保全(BM) | 故障してから修理する |
| 予防保全(PM) | 時間基準で定期的にメンテナンス |
| 予知保全(PdM) | 設備の状態を監視し、劣化を予測 |
| 改良保全(CM) | 故障しにくい設備に改良する |
計画保全の進め方:
- 設備の重要度を評価(ABCランク付け)
- 故障データを分析し、保全計画を策定
- 予備品管理、技能向上に取り組む
- 予知保全の仕組みを構築
第4の柱:品質保全
目的:不良を出さない設備条件を確立し、品質不良ゼロを実現する。
進め方:
- 品質と設備条件の関係を明確化(QM分析)
- 不良を発生させる設備条件を特定
- 条件を維持・管理する仕組みを構築
第5の柱:初期管理
目的:新設備を短期間で安定稼働させる(垂直立ち上げ)。
進め方:
- 設計段階から保全性・操作性を考慮(MP設計)
- 過去のトラブル情報を新設備に反映
- 試運転段階で問題を出し切る
第6の柱:教育・訓練
目的:設備に強い人材を育成する。
進め方:
- 技能マップで現状のスキルを可視化
- 計画的なOJT・Off-JTを実施
- 技能試験で習得度を確認
第7の柱:管理・間接
目的:間接部門の業務効率を向上させる。
進め方:
- 事務作業のムダを排除
- 情報システムの効率化
- 在庫・物流の最適化
第8の柱:安全・衛生・環境
目的:災害ゼロ、公害ゼロの職場を実現する。
進め方:
- 危険源の特定とリスクアセスメント
- 安全作業標準の整備
- 環境負荷の低減活動
TPM導入の効果
TPMを導入した企業では、さまざまな効果が報告されている。
代表的な効果
| 指標 | 改善効果の例 |
|---|---|
| 設備故障 | 1/10〜1/100に削減 |
| 段取り時間 | 50%以上短縮 |
| 設備総合効率 | 1.5〜2倍に向上 |
| 不良率 | 1/10に削減 |
| 労働災害 | ゼロを達成 |
| クレーム | 1/4に削減 |
| 製造原価 | 大幅に削減 |
導入事例
オリエンタルモーター: 全員参加のTPM活動を展開。「自主保全」「計画保全」「品質改善」「個別改善」に重点を置き、設備故障件数の大幅削減と作業効率向上を実現した。
旭化成ケミカルズ千葉工場: 1974年の操業開始以来、安全活動を継続的に推進。オペレーターによる自主保全や個別改善、計画保全を実施し、長期にわたる無災害記録を達成。生産性向上・コスト削減にも成功している。
📱 設備の異常を音で検知
「PlantEar」は、設備の異音をAIで検知する予兆保全アプリ。
TPMの「計画保全」を支援し、故障の予兆を早期に発見。スマホで設備音を録音するだけで、ベテランの「耳」をAIが再現する。
自主保全と組み合わせて、設備のロスゼロを目指そう。
まとめ
TPM(Total Productive Maintenance)は、設備のロスをゼロにする全員参加の活動だ。
TPMの特徴:
- 生産部門だけでなく全社で取り組む
- トップから第一線まで全員参加
- 設備のライフサイクル全体を対象
TPMの8本柱:
- 個別改善(ロスの徹底排除)
- 自主保全(オペレーターによる日常保全)
- 計画保全(保全部門による計画的メンテナンス)
- 品質保全(不良ゼロの設備づくり)
- 初期管理(新設備の垂直立ち上げ)
- 教育・訓練(人材育成)
- 管理・間接(間接部門の効率化)
- 安全・衛生・環境(災害ゼロ)
期待できる効果:
- 設備故障の大幅削減
- 設備総合効率の向上
- 不良率・製造原価の削減
- 労働災害ゼロ
TPMは一朝一夕で成果が出るものではない。しかし、全員で継続的に取り組めば、確実に成果が出る。まずは自主保全の第1ステップ「初期清掃」から始めてみよう。
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| アプリ名 | 概要 | こんな課題に |
|---|---|---|
| PlantEar | 設備異音検知AIで予兆保全 | 設備の突発故障を防ぎたい |
| 安全ポスト+ | QRコードで簡単報告、AI自動4M分析 | ヒヤリハット報告が少ない |
| WhyTrace | 5Why分析で根本原因を究明 | 同じ問題が繰り返される |
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