「設備の突発故障で生産が止まった」
製造業において設備の突発故障は、生産停止、納期遅延、修復費用など、大きな損失を招く。実際に、ベアリングの偏摩耗により攪拌機シャフトが溶断・落下し、数千万円の損害が発生した事例もある。
この記事では、振動診断による設備異常の早期発見方法を解説する。ベアリング、ギア、アンバランスなど、異常の種類ごとの振動パターンと対処法を紹介する。
振動診断とは
振動診断は、設備の振動パターンを分析して異常の兆候を検出する技術だ。
なぜ振動診断が有効なのか
振動には機械全体の状態を表すパラメータ(加速度・速度・変位など)が多く含まれる。設備異常の初期段階からパラメータに変化が現れるため、異音や発熱より早く兆候を捉えることができる。
| 兆候の種類 | 検出タイミング |
|---|---|
| 振動変化 | 異常の初期段階で検出可能 |
| 異音 | 振動変化より遅れて発生 |
| 発熱 | 異常がかなり進行してから発生 |
振動診断は、予知保全(予兆保全)の核となる技術だ。
振動の測定パラメータ
振動診断では、異常の種類に応じて測定パラメータを使い分ける。
振動速度と振動加速度
| パラメータ | 周波数帯 | 検出できる異常 |
|---|---|---|
| 振動速度 | 10~1,000Hz | アンバランス、ミスアライメント、ゆるみ |
| 振動加速度 | 1,000Hz超 | ベアリング傷、ギア欠損、微細な損傷 |
- 低周波(10~1,000Hz):回転体のアンバランスや軸心のずれなど、機械全体の異常
- 高周波(1,000Hz超):ベアリングの傷やギアの欠損など、部品レベルの異常
異常の種類によって振動が発生する周波数帯が異なるため、適切な振動センサを選択することが重要だ。
異常の種類と振動パターン
代表的な設備異常と、その振動パターンを解説する。
ベアリング異常
ベアリングの損傷は、製造設備で最も多い故障原因の一つだ。
ベアリング異常の兆候:
- 高周波(1,000Hz超)の振動が増加
- 振動パターンに「雑味」が発生
- 温度上昇、異音の発生
損傷の進行パターン:
- 初期段階:微細な振動パターンの乱れ
- 進行段階:振動レベルの増加、異音の発生
- 末期段階:発熱、焼付き、軸受の破損
ベアリング異常は高周波の振動加速度で検出する。
アンバランス
回転体の質量分布が不均一な状態。
アンバランスの振動パターン:
- 回転周波数(1×rpm)に大きなピーク
- 振動の方向は主に径方向
- 回転速度に比例して振動が増加
主な原因:
- 羽根車やローターの摩耗
- 付着物の堆積
- 部品の欠損
ミスアライメント(軸心のずれ)
モーターと被駆動機の軸心がずれた状態。
ミスアライメントの振動パターン:
- 回転周波数の2倍(2×rpm)にピーク
- 軸方向の振動が大きい
- 軸継手部の温度上昇
主な原因:
- 据付け精度の不良
- 熱膨張による軸心のずれ
- 基礎の沈下
ギア異常
歯車の摩耗や損傷による異常。
ギア異常の振動パターン:
- 歯車のかみ合い周波数にピーク
- 側帯波(サイドバンド)の発生
- 異常が進行すると広い周波数帯でノイズ増加
主な原因:
- 歯面の摩耗
- 歯の欠損・ピッチング
- 潤滑不良
ゆるみ
機械の固定部にガタがある状態。
ゆるみの振動パターン:
- 回転周波数の整数倍(1×, 2×, 3×...)にピーク
- 振動波形が不規則
- 衝撃的な振動成分
主な原因:
- ボルトの締付け不足
- 軸受の過大すきま
- 基礎の劣化
振動診断の進め方
振動診断を効果的に進めるためのステップを紹介する。
ステップ1:基準値の設定
まず、正常時の振動レベルを測定し、基準値を設定する。
基準値の設定方法:
- 新設備:メーカー推奨値を採用
- 既存設備:正常運転時のデータを蓄積
- 業界標準:ISO 10816などの規格を参考
ステップ2:定期測定
定期的に振動を測定し、トレンドを監視する。
測定頻度の目安:
| 設備の重要度 | 測定頻度 |
|---|---|
| 重要設備(Aランク) | 週1回〜毎日 |
| 一般設備(Bランク) | 月1回〜週1回 |
| 補助設備(Cランク) | 3ヶ月〜月1回 |
ステップ3:トレンド分析
振動レベルの変化をトレンドグラフで可視化する。
注目ポイント:
- 振動レベルの上昇傾向
- 急激な変化
- 季節変動(温度の影響)
ステップ4:周波数分析
異常が疑われる場合、周波数分析で原因を特定する。
周波数分析のポイント:
- 回転周波数との関係を確認
- ベアリング固有周波数との照合
- 正常時との比較
ステップ5:対策の実施
異常の種類に応じた対策を実施する。
| 異常の種類 | 対策 |
|---|---|
| ベアリング異常 | 交換、潤滑補給 |
| アンバランス | バランス調整、清掃 |
| ミスアライメント | 芯出し調整 |
| ギア異常 | 交換、潤滑油交換 |
| ゆるみ | ボルト増し締め、交換 |
振動監視の導入効果
振動監視による予知保全を導入すると、以下の効果が期待できる。
コスト削減:
- 突発故障による生産停止の削減
- 部品の寿命を使い切れる(過剰交換の防止)
- 計画的な補修による効率化
設備稼働率の向上:
- 突発停止時間の削減
- 計画停止への移行
- 設備総合効率(OEE)の向上
安全性の向上:
- 重大事故の未然防止
- 二次災害の防止
- 作業環境の改善
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月1回のハンディ計測では見逃す異常も、日常的な音声モニタリングでキャッチ。
まとめ
振動診断は、設備異常を早期に発見するための有効な手法だ。
振動診断のポイント:
- 異音や発熱より早く異常を検出できる
- 振動速度(低周波)と振動加速度(高周波)を使い分ける
代表的な異常と振動パターン:
- ベアリング異常:高周波の振動増加
- アンバランス:回転周波数にピーク
- ミスアライメント:回転周波数の2倍にピーク
- ギア異常:かみ合い周波数にピーク
- ゆるみ:回転周波数の整数倍にピーク
振動診断の進め方:
- 基準値の設定
- 定期測定
- トレンド分析
- 周波数分析
- 対策の実施
振動診断を活用して、設備の突発故障を未然に防ぎ、安定した生産を実現しよう。
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