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工場の異音の原因と対策|機械の音で故障を予測する方法

著者: GenbaCompass15
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工場で長年働いていると、「あの音はいつもと違う」と感じる瞬間がある。その直感は正しいことが多い。機械の音は、設備の状態を雄弁に語るサインだからだ。

八千代ソリューションズ株式会社が2025年に実施した調査では、製造業における設備の突発停止による年間損失額は1社あたり平均1,892万円にのぼると報告されている(出典:八千代ソリューションズ株式会社 調査リリース 2025年)。そして、損失額を詳細に把握できていない企業は6割以上という現実がある。多くの損失が「異音を見逃したこと」から始まっている。

本記事では、工場で発生する異音の種類と原因を音の特徴から体系的に整理し、聴診棒からAIによる音響診断まで段階的な検知手法を解説する。


異音を放置すると何が起きるのか

「少し音が変わったが、まだ動いているから大丈夫」という判断は危険である。機械の異音は、内部で何らかの異常が進行していることを示している。放置すれば、次の3段階で被害が拡大する。

  1. 部品の劣化が加速する ― 摩耗・振動・熱が連鎖的に他の部品へ波及する
  2. 突発停止が起きる ― 予告なく生産ラインが止まり、納期遅延・品質問題が発生する
  3. 二次故障が広がる ― 破損した部品が周辺設備を巻き込み、修理コストが数倍になる

デロイトの調査によると、計画外のダウンタイムにより産業メーカーは年間約500億ドル(約7兆円)の損失を被っており、平均的なメーカーは週に15時間以上の設備停止を経験していると報告されている(出典:Deloitte - Predictive Maintenance Research)。

異音を「早期に・正確に」検知することが、損失を最小化する出発点となる。


工場の異音:音の種類と原因一覧

異音は「どんな音がするか」によって、原因を絞り込むことができる。以下に代表的な異音の種類と考えられる主な原因を整理した。

音の種類別・原因早見表

音の特徴 音のパターン 主な発生箇所 考えられる主な原因
甲高い金属音 キーン・キーキー・ギーギー ベアリング・シャフト 潤滑剤不足、内部すき間過小、金属かじり
低いうなり音 ゴーゴー・ウーウー モーター・ポンプ 共振、はめあい不良、軌道輪の変形
周期的な叩き音 カンカン・コンコン ギア・回転体 歯の欠損、打痕、異物の噛み込み
断続的な摩擦音 シャシャ・ザーザー ベアリング・ファン 表面荒れ、保持器とシールの接触
不規則な振動音 ビビビ・ガタガタ 固定部・フレーム ボルト緩み、基礎の劣化、アンバランス
空気・流体音 シューシュー・ヒューヒュー バルブ・配管 空気漏れ、流量異常、キャビテーション
高周波の鳴き音 ピーピー・ヒーン インバーター・電気系 電磁ノイズ、コイルの共振

この表の活用方法はシンプルだ。現場で「どんな音がしているか」を確認し、該当する行を探す。原因候補が絞れれば、点検箇所を効率よく特定できる。


設備・部位別でみる異音の原因

音の種類だけでなく、「どの設備・部位から聞こえるか」の視点からも原因を整理しておく。

ベアリング(軸受)の異音

工場設備の中で最も異音が発生しやすい部位の一つがベアリングだ。ベアリングから発生する代表的な異音と原因は以下のとおりである。

  • キーン・ギーギー(甲高い音) ― 潤滑剤の不足または劣化。金属同士が直接接触している状態で、放置すれば焼き付きに至る
  • ゴリゴリ・コリコリ ― 軌道面の傷、または異物の侵入。内部にゴミが入ると傷が広がり、連鎖的に損傷する
  • ウーウー(うなり音) ― はめあい不良または軌道輪の変形。回転速度が変わると音の大きさや高さが変化するのが特徴だ
  • シャシャ(断続音) ― ラビリンス部や保持器とシールの接触。比較的軽症だが継続的な点検が必要だ

ベアリングの異音は「潤滑」「荷重」「組付け精度」「異物」の4つに起因することがほとんどである(出典:ジェイテクト(Koyo)技術情報)。

モーターの異音

モーターの異音は、電気的要因と機械的要因の両方が絡み合う。

  • 電磁音(ブーン・ハム音) ― コイルや鉄心の電磁振動。インバーター駆動時に特有の高調波成分が加わることで大きくなる場合がある
  • ベアリング起因の音 ― モーター内蔵のベアリングが劣化すると、回転に伴う規則的または不規則な異音が出る
  • ファン・冷却系の音 ― 冷却ファンの羽根にゴミが付着したり、ファンカバーと接触したりすることで発生する

ポンプ・コンプレッサーの異音

液体や気体を扱う設備では、流体特有の異音が発生する。

  • キャビテーション音(ジャリジャリ・バリバリ) ― キャビテーション(液体中に気泡が発生・崩壊する現象)による異音。インペラー(羽根車)の損傷につながるため早急な対処が必要だ
  • 液体ハンマー音(ドーン・バーン) ― 流れの急激な遮断による圧力波。バルブの急開閉や停電時に起きやすい
  • シール部からの漏れ音(シューシュー) ― メカニカルシールやパッキンの劣化によるガスや液体の漏れ

コンベア・搬送設備の異音

搬送ラインでは、広い範囲で異音が発生するため原因特定が難しくなりやすい。

  • チェーン・スプロケットの音(ガチャガチャ) ― 潤滑不足または摩耗。チェーンが伸びてスプロケットとのかみ合いが悪化している場合が多い
  • ローラーの鳴き音(キーキー) ― ローラーの固着または偏荷重。長期放置するとローラー軸が折損することがある
  • フレームの振動音(ガタガタ) ― ボルトの緩み、またはフレームの疲労亀裂。振動が周期的であればアンバランスも疑う

異音を検知する4つの手法

異音を発見するための手法は、アナログから最先端のAIまで幅広い選択肢がある。現場の状況や予算に応じて段階的に導入を検討してほしい。

1. 聴診棒による人感検知(コスト:低)

聴診棒とは、医療用の聴診器と同じ原理で骨伝導を利用し、設備に直接あてて内部の音を聴く道具だ。先端を設備に押し当てると、内部で発生した振動が棒を通じて耳に伝わる。

  • 導入コスト:数百円〜数千円
  • 長所:設備に触れて直接確認できる。経験者には有効
  • 限界:個人の聴力・経験に依存する。記録・比較ができない。高速回転体や高温設備には使いにくい

経験豊富な熟練工は聴診棒だけで多くの異常を見抜けるが、その「耳の技術」を組織として引き継ぐことは難しい。

2. 電子聴診器・ハンディ振動計(コスト:中)

電子聴診器は聴診棒を電子化したもので、音を増幅し録音・波形表示まで行える機器だ。振動計(バイブロメーター)は設備の振動を数値で測定し、ISO規格などの基準値と比較できる。

  • 導入コスト:数万円〜数十万円
  • 長所:数値として記録できるため、前回測定値との比較が可能。トレンド管理ができる
  • 限界:測定は定期巡回時のみ。測定ポイントの選定や結果の解釈に専門知識が必要

3. 振動センサー・IoT常時監視(コスト:中〜高)

設備に振動センサーを取り付け、常時データを収集する方式だ。クラウドに蓄積したデータをダッシュボードで可視化し、閾値を超えたときにアラートを出す。

  • 導入コスト:数十万円〜数百万円(センサー・通信・システム費用込み)
  • 長所:24時間365日の監視が可能。トレンドデータから劣化の進行を把握できる
  • 限界:センサーの設置・配線工事が必要。センサーポイントを外れた箇所の異常は検知しにくい

4. AIによる音響診断(コスト:低〜中)

マイクロフォンで収集した音をAIが解析し、異常の有無と種類を自動判定する手法だ。スマートフォンのマイクを使うだけで診断できるサービスも登場しており、専用の設置工事が不要なケースも多い。

  • 導入コスト:月額数千円〜(サービスによる)
  • 長所:専門知識がなくても診断できる。スマートフォンがあればすぐ始められる。AIが学習を重ねるほど精度が向上する
  • 限界:ノイズが多い環境では精度が下がる場合がある。初期の学習データ蓄積が必要

AI音響診断の活用:PlantEarで始める現場改善

AI音響診断は、製造業の予知保全を大きく変えつつある。従来は専門家の「耳と経験」に依存していた診断が、AIによってデータとして定量化・自動化されるようになった。

予知保全を導入した企業では、メンテナンス費用を40%削減した事例や、振動センサー活用によって突発故障を80%低減した事例が報告されている(出典:ニューラルオプト 予知保全導入事例)。

AIを活用する際の重要なポイントは3つある。

  1. 正常音のデータを十分に蓄積する ― AIは「正常と何が違うか」を学習するため、正常時のベースラインデータが不可欠だ
  2. 設備ごとに学習モデルを調整する ― モーターとコンプレッサーでは音の性質が異なる。設備の種類に合わせた最適化が必要だ
  3. アラート後の判断フローを決めておく ― AIが異常を検知したとき、誰がどう動くかを事前に整理しておかないと現場が混乱する

「まず試してみたい」という現場に向けて、AIを活用した音響診断プラットフォーム PlantEar はスマートフォンで設備の音を録音するだけで、AIが即座に診断結果を返す。専用機器の導入や設置工事は不要で、無料プランから始められる(有料プランは¥2,980/月〜)。

現場での実施手順は以下のとおりだ。

  1. スマートフォンにPlantEarアプリをインストールする
  2. 点検したい設備の近くで録音する(推奨:安定した状態で10〜30秒)
  3. AIが音を分析し、異常スコアと診断コメントを表示する
  4. 異常が検知された場合は、担当者に通知が届く

異音対策の実施ステップ

現場で異音対策を進めるうえでの実践的なステップを整理する。

Step 1:異音の記録と分類

異音を発見したら、まず「いつ・どこで・どんな音が・どのくらいの頻度で」という情報を記録する。スマートフォンでの録音も有効だ。前述の音の種類別一覧と照らし合わせ、原因候補を絞る。

Step 2:設備の簡易点検

潤滑油・グリスの量と状態を確認する。ボルトの緩みがないか触診・目視で確認する。異物の付着や噛み込みがないか見る。これだけで解決するケースも少なくない。

Step 3:測定・記録ツールの導入

振動計や電子聴診器、またはPlantEarのようなAI音響診断ツールを活用し、「数値として記録できる仕組み」を作る。感覚的な判断から脱却し、変化を時系列で追えるようにすることが重要だ。

Step 4:定期点検サイクルへの組み込み

月次・週次の定期点検に音響診断を組み込み、ベースライン(正常時の状態)を蓄積する。変化のトレンドが見えることで、「いつ部品交換が必要か」を計画的に判断できるようになる。

Step 5:全社的な異音管理体制の構築

個人の経験に頼る管理から、データに基づく管理へ移行することが最終目標だ。AIツールの活用はその一手段であり、記録の標準化・情報共有の仕組みづくりと合わせて進めると効果が高い。


まとめ

工場の異音は、設備が発するSOSである。放置すれば突発停止・二次故障・多大な損失につながるが、早期に検知すれば計画的な対処が可能になる。

本記事のポイントを整理する。

  • 音の種類(キーン・ゴーゴー・ガタガタなど)から原因候補を絞れる
  • 設備・部位ごとに特有の異音パターンがある
  • 検知手法は聴診棒→振動計→IoTセンサー→AI音響診断と段階的に高度化できる
  • AIを使えばスマートフォンだけで診断を始められる時代になっている

自社の設備保全の現状が気になる方は、まず無料の DXスコープ診断 で課題を可視化するところから始めてほしい。


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出典・参考情報:

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國分 良太

著者

國分 良太

制御設計エンジニア → AI・IoT・DX推進|東京の製造業メーカー開発部門

製造業の現場で設備設計・改善プロジェクト・品質向上施策に従事。なぜなぜ分析(RCA)やリスクアセスメントの実務経験をもとに、現場DXを支援するアプリケーションの開発と情報発信に取り組んでいます。

※ 本サイトは所属企業とは関係のない個人活動です。記載の見解は筆者個人のものです。