「なんか最近、あの設備の音がいつもと違う気がする…」
製造現場で働いていると、こんな違和感を覚えることがあると思う。でも「気のせいかも」と放置してしまう。1週間後、その設備が突然止まる。ラインが停止して、100万円の損失が発生——。
これ、実は珍しい話じゃない。
八千代ソリューションズの調査によると、設備の突発停止による年間損失額は平均1,892万円。1時間あたりの損失が「100万円以上」という企業も約3割を占めている。
怖いのは、その損失の多くが「異音を放置した結果」だということ。設備は壊れる前に必ずサインを出している。そのサインが「異音」なんだ。
今回は、設備故障の前兆となる5つの異音パターンを紹介する。これを知っておくだけで、突発故障のリスクをかなり減らせるはずだ。
なぜ異音を放置すると危険なのか
まず、異音を放置するリスクについて整理しておこう。
軽度な異常が重度の故障に発展する
ミスミの技術情報によると、「異音がしたまま使用するのは危険」と明記されている。
ベアリングが正常に回転していない状態で運転を続けると、最初は軽度だった症状が悪化する。軽度ならベアリング交換だけで済むが、放置すると焼き付きや破断が発生。最悪の場合、回転部周辺の装置全体が故障し、事故につながる恐れもある。
つまり、「今すぐ止まるわけじゃないから」と放置すると、修理費用が10倍、100倍に膨れ上がる可能性があるということだ。
予兆を捉えれば計画的に対応できる
逆に言えば、異音の段階で異常を検知できれば、計画的に部品交換のスケジュールを組める。
- 休日に作業できる(生産への影響ゼロ)
- 部品を事前に発注できる(欠品リスクなし)
- 協力会社のスケジュールを確保できる(急な依頼で割増にならない)
これが「予知保全」の考え方だ。異音は、設備が発する「そろそろ限界です」というメッセージ。聞き逃さないことが大切。
パターン1: カラカラ・チャラチャラ音
どんな音?
小さな金属片が転がっているような「カラカラ」「チャラチャラ」という音。小型軸受では「バタバタ」と聞こえることもある。
主な原因
モノタロウの技術情報によると、この異音の原因として以下が考えられる。
保持器ポケットの摩擦 ベアリング内部の保持器と転動体がぶつかり合う音。潤滑不足で発生しやすい。
グリス不適 特に低温環境で、グリスが硬くなって潤滑機能を果たせていない場合に発生。
軸受荷重不足 設計上の荷重より軽い状態で運転すると、転動体が「遊んで」しまい異音が出る。
緊急度
中〜高。澄んだ音であれば正常な場合もあるが、急に音が大きくなったり、音質が変わったりした場合は要注意。放置するとベアリングの損傷が進行する。
対策
- グリスの補給または交換(やわらかいグリスへ変更)
- ゴミの侵入対策(シール状態の確認)
- 荷重条件の見直し
パターン2: キーン・キュルキュル音(金属摩擦音)
どんな音?
甲高い「キーン」「キュルキュル」「キュキュ」という音。金属同士がこすれ合うような不快な高音が特徴。
主な原因
ジェイテクト(Koyo)のFAQによると、高い金属音の原因は以下のとおり。
潤滑剤の不足 最も多い原因。グリスや油が切れると、金属同士が直接接触して摩擦音が発生する。
異常荷重 設計値を超える荷重がかかっている状態。取付不良で軸がずれている場合にも発生。
内部すきま不足 ベアリングの内部クリアランスが狭すぎると、ころところつば面がかじり合う。
緊急度
高。金属摩擦音は、部品の損傷が急速に進行しているサイン。この状態を放置すると、数日〜数週間で焼き付きが発生する可能性がある。
対策
- 即座にグリス補給
- 荷重条件・取付精度の確認
- 改善しない場合はベアリング交換
📱 「この音、正常?異常?」がわからないとき
異音の判断は難しい。特に経験が浅いと、何が正常で何が異常かわからない。
そんなときは、スマホで録音してAIに判定させる方法がある。
PlantEarなら、5秒録音するだけで異音をスペクトログラム画像に変換し、AIが自動判定してくれる。
パターン3: ゴロゴロ・コロコロ音
どんな音?
「ゴロゴロ」(大型軸受)や「コロコロ」(小型軸受)という、転がるような低い音。回転に合わせて規則的に聞こえることが多い。
主な原因
マブチモーターの技術情報によると、この音は軸受の表面損傷が原因。
軌道面のキズ 転がり面に傷がつくと、その傷を転動体が通過するたびに音が発生。
玉・ころの損傷 転動体自体に傷やへこみがあると、回転のたびに音が出る。
圧痕 組付け時に衝撃が加わると、軌道面に凹みができて異音の原因になる。
緊急度
高。軌道面に傷がついている状態は、ベアリングの寿命が大幅に短くなっているサイン。交換を検討すべき。
対策
- ベアリングの状態を目視確認
- 損傷が確認された場合は交換
- 組付け時の衝撃防止(プレス圧入など適切な方法を使う)
パターン4: ブーン・ウーンという唸り音
どんな音?
低い「ブーン」「ウーン」という唸るような音。回転速度によって音の高さや大きさが変化するのが特徴。
主な原因
モーターメンテナンス.comの解説によると、唸り音の原因は複合的。
共振 モーターの回転数が設備の固有振動数と一致すると、共振で大きな唸り音が発生。
はめあい不良 軸の形状不良で、軌道輪が変形している状態。
電磁騒音 モーター内のステータ(固定子)が電磁力で振動し、フレームから騒音が出る。ACモーターで多い。
速度変化 回転数が一定以上になると音が大きくなる場合は、速度変化による影響。
緊急度
中。すぐに故障するわけではないが、共振状態は設備全体にダメージを与える。長期的には寿命を縮める原因になる。
対策
- 回転数の調整(共振回避)
- 軸のアライメント確認
- 防振対策(ゴムマウントなど)
パターン5: カチカチ・カチンカチン音
どんな音?
「カチカチ」「カチンカチン」という、何かがぶつかり合うような音。低速運転で目立ち、高速運転では連続音として聞こえる。
主な原因
オリエンタルモーターの技術資料によると、以下が原因として考えられる。
保持器ポケット内の衝突音 転動体が保持器のポケット内で衝突する音。低速で顕著。
潤滑不足 グリスが不足すると、金属同士の接触で衝突音が発生。
取付け不良 軸とハウジングの芯がずれていると、回転のたびに接触音が出る。
緊急度
中〜高。特に低速運転時の音が最近大きくなってきた場合は、部品の摩耗が進行しているサイン。
対策
- 潤滑剤の補給
- 芯出し(アライメント)の調整
- 保持器の状態確認
異音を聞き分けるコツ
5つのパターンを紹介したが、「実際に聞いてもわからない」という人も多いと思う。
異音を聞き分けるコツをいくつか紹介する。
コツ1: 正常な音を覚える
異常を検知するには、まず「正常な音」を知っておく必要がある。
設備が正常に稼働しているときの音を意識して聞いてみよう。毎日聞いていると、「あれ、今日はいつもと違う」という違和感がわかるようになる。
コツ2: 聴診器を使う
安価な産業用聴診器(数千円程度)を使うと、特定の部位からの音を聞き取りやすくなる。
ドライバーの柄を設備に当てて、もう一方の端を耳に近づけるという簡易的な方法もある。ただし、回転部への接触には注意。
コツ3: 比較対象を持つ
同じ型式の設備が複数台あれば、音を比較してみる。「こっちの設備は静かなのに、あっちはゴロゴロ言ってる」となれば、明らかに異常がある。
コツ4: 録音して客観的に確認する
人間の耳は主観的だ。「昨日と音が違う気がする」と思っても、本当に違うのか自信が持てないことが多い。
スマホで録音しておけば、過去の音と比較できる。スペクトログラム(周波数分析画像)に変換すれば、視覚的に違いがわかる。
異音を見つけたらどうする?
異音を発見したら、以下のステップで対応しよう。
Step 1: 記録する
- いつから聞こえるようになったか
- どの設備のどの部位から聞こえるか
- どんな音か(擬音語で表現)
- 運転条件(回転数、負荷、温度など)
Step 2: 周囲に共有する
一人で判断せず、他のメンバーにも確認してもらう。「自分だけかも」と思っていたことが、実は他の人も気づいていた、ということは多い。
Step 3: 応急処置を検討する
緊急度が高い場合は、設備を止めることも選択肢に入れる。「止めたら生産に影響が…」と思うかもしれないが、突発故障で1週間止まるよりはマシだ。
Step 4: 専門家に相談する
自社で判断がつかない場合は、メーカーや保全専門業者に相談する。異音の録音データがあると、電話やメールでも状況を伝えやすい。
まとめ: 異音は設備からのSOS
今回紹介した5つの異音パターンをおさらいしよう。
| パターン | 音の特徴 | 主な原因 | 緊急度 |
|---|---|---|---|
| カラカラ | 金属片が転がる音 | 保持器摩擦、グリス不適 | 中〜高 |
| キーン | 甲高い金属摩擦音 | 潤滑不足、異常荷重 | 高 |
| ゴロゴロ | 低い転がり音 | 軌道面・転動体の損傷 | 高 |
| ブーン | 唸るような音 | 共振、電磁騒音 | 中 |
| カチカチ | ぶつかり合う音 | 保持器衝突、芯ずれ | 中〜高 |
異音は、設備が発するSOSだ。「気のせいかも」と放置せず、早めに対応することで突発故障を防げる。
とはいえ、異音の判断は経験がないと難しい。ベテランがいない現場では、なおさらだ。
そんなときは、AIの力を借りるのも一つの手だ。PlantEarなら、スマホで5秒録音するだけで、AIが異音を分析してくれる。「正常」「要注意」「異常」の3段階判定と、具体的な対応推奨まで出してくれる。
まずは「いつもの音」を録音して、ベースラインを作っておくことから始めてみてはどうだろうか。