【一人親方必読】2027年から安全教育が義務に
労働安全衛生法改正で変わること
初めて「保護対象」かつ「義務主体」に——知っておくべき5つの変更点
1. 改正で一人親方が「保護対象」かつ「義務主体」に
2025年5月14日、労働安全衛生法の改正法が公布された。この改正で、一人親方・個人事業者の立場が大きく変わる。
労働者と同じ場所で働く個人事業者等を労働安全衛生法による保護の対象及び義務の主体として位置づけ、注文者等や個人事業者等自身が講ずべき各種措置を定めました。
出典:厚生労働省「労働安全衛生法改正リーフレット」
これまで労働安全衛生法は、「労働者」を保護するための法律だった。一人親方は「労働者」ではないため、法の対象外だった。
今回の改正で、一人親方は初めて労働安全衛生法の枠組みに入ることになる。
何が変わるのか(Before / After)
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 法的立場 | 対象外 | 保護対象+義務主体 |
| 安全衛生教育 | 任意 | 受講義務 |
| 機械の定期検査 | 任意 | 実施義務 |
| 不適合機械の使用 | 規制なし | 使用禁止 |
| 災害報告 | なし | 報告義務(創設) |
⚠️ 一人親方の数は約51万人
建設業では、技能者全体の約15.6%(推計51万人)が一人親方として働いている。国土交通省の調査では、従業員9人以下の小規模企業において44.5%が一人親方という実態がある。この全員が改正の対象となる。
2. 施行スケジュール:いつから何が変わる?
一人親方に関係する改正は、3段階で施行される。
元方事業者の措置義務対象が拡大
元請企業が講ずべき安全衛生措置の対象が、「労働者」から「作業従事者」に拡大。一人親方も保護対象となり、元請の安全衛生管理体制に組み込まれる。
- 協議組織への参加対象に
- 作業間連絡調整の対象に
- 安全衛生教育の対象に
業務上災害報告制度の創設
一人親方に業務上災害が発生した場合、災害発生状況等を厚生労働省に報告させることができる制度が創設される。報告主体や報告事項の詳細は今後、関連法令で示される予定。
一人親方自身への義務付け開始
いよいよ一人親方自身に義務が課される。具体的には、安全衛生教育の受講、定期自主検査の実施、不適合機械の使用禁止の3点。
3. 2027年4月から義務化される3つのこと
2027年4月1日から、労働者と同一の場所で作業を行う一人親方に対し、以下の3点が義務付けられる。
📚 義務①:安全衛生教育の受講
危険・有害な業務に就く際、安全衛生教育を受講することが義務付けられる。
対象となる業務の例:
- 高所作業(足場の組立て等)
- 重機の操作(クレーン、フォークリフト等)
- 有害物質の取扱い(塗装、解体等)
- その他、労働安全衛生規則で定める危険・有害業務
元請企業や発注者が実施する安全衛生教育に参加するか、自ら教育機関で受講する必要がある。
🔧 義務②:定期自主検査の実施
特定の機械等に対して、定期自主検査を実施することが義務付けられる。
対象となる機械等の例:
- 動力プレス
- フォークリフト
- 建設機械(ショベルカー等)
- 高所作業車
自ら所有する機械について、定められた頻度で検査を行い、記録を保存する必要がある。
🚫 義務③:不適合機械の使用禁止
構造規格や安全装置を具備しない機械の使用が禁止される。
具体例:
- 安全装置が故障したまま使用
- 構造規格を満たさない旧型機械の使用
- 検査不合格となった機械の使用
「古い機械だから仕方ない」は通用しなくなる。
4. 元請・発注者側の責任も拡大
一人親方自身への義務付けと同時に、元請・発注者側の責任も拡大される。
2026年4月から:元方事業者の措置義務対象拡大
元方事業者(元請企業)が混在作業場所で講ずべき措置の対象が、従来の「労働者」から「作業従事者」に拡大される。
これにより、元請企業は一人親方に対しても:
- 協議組織への参加を求める
- 作業間の連絡調整に含める
- 安全衛生教育を実施する
ことが求められる。
2027年4月から:作業場所管理事業者への連絡調整措置
「作業場所管理事業者」(仕事を自ら行う事業者であって、その場所を管理する者)に対して、危険・有害な業務を行う場合の作業間連絡調整等の措置が義務付けられる。
💼 元請企業・協力会社への影響
元請企業は、協力会社を通じて現場で働く一人親方をリストアップし、安全衛生管理体制に組み込む必要がある。契約書の見直しや、安全教育の対象者拡大を検討しておくべきだ。
5. 業務上災害報告制度への対応
2027年1月1日から、一人親方の業務上災害が発生した場合の報告制度が創設される。
制度の概要
- 対象:個人事業者等の業務上災害
- 報告先:厚生労働省
- 報告内容:災害発生状況など(詳細は今後の法令で規定)
現時点では、報告主体(誰が報告するのか)や報告事項の詳細は未定。元請企業が報告するのか、一人親方自身が報告するのかは、今後の関連法令で示される予定だ。
なぜ報告制度が必要なのか
これまで、一人親方の労働災害は統計的に把握されていなかった。「労働者」ではないため、労働者死傷病報告の対象外だったからだ。
報告制度の創設により、一人親方の災害実態が把握できるようになり、より効果的な安全対策につながることが期待されている。
6. 一人親方が今すぐやるべきこと
✅ 改正対応チェックリスト(一人親方向け)
-
安全衛生教育の受講履歴を確認
これまで受講した教育の証明書を整理。不足があれば受講計画を立てる。 -
所有機械の点検・検査状況を確認
定期自主検査が必要な機械をリストアップ。検査記録の保存方法を決める。 -
機械の安全装置・構造規格を確認
使用している機械が構造規格を満たしているか確認。不適合なら更新を検討。 -
元請との契約内容を確認
安全衛生教育や協議組織への参加に関する条項があるか確認。 -
一人親方労災保険への加入確認
万が一の災害に備え、特別加入の状況を確認。 -
記録のデジタル化を検討
教育履歴、検査記録、災害報告など、デジタルで管理できる体制を整える。
教育機関・支援リソース
- 建設業労働災害防止協会(建災防):各種安全衛生教育を実施
- 都道府県労働局:改正に関する相談窓口
- 一人親方労災保険組合:労災保険の特別加入、情報提供
- 元請企業・協力会社:現場での安全衛生教育
📌 まとめ:一人親方の時代が変わる
2027年4月の労働安全衛生法改正施行により、一人親方は初めて法律の枠組みに入る。「保護される」と同時に「義務を負う」立場になる。
- 2026年4月:元請の安全衛生管理対象に(保護強化)
- 2027年1月:災害報告制度スタート
- 2027年4月:安全教育受講・検査実施・不適合機械使用禁止が義務化
「自分のことは自分で管理する」という一人親方の働き方は変わらない。ただし、その「管理」に法的な裏付けと義務が伴うようになる。
施行まで時間はある。今から準備を始め、安全で安心して働ける環境を自ら整えていこう。
📚 参考文献
公開日:2026年1月19日 | カテゴリ:法令・コンプライアンス