現場コンパス

報告データの分析・活用術|ヒヤリハットを対策に変える方法

著者: GenbaCompass

報告データの分析・活用術|ヒヤリハットを対策に変える方法

「報告は集まるけど、分析する時間がない…」

ヒヤリハット報告を集めても、データが眠っていては意味がない。報告を分析し、対策につなげて、初めて事故を防げる。

でも、日々の業務に追われて、分析まで手が回らない現場が多い。

この記事では、限られた時間で効果的にデータを分析・活用する方法を解説する。

データ分析の基本的な考え方

データ分析の目的

データ分析の目的は、「感覚」を「根拠」に変えること。

感覚的な判断:

  • 「最近、転倒が多い気がする」
  • 「高所作業は危ない」
  • 「新人はミスが多い」

データに基づく判断:

  • 「転倒報告が前月比150%。雨天時に集中している」
  • 「高所作業の報告は全体の35%。特に足場作業が多い」
  • 「入社1年未満の報告は40%。教育プログラムを見直す必要がある」

分析の基本ステップ

  1. データを集める:報告を継続的に収集
  2. 傾向を見つける:パターンや偏りを発見
  3. 原因を探る:なぜその傾向が出るのか考察
  4. 優先順位をつける:どこから対策するか決める
  5. 対策を打つ:具体的なアクションを実行
  6. 効果を検証する:対策後の変化を確認

分析に必要な視点

データを見るときの基本的な視点:

視点 問い 分析例
どれくらいあるか 報告件数、推移
比率 何が多いか 4M分類、種類別
変化 どう変わっているか 前月比、前年比
偏り どこに集中しているか 場所別、作業別
関連 何と関係しているか 天候、時間帯

効果的な分析手法

手法1:トレンド分析

報告件数の推移を時系列で見る。

見るポイント:

  • 増加傾向か、減少傾向か
  • 季節変動はあるか
  • 急激な変化はあるか

解釈の例:

  • 増加→安全意識の向上(報告が活発化)OR 危険の増加
  • 減少→対策の効果 OR 報告意欲の低下
  • 急増→新しい作業開始、環境変化

手法2:パレート分析

「重要な少数」を見つける。80%の問題は20%の原因から来る(80:20の法則)。

分析方法:

  1. 報告を種類別に分類
  2. 件数の多い順に並べる
  3. 累積比率を計算
  4. 上位20%が80%を占めていないか確認

活用:

  • 上位項目に集中して対策
  • リソースを効率的に配分

手法3:クロス分析

2つの軸でデータを分析する。

分析の例:

  • 時間帯 × 報告種類
  • 場所 × 4M分類
  • 天候 × ヒヤリハット件数

発見の例:

  • 「昼食後の時間帯に、Man(人)要因が集中している」
  • 「雨天時に、転倒・滑りの報告が3倍になる」

手法4:比較分析

異なるグループを比較する。

比較の軸:

  • 現場間の比較
  • チーム間の比較
  • 期間の比較(今月 vs 先月、今年 vs 昨年)

活用:

  • ベストプラクティスの発見
  • 問題のあるエリアの特定
  • 対策効果の検証

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対策立案への活用

ステップ1:優先順位をつける

すべての報告に対策を打つことはできない。優先順位をつける。

優先順位の基準:

  • 重大性:発生したら被害が大きいか
  • 頻度:どれくらい報告されているか
  • 対策可能性:対策を打てる余地があるか

重大 × 高頻度 × 対策可能 → 最優先で対策

ステップ2:原因を深掘りする

データから「何が起きているか」は分かる。「なぜ起きているか」を深掘りする。

深掘りの方法:

  • 5Why分析で根本原因を探る
  • 現場の声を聞く
  • 類似事例を調べる

表面的な対策ではなく、根本原因への対策を目指す。

ステップ3:対策を具体化する

対策は具体的に、実行可能なレベルまで落とし込む。

NG:「安全意識を高める」 OK:「毎朝の朝礼で、前日のヒヤリハット報告を共有する」

NG:「注意を促す」 OK:「危険箇所に注意喚起の看板を設置する」

ステップ4:効果を測定する

対策を打ったら、効果を測定する。

測定方法:

  • 対策前後の報告件数の比較
  • 同種のヒヤリハットが減ったか
  • 新たな問題が発生していないか

効果がなければ、対策を見直す。

報告データのKPI管理

KPIを設定する

安全管理のKPI(重要業績評価指標)を設定する。

KPIの例:

  • 月間報告件数:20件以上
  • 是正率:100%
  • 報告から対策完了まで:7日以内
  • 重大ヒヤリハット件数:0件

KPIをモニタリングする

設定したKPIを定期的にモニタリングする。

モニタリング頻度:

  • 報告件数:毎日
  • 是正率:毎週
  • 全体傾向:毎月

KPIが達成できない時の対処

KPIが達成できない場合、原因を分析する。

報告件数が少ない場合:

  • 報告のハードルが高い?→QRコードの導入
  • 報告する動機がない?→フィードバックの強化
  • 報告文化がない?→経営者のメッセージ

是正率が低い場合:

  • リソースが不足?→優先順位の見直し
  • 責任者が不明確?→担当の明確化
  • 予算がない?→投資対効果の説明

分析結果の共有

誰に、何を共有するか

情報を受け取る人によって、共有する内容を変える。

経営層向け

  • 報告件数のサマリー
  • 重大リスクの状況
  • 投資対効果
  • 判断が必要な事項

管理者向け

  • 詳細な傾向分析
  • 対策の進捗
  • リソース配分の提案
  • 次月の重点項目

現場向け

  • 具体的な危険箇所
  • 自分たちの報告がどう活かされたか
  • 明日から気をつけること

共有の頻度とタイミング

  • 毎日:重大なヒヤリハットは即時共有
  • 毎週:週次の傾向サマリー
  • 毎月:月次レポート、安全協議会での共有
  • 四半期:経営層への報告、予算検討

共有の方法

  • ダッシュボードの画面共有
  • レポートの配布
  • 朝礼での口頭報告
  • 掲示板への掲示

よくある分析の落とし穴

落とし穴1:報告件数だけを見る

報告件数が増えた=危険が増えた、とは限らない。

報告件数が増えた理由:

  • 危険が増えた(悪い傾向)
  • 報告意欲が高まった(良い傾向)
  • 報告のハードルが下がった(良い傾向)

件数だけでなく、内容も見ることが大切。

落とし穴2:相関と因果を混同する

「Aが起きた時、Bも起きている」(相関)と「AがBの原因」(因果)は別物。

例:

  • 「雨の日に転倒が多い」→雨が原因か?
  • 実は「雨の日は急いで作業するから」かもしれない

相関関係から因果関係を安易に判断しない。

落とし穴3:異常値を見逃す

平均や合計だけ見ていると、異常値を見逃す。

例:

  • 月間報告件数は例年通り20件
  • でも、1人が15件報告している
  • 他の人は報告していない

個別のデータも確認する習慣をつける。

落とし穴4:分析のための分析になる

分析自体が目的化し、対策につながらないことがある。

対策:

  • 分析する前に「何を知りたいか」を明確にする
  • 分析結果から「次のアクション」を必ず出す
  • 対策につながらない分析はやめる

まとめ

報告データの分析・活用は、安全管理を「感覚」から「根拠」に変える。

分析の基本ステップ:

  1. データを集める
  2. 傾向を見つける
  3. 原因を探る
  4. 優先順位をつける
  5. 対策を打つ
  6. 効果を検証する

効果的な分析手法:

  • トレンド分析(時系列の推移)
  • パレート分析(重要な少数を特定)
  • クロス分析(2つの軸で見る)
  • 比較分析(グループ間の比較)

対策立案のポイント:

  • 優先順位をつける
  • 原因を深掘りする
  • 対策を具体化する
  • 効果を測定する

集めたデータを眠らせず、対策に変えよう。

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