現場コンパス

予兆保全とは|設備の突発故障を防ぐCBMの基本と導入ポイント

著者: GenbaCompass9
#予兆保全#CBM#状態基準保全#予知保全#設備保全

「また設備が止まった…」

製造現場で、突然の設備故障に頭を抱えた経験はないだろうか。

生産ラインが止まれば、納期遅延、品質低下、復旧コストと、被害は一気に広がる。「壊れてから直す」という従来のやり方では、こうしたリスクを避けられない。

そこで注目されているのが「予兆保全(CBM:状態基準保全)」だ。設備の状態を監視し、故障の兆候を捉えて、壊れる前にメンテナンスを行う。

この記事では、予兆保全の基本から、導入のメリット、そして実践のポイントまで解説する。


予兆保全とは

予兆保全(CBM:Condition Based Maintenance)とは、設備や機器の状態を監視し、劣化の兆候に応じてメンテナンスを行う手法だ。

3つの保全方式の違い

設備保全には、大きく3つの方式がある。

方式 英語名 特徴
事後保全(BDM) Breakdown Maintenance 壊れてから直す
時間基準保全(TBM) Time Based Maintenance 一定期間ごとに点検・交換
状態基準保全(CBM) Condition Based Maintenance 状態を見て適切なタイミングで対応

事後保全の問題点

壊れてから直す「事後保全」には、以下の問題がある。

  • 突発停止:いつ止まるか予測できない
  • 復旧時間:修理に時間がかかる
  • 二次被害:他の部品や製品への影響
  • コスト増大:緊急対応は通常より高コスト

時間基準保全の限界

「◯ヶ月ごとに交換」という時間基準保全(TBM)も、万能ではない。

  • 過剰メンテナンス:まだ使える部品を交換してしまう
  • 見落とし:想定より早く劣化する場合に対応できない
  • コスト非効率:部品寿命を使い切れない

CBMが解決する課題

CBM(状態基準保全)は、これらの課題を解決する。

  • 実際の状態に基づく判断:データで劣化を把握
  • 最適なタイミング:早すぎず、遅すぎず
  • コスト最適化:部品寿命を最大限活用

予兆保全が注目される背景

CBMの考え方自体は以前から存在していた。しかし、導入コストが高く、データ処理も複雑だったため、実用化が困難だった。

技術進歩による変化

近年、以下の技術進歩により、CBMが現実的な選択肢になった。

センシング技術の進化

  • 小型・高精度なセンサーの登場
  • 振動、温度、音響など多様なデータ取得が可能

IoT技術の普及

  • センサーデータのリアルタイム収集
  • クラウドでのデータ蓄積・分析

AI・機械学習の発展

  • 異常パターンの自動検知
  • 故障予測の精度向上

コストの低下

  • IoT関連機器の低価格化
  • クラウドサービスの普及

予兆保全の導入メリット

CBMを導入すると、具体的にどんなメリットがあるのか。

メリット1:突発故障の削減

センサーで設備の状態を常時監視することで、故障の予兆を早期に検知できる。

効果

  • 突発的な生産ライン停止を回避
  • 計画的なメンテナンスが可能に
  • 安定した稼働率を実現

メリット2:メンテナンスコストの削減

状態に基づいてメンテナンスを行うため、無駄な作業を削減できる。

具体的な削減効果

  • まだ使える部品の交換が不要に
  • メンテナンス頻度の最適化
  • 検査員の作業時間削減

ある事例では、フィルター交換の頻度を年12回から年6回に削減できた。

メリット3:設備寿命の延長

適切なタイミングでメンテナンスを行うことで、設備の寿命を延ばせる。

効果

  • 過負荷運転の早期発見
  • 劣化の進行を抑制
  • 設備投資サイクルの延長

メリット4:品質の安定化

設備の状態が安定すれば、製品の品質も安定する。

効果

  • 設備起因の不良削減
  • 品質トラブルの予防
  • 顧客クレームの減少

振動センサを活用した事例では、金型破損前にメンテナンスを実施できるようになり、品質不良をゼロにした例もある。

メリット5:保全業務の標準化

IoTやAIを活用することで、熟練者の経験に頼らない保全が可能になる。

効果

  • ベテランの暗黙知をデータ化
  • 若手でも適切な判断が可能
  • 人材不足への対応

予兆保全で使われるデータ

CBMでは、さまざまなデータを活用して設備の状態を監視する。

主な監視データ

データ種類 検知できる異常 主な用途
振動 ベアリング摩耗、軸ずれ、アンバランス 回転機器の監視
温度 過負荷、潤滑不良、電気的異常 モーター、配電盤など
電流 負荷変動、絶縁劣化 モーター、ポンプ
音響 異音、打音、摩擦音 軸受、歯車、コンプレッサー
圧力 詰まり、漏れ、劣化 配管、フィルター

音響データの活用

設備の異常は、音に現れることが多い。

音響監視のメリット

  • 非接触で測定できる
  • 複数の異常を同時に検知
  • 人間の聴覚では分からない異常も検出

ベテランが「音を聴いて異常を察知する」スキルを、AIで再現する取り組みも進んでいる。


予兆保全の導入ステップ

CBMを導入するための基本的なステップを紹介する。

ステップ1:対象設備の選定

すべての設備に一度に導入するのは現実的ではない。まずは以下の基準で優先順位をつける。

選定基準

  • 故障時の影響が大きい設備
  • 過去に突発故障が多い設備
  • ボトルネックになっている設備

ステップ2:監視項目の決定

対象設備に対して、どのデータを監視するかを決める。

検討ポイント

  • 過去の故障原因
  • 劣化の兆候がどこに現れるか
  • 取得しやすいデータは何か

ステップ3:センサーの設置

適切なセンサーを選定し、設置する。

注意点

  • 設置場所の環境(温度、振動、防水)
  • データ取得頻度
  • ネットワーク接続方式

ステップ4:基準値の設定

正常時のデータを収集し、異常判定の基準を設定する。

ポイント

  • 一定期間のデータ蓄積が必要
  • 季節変動なども考慮
  • 段階的にしきい値を調整

ステップ5:運用とチューニング

運用しながら、精度を高めていく。

継続改善

  • 誤検知の削減
  • 見逃しの分析
  • しきい値の最適化

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「PlantEar」は、設備の異音をAIで検知する予兆保全アプリ。

スマートフォンのマイクで設備音を録音するだけで、異常の兆候を分析。ベテランの「耳」をAIが再現し、突発故障を未然に防ぐ。

高価なセンサーを設置しなくても、手軽に予兆保全を始められる。

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導入時の注意点

CBM導入を成功させるための注意点を紹介する。

注意点1:小さく始める

最初から大規模に導入しようとすると、コストも時間もかかる。まずは1〜2台の設備から始めて、効果を確認しながら拡大する。

注意点2:現場の理解を得る

IoTやAIを導入しても、最終的に対応するのは現場の人間だ。導入の目的やメリットを現場に説明し、協力を得ることが重要。

注意点3:データだけに頼らない

センサーデータは万能ではない。現場の巡回点検と組み合わせて、総合的に判断する。

注意点4:継続的な改善

導入して終わりではない。運用しながら精度を高め、対象を拡大していく。


まとめ

予兆保全(CBM)は、設備の状態を監視し、故障の兆候を捉えて対応する保全手法だ。

従来の保全方式との違い

  • 事後保全:壊れてから直す → 突発停止のリスク
  • 時間基準保全:定期的に交換 → 無駄なコスト
  • 予兆保全:状態を見て判断 → 最適なタイミング

導入のメリット

  • 突発故障の削減
  • メンテナンスコストの最適化
  • 設備寿命の延長
  • 品質の安定化
  • 保全業務の標準化

導入のポイント

  1. 重要な設備から小さく始める
  2. 現場の理解を得る
  3. データと現場点検を組み合わせる
  4. 継続的に改善する

「壊れてから直す」から「壊れる前に直す」へ。予兆保全で、突発故障のない安定した生産現場を実現しよう。


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國分 良太

著者

國分 良太

制御設計エンジニア → AI・IoT・DX推進|東京の製造業メーカー開発部門

製造業の現場で設備設計・改善プロジェクト・品質向上施策に従事。なぜなぜ分析(RCA)やリスクアセスメントの実務経験をもとに、現場DXを支援するアプリケーションの開発と情報発信に取り組んでいます。

※ 本サイトは所属企業とは関係のない個人活動です。記載の見解は筆者個人のものです。