「なぜなぜ分析をやってみたけど、結局『担当者のミス』で終わってしまった」
正直、こういう経験をした人は多いはずだ。
なぜなぜ分析は、トヨタ生産方式から生まれた強力な問題解決手法。でも、やり方を間違えると「犯人探し」になってしまい、本来の目的である再発防止につながらない。
この記事では、業界別のテンプレートに加えて、なぜなぜ分析で失敗しないためのポイントを徹底解説する。テンプレートをダウンロードして終わり、ではなく、実際に効果を出すための使い方まで踏み込んでいく。
そもそも、なぜテンプレートが必要なのか
「なぜ?を5回繰り返せばいい」
理屈は簡単だ。でも、実際にやってみると難しい。
テンプレートなしでよくある失敗
テンプレートを使わずに進めると、こんな問題が起きやすい。
失敗例1:いきなり「人のせい」にする
問題:納品遅延が発生した
なぜ1:担当者が確認を怠った
→ 対策:担当者に注意する
これ、対策になっていない。同じ人が同じミスを繰り返す可能性があるし、別の人が同じミスをする可能性もある。
失敗例2:分析が浅いまま終わる
問題:製品に傷がついていた
なぜ1:検品で見落とした
なぜ2:検品担当者が疲れていた
→ 対策:休憩を増やす
確かに休憩は大事だが、根本原因にたどり着いていない。なぜ疲労が見落としにつながったのか、なぜ検品ミスが後工程で発見できなかったのか、掘り下げが足りない。
テンプレートを使うメリット
業界や問題タイプに応じたテンプレートを使うと、以下のメリットがある。
- 視点の漏れを防げる:4M(人・機械・材料・方法)など、確認すべき観点が整理されている
- 分析の深さを確保できる:各段階で確認すべきポイントが明示されている
- 「人のせい」を防げる:仕組みやプロセスに目を向ける構造になっている
- チームで共有しやすい:フォーマットが統一されていると議論が進みやすい
なぜなぜ分析の基本ルール(全業界共通)
テンプレートを紹介する前に、どの業界でも共通する基本ルールを押さえておこう。
ルール1:事実ベースで進める
「たぶん〜だと思う」「おそらく〜だろう」は禁止。
なぜなぜ分析は推測ではなく、現場で確認した事実をベースに進める。分からないことがあれば、分析を中断してでも現場に確認しに行く。
ルール2:「人のせい」で止まらない
トヨタ生産方式の基本思想に「人を責めずに、しくみを責めろ」という考え方がある。
ミスをした人を責めても、再発は防げない。「なぜミスが起きても検知できなかったのか」「なぜミスを誘発する環境だったのか」という仕組み・プロセス側の原因に踏み込む必要がある。
ルール3:対策は「仕組み化」する
「次回から気をつけます」「ダブルチェックを徹底します」
これは対策ではない。願望だ。
人は忘れるし、ミスもする。だから対策は「人に頼らない仕組み」で考える。チェックリストの導入、システムによる自動検知、作業手順の改善など、再発を物理的に防げる対策を立てる。
ルール4:5回は目安、回数にこだわらない
「なぜを5回繰り返す」と言われるが、5回は目安だ。
トヨタ生産方式を確立した大野耐一氏も「5回ほど繰り返せば真因に行き着くことが多い」と述べているだけで、必ず5回というわけではない。3回で真因にたどり着くこともあれば、10回以上必要なこともある。
大事なのは回数ではなく、「これ以上掘り下げても対策が打てない」というレベルまで到達すること。
製造業向けテンプレート
製造業では、4M(人・機械・材料・方法)の観点から分析することが基本だ。
品質不良分析テンプレート
■ 問題の定義
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発生日時:____年__月__日 __時__分
発生場所:____工程(ライン名:______)
問題内容:________________________
影響範囲:□ 社内発見 □ 出荷後発覚 □ 顧客クレーム
不良数量:____個(ロット数:____)
■ 4M観点での初期確認
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
□ Man(人):作業者の変更、経験、疲労状態
□ Machine(機械):設備の状態、保守履歴、異常有無
□ Material(材料):材料ロット、仕入先、保管状態
□ Method(方法):作業手順、標準との差異、変更点
■ なぜなぜ分析
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【なぜ1】直接原因は何か?
→ ______________________________
確認方法:□ 現場確認 □ データ確認 □ ヒアリング
【なぜ2】なぜその直接原因が発生したか?
→ ______________________________
確認方法:□ 現場確認 □ データ確認 □ ヒアリング
【なぜ3】管理・教育の観点で問題はないか?
→ ______________________________
確認方法:□ 現場確認 □ データ確認 □ ヒアリング
【なぜ4】仕組み・ルールは適切だったか?
→ ______________________________
確認方法:□ 現場確認 □ データ確認 □ ヒアリング
【なぜ5】組織・文化レベルの問題はないか?
→ ______________________________
確認方法:□ 現場確認 □ データ確認 □ ヒアリング
■ 真因と対策
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
真因:______________________________
対策(仕組み化できているか確認):
□ 暫定対策:____________________(実施日:__/__)
□ 恒久対策:____________________(実施日:__/__)
□ 水平展開:____________________(実施日:__/__)
■ 効果確認
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
確認日:____年__月__日
効果:□ 再発なし □ 再発あり(→ 再分析へ)
製造業での使い方のコツ
変化点に注目する
製造現場で問題が起きるとき、多くの場合「何かが変わった」タイミングと一致する。
- 作業者が変わった(新人、交代、残業増)
- 設備が変わった(故障後、保守後、設定変更)
- 材料が変わった(ロット、仕入先、保管条件)
- 方法が変わった(手順変更、条件変更、治具変更)
分析を始める前に、直近の変化点を洗い出すと、原因に早くたどり着ける。
現場・現物・現実の「三現主義」
製造業のなぜなぜ分析では、机上で考えるだけでなく、必ず現場に行って現物を見る。データだけでは分からない情報が、現場にはある。
IT業界向けテンプレート
システム障害やバグの原因分析に特化したテンプレート。
システム障害分析テンプレート
■ 障害の定義
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発生日時:____年__月__日 __時__分〜__時__分
影響サービス:______________________
影響範囲:□ 一部ユーザー □ 全ユーザー □ 内部のみ
障害レベル:□ Critical □ High □ Medium □ Low
検知方法:□ 監視アラート □ ユーザー報告 □ 社内発見
■ 技術的な初期調査
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
□ ログ確認:エラーログ、アクセスログ、システムログ
□ メトリクス:CPU、メモリ、ディスク、ネットワーク
□ 直近のデプロイ:リリース日、変更内容
□ 外部要因:外部API、クラウドサービスの障害情報
■ なぜなぜ分析
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【なぜ1】技術的な直接原因は何か?
→ ______________________________
根拠:□ ログ □ コード □ 設定 □ インフラ
【なぜ2】開発・テストで検出できなかった理由は?
→ ______________________________
根拠:□ テスト仕様 □ レビュー記録 □ CI/CD設定
【なぜ3】レビュー・品質管理プロセスの問題は?
→ ______________________________
根拠:□ レビュー体制 □ 品質基準 □ チェックリスト
【なぜ4】プロジェクト管理上の問題は?
→ ______________________________
根拠:□ スケジュール □ リソース □ 優先度判断
【なぜ5】組織・体制・文化の問題は?
→ ______________________________
根拠:□ 体制 □ スキル □ コミュニケーション
■ 真因と対策
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
真因:______________________________
対策:
□ 緊急対応:____________________(完了:__/__)
□ 恒久対策:____________________(予定:__/__)
□ 再発防止(自動化/仕組み化):__________
■ ポストモーテム共有
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
共有日:____年__月__日
参加者:______________________
学びの共有:□ ドキュメント化 □ チーム共有 □ 全社共有
IT業界での使い方のコツ
「blame(責め)」ではなく「blameless(責めない)」
IT業界では「blameless postmortem(責めないポストモーテム)」という考え方が広まっている。
障害の原因を個人の責任に帰結させると、次から問題を隠すようになる。大事なのは「なぜシステムがエラーを防げなかったか」「なぜテストで検出できなかったか」というシステム・プロセス側の改善だ。
ログとメトリクスを活用する
IT分野の強みは、ログやメトリクスという客観的なデータが残ること。なぜなぜ分析の各段階で、推測ではなくデータに基づいた根拠を示す。
サービス業向けテンプレート
顧客クレームやサービス品質問題の分析に特化。
顧客クレーム分析テンプレート
■ クレームの定義
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発生日時:____年__月__日 __時__分
発生店舗/部門:______________________
クレーム内容:______________________
顧客の要望:□ 謝罪 □ 返金 □ 交換 □ 改善要求
顧客感情:□ 激怒 □ 不満 □ 困惑 □ 要望レベル
■ 顧客接点の確認
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□ 対応スタッフ:経験年数、当日の状況
□ 対応プロセス:標準手順との差異
□ 情報共有:引き継ぎ、連携の状況
□ 環境要因:混雑状況、システム状態
■ なぜなぜ分析
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【なぜ1】顧客との接点で何が起きたか?
→ ______________________________
確認:□ 顧客の声 □ スタッフ証言 □ 記録
【なぜ2】スタッフの対応・システムの問題は?
→ ______________________________
確認:□ 対応記録 □ システムログ □ ヒアリング
【なぜ3】教育・研修体制は適切だったか?
→ ______________________________
確認:□ 研修記録 □ マニュアル □ OJT状況
【なぜ4】業務プロセス・マニュアルに不備は?
→ ______________________________
確認:□ 業務フロー □ マニュアル □ 例外対応
【なぜ5】組織体制・リソース配分は適切か?
→ ______________________________
確認:□ シフト □ 人員配置 □ 権限設定
■ 真因と対策
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
真因:______________________________
対策:
□ 顧客対応:____________________(完了:__/__)
□ 再発防止:____________________(予定:__/__)
□ 横展開:____________________(予定:__/__)
■ 顧客フォロー
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
フォロー日:____年__月__日
対応内容:______________________
顧客反応:□ 納得 □ 継続フォロー必要
サービス業での使い方のコツ
顧客視点を忘れない
サービス業のなぜなぜ分析では、「内部の視点」と「顧客の視点」の両方が必要だ。
内部的には問題がなくても、顧客から見ると不満が残ることがある。分析の際は「顧客はどう感じたか」「顧客の期待とのギャップは何か」という視点を入れる。
スタッフを責めない仕組みを作る
サービス業は人が直接顧客と接する。だからこそ、スタッフ個人を責める分析になりやすい。
「Aさんの対応が悪かった」ではなく、「なぜAさんは適切な対応ができなかったか」「なぜ組織としてカバーできなかったか」という視点で分析する。
建設業向けテンプレート
安全事故やヒヤリハットの分析に特化。
安全事故・ヒヤリハット分析テンプレート
■ 事象の定義
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発生日時:____年__月__日 __時__分
発生場所:現場名(________)工区(____)
事象区分:□ 災害 □ ヒヤリハット □ 不安全状態
事故類型:□ 墜落・転落 □ 転倒 □ 激突 □ 飛来・落下
□ 崩壊・倒壊 □ 挟まれ・巻き込まれ □ その他
被災程度:□ 死亡 □ 休業 □ 不休 □ 無傷害
■ 4M+環境の確認
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
□ Man(人):資格、経験、体調、保護具着用
□ Machine(機械):点検状況、使用状況、不具合
□ Material(材料):資材の状態、仮設材の状況
□ Method(方法):作業手順、KY活動、指示内容
□ 環境:天候、温度、照明、足場状態
■ なぜなぜ分析
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【なぜ1】不安全行動・不安全状態は何だったか?
→ ______________________________
確認:□ 現場確認 □ 写真 □ 証言
【なぜ2】なぜその不安全行動・状態が発生したか?
→ ______________________________
確認:□ 作業計画 □ 指示内容 □ 設備状態
【なぜ3】作業前の安全確認は適切だったか?
→ ______________________________
確認:□ KY記録 □ TBM記録 □ 点検記録
【なぜ4】安全管理体制は機能していたか?
→ ______________________________
確認:□ 安全計画 □ パトロール記録 □ 教育記録
【なぜ5】組織的な安全文化の問題は?
→ ______________________________
確認:□ 過去事例 □ 報告体制 □ コミュニケーション
■ 真因と対策
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
真因:______________________________
対策(ハード・ソフト両面で):
□ ハード対策:____________________(完了:__/__)
□ ソフト対策:____________________(完了:__/__)
□ 水平展開:____________________(予定:__/__)
■ 再発防止の効果確認
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
確認日:____年__月__日
同種事象:□ 発生なし □ 発生あり(→ 追加対策)
安全パトロール結果:________________
建設業での使い方のコツ
「不安全行動」と「不安全状態」の両方を見る
建設業の労働災害は、ハインリッヒの法則で知られるように「不安全行動」と「不安全状態」の組み合わせで発生する。
分析の際は、人の行動だけでなく、設備や環境の状態も確認する。「なぜ作業者は保護具を着用しなかったか」だけでなく、「なぜ保護具を着用しにくい状況だったか」「なぜ未着用を検知できなかったか」まで掘り下げる。
朝礼やKY活動との連携
建設現場では毎日の朝礼やKY(危険予知)活動がある。なぜなぜ分析で見つかった対策は、朝礼での周知やKYシートへの反映まで落とし込む。
📱 なぜなぜ分析をデジタルで効率化
ここまで紹介したテンプレート、正直言って紙やExcelで管理するのは大変だ。
- 過去の分析結果を探すのに時間がかかる
- 類似事例との比較が難しい
- チームでの共有がうまくいかない
- フォローアップが漏れる
「WhyTrace」は、なぜなぜ分析(5Why)をスマホで簡単に記録・管理できるアプリ。AIが分析をサポートしてくれるので、「人のせい」で終わらない、仕組みレベルの真因にたどり着きやすい。
テンプレートを使っても失敗する3つのパターン
最後に、テンプレートを使っても失敗するケースを紹介する。これを避ければ、分析の質は格段に上がる。
失敗パターン1:埋めることが目的になる
テンプレートの項目を「埋めること」がゴールになってしまうケース。
形式的に5回「なぜ」を繰り返しても、各段階の因果関係がつながっていなければ意味がない。「なぜ1」の答えが「なぜ2」の原因になっているか、論理的につながっているかを確認する。
失敗パターン2:一人で完結してしまう
分析担当者が一人で黙々と埋めて完結するケース。
なぜなぜ分析は、複数の視点があった方が精度が上がる。現場の作業者、管理者、品質担当者など、異なる立場の人を巻き込む。「他に原因はないか?」という問いかけが、見落としを防ぐ。
失敗パターン3:対策が「注意する」で終わる
真因を特定しても、対策が「以後、注意する」「再発しないよう徹底する」で終わるケース。
これは対策ではない。人の注意力は続かない。対策は必ず「仕組み」で考える。チェックリストの追加、システムによる検知、作業手順の見直しなど、人に頼らない方法を検討する。
まとめ
なぜなぜ分析は、正しく使えば強力な問題解決手法だ。
基本ルール:
- 事実ベースで進める(推測禁止)
- 「人のせい」で止まらない(仕組みを見る)
- 対策は「仕組み化」する(注意するは禁止)
- 5回は目安(回数より深さ)
業界別のポイント:
- 製造業:4M観点、変化点管理、三現主義
- IT:blameless、ログ活用、システム視点
- サービス業:顧客視点、スタッフを責めない
- 建設業:不安全行動+不安全状態、KYとの連携
テンプレートを使っても失敗するパターン:
- 埋めることが目的になる
- 一人で完結する
- 対策が「注意する」で終わる
テンプレートはあくまでツール。大事なのは「真因にたどり着き、再発を防ぐ」という目的を忘れないことだ。
まずは直近で起きた問題を1つ選んで、今日紹介したテンプレートで分析してみてほしい。
現場改善に役立つ関連アプリ
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最終更新:2026年1月9日