【速報】ストレスチェック義務化が全事業場へ拡大|50人未満企業の準備ガイド
2028年施行予定の労働安全衛生法改正でストレスチェックが50人未満事業場も義務化。実施率の現状、具体的な準備方法、費用目安、地さんぽの活用法まで解説。
「うちは50人未満だから、ストレスチェックは関係ない」
そう思っていた事業者に、大きな転換点が訪れた。
2025年5月、労働安全衛生法の改正が公布され、50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されることが決まった。施行は公布後3年以内(最長2028年)だ。
「何を準備すればいいのか」「費用はどれくらいかかるのか」——この記事では、中小企業の実務担当者が知っておくべきポイントを整理する。
なぜ50人未満も義務化されるのか
実施率の格差が課題だった
厚生労働省「令和6年労働安全衛生調査」によると、ストレスチェックの実施率には大きな格差がある。
- 50人以上の事業場:89.8%
- 10〜49人の事業場:57.8%
- 努力義務の50人未満全体:33.2〜41.7%
約30ポイントの差がある。努力義務のままでは、小規模事業場でのメンタルヘルス対策が進まないという実態があった。
精神障害の労災が過去最多
もう一つの背景は、精神障害による労災認定の増加だ。
令和6年度の精神障害による労災認定件数は1,055件で、過去最多を記録した。長期休業や退職に至るケースも増えており、企業規模を問わない対策が求められている。
改正の概要
何が変わるのか
| 項目 | 現行 | 改正後 |
|---|---|---|
| 50人以上の事業場 | 義務 | 義務(変更なし) |
| 50人未満の事業場 | 努力義務 | 義務 |
| ストレスチェック実施 | — | 義務 |
| 高ストレス者への面接指導 | — | 義務 |
| 集団分析・職場環境改善 | — | 努力義務 |
いつから施行されるのか
施行日は「公布後3年以内に政令で定める日」とされている。つまり、最長で2028年5月頃までには施行される。
ただし、第14次労働災害防止計画(2023年策定)では、2027年を目標年度として「50人未満の小規模事業場のストレスチェック実施率を50%以上」という目標を掲げている。前倒し施行の可能性もある。
ストレスチェック制度の流れ
改めて、ストレスチェック制度の全体像を確認しておこう。
実施の流れ(5ステップ)
調査票の配布・回答
- 「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)が標準
- 厚労省推奨の調査票を使用するのが一般的
結果の通知(本人へ)
- 医師、保健師等が実施者として結果を評価
- 結果は本人に直接通知(事業者は本人の同意なく閲覧不可)
高ストレス者の選定
- 一定の基準を超えた者を「高ストレス者」として選定
- 本人に面接指導の申出を勧奨
医師による面接指導
- 高ストレス者が申し出た場合、医師による面接指導を実施
- 事業者は面接指導の結果に基づき、必要な措置を講じる
集団分析・職場環境改善(努力義務)
- 部署単位などで集団分析を実施
- 結果を職場環境の改善に活用
実施者と実施事務従事者
- 実施者:医師、保健師、または必要な研修を修了した看護師・精神保健福祉士
- 実施事務従事者:実施者の指示のもと、調査票の配布・回答収集などを行う者(人事権を持たない者に限る)
50人未満事業場の実施体制
「うちには産業医がいない」という事業場が大半だろう。厚労省もこの点は認識しており、支援策を打ち出している。
地域産業保健センター(地さんぽ)の活用
50人未満の事業場向けに、無料で産業保健サービスを提供する「地域産業保健センター」がある。通称「地さんぽ」だ。
地さんぽで受けられるサービス:
- 医師による面接指導(高ストレス者対応)
- 健康相談
- 長時間労働者への面接指導
- 産業保健に関する情報提供
厚労省は今回の法改正に伴い、地さんぽの体制拡充を進める方針を示している。
外部委託の活用
実施者の確保が難しい場合、外部機関への委託が現実的な選択肢となる。
外部委託のメリット:
- 専門家による質の高い実施
- 社内の人員負担を軽減
- 個人情報管理の負担軽減
外部委託の費用目安:
- 1人あたり500〜2,000円程度(実施内容により変動)
- 面接指導は別途費用がかかる場合あり
実施方法の選択肢
1. 厚労省の無料ツールを使う
厚生労働省は「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」を無料で提供している。
特徴:
- 無料でダウンロード可能
- 調査票の配布・回収・集計が可能
- 集団分析機能あり
- 個人情報の管理は自社で行う必要あり
向いている事業場:
- ITに詳しい担当者がいる
- コストを抑えたい
- 自社で個人情報管理ができる
2. 外部サービスを利用する
EAP(従業員支援プログラム)事業者や、ストレスチェック専門サービスを利用する方法。
特徴:
- 調査票の配布から結果通知まで一括対応
- 個人情報管理を外部に委託可能
- 費用がかかる
向いている事業場:
- 担当者の負担を減らしたい
- 個人情報管理に不安がある
- 一定の費用をかけられる
3. 産業医と連携する
50人以上の事業場や、任意で産業医を選任している場合は、産業医と連携して実施する。
費用とコスト試算
具体的な費用感を把握しておこう。
自社実施の場合
- 厚労省ツール:無料
- 実施者への報酬(外部医師等に依頼する場合):1回1〜3万円程度
- 面接指導(地さんぽ利用):無料
- 面接指導(外部医師に依頼):1人1〜2万円程度
外部委託の場合
- 基本料金:年間3〜10万円程度(事業場規模による)
- 従業員1人あたり:500〜2,000円程度
- 集団分析オプション:1〜3万円程度
- 面接指導:1人1〜2万円程度
30人の事業場で試算
外部委託(中程度のサービス)を利用した場合:
- 基本料金:5万円
- 30人 × 1,000円 = 3万円
- 集団分析:2万円
- 年間合計:約10万円
高ストレス者が出た場合、面接指導費用が追加される。
よくある質問Q&A
Q1. パート・アルバイトも対象?
A. 常時使用する労働者が対象。パート・アルバイトでも、①契約期間が1年以上(見込み含む)、②週の労働時間が正社員の4分の3以上、の両方を満たす場合は対象となる。
Q2. 結果を会社が見ることはできる?
A. 本人の同意がなければ、事業者は個人の結果を見ることができない。ただし、本人が面接指導を申し出た場合は、その事実は事業者に伝わる。
Q3. 高ストレス者への対応は?
A. 高ストレス者本人に対し、医師による面接指導を受けることを勧奨する。本人が申し出た場合、事業者は面接指導を実施しなければならない(義務)。
Q4. 集団分析は義務?
A. 努力義務。ただし、職場環境改善に有効なため、実施が推奨される。10人未満の集団は、個人が特定されるリスクがあるため注意が必要。
Q5. 派遣労働者はどちらが実施?
A. 派遣元事業者が実施する。ただし、集団分析については、派遣先の職場環境改善のため、派遣先でも実施することが望ましい。
今から始めるべき準備
施行まで時間があるとはいえ、早めの準備が望ましい。
ステップ1:現状把握(今すぐ)
- 常時使用する労働者数の確認
- メンタルヘルス対策の現状確認
- 既存の健康診断体制の確認
ステップ2:実施体制の検討(〜2026年度中)
- 実施者の選定(外部委託 or 自社実施)
- 地さんぽへの相談
- 費用の見積もり・予算確保
ステップ3:試行実施(〜2027年度)
- 本格施行前に一度実施してみる
- 課題の洗い出し
- 従業員への周知・理解促進
ステップ4:本格実施(2028年度〜)
- 年1回の定期実施
- 結果に基づく職場環境改善
- PDCAサイクルの確立
まとめ
ストレスチェック義務化の拡大は、中小企業にとって負担増となる面もある。しかし、メンタルヘルス不調による休職・退職は、企業にとってより大きな損失だ。
押さえておくべきポイント:
- 50人未満事業場も義務化(2028年頃施行)
- 地さんぽ(地域産業保健センター)を活用すれば無料で面接指導が可能
- 外部委託の場合、年間10万円前後から実施可能
- 施行前に試行実施しておくのがおすすめ
今から準備を始めれば、施行時に慌てることはない。まずは地さんぽに相談してみることをお勧めする。
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2026年1月19日公開
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