「是正処置と予防処置、どう違うの?」
ISO9001の品質管理で頻繁に登場するこの2つの用語。似ているようで、目的とタイミングがまったく異なる。
この記事では、是正処置と予防処置の違いをISO9001の観点から解説する。具体的な手順と記録の書き方も紹介する。
是正処置と予防処置の違い
まず、2つの処置の違いを明確にしよう。
基本的な違い
| 項目 | 是正処置 | 予防処置 |
|---|---|---|
| タイミング | 問題発生後 | 問題発生前 |
| 目的 | 再発防止(同じ問題を繰り返さない) | 未然防止(問題を起こさない) |
| 対象 | 発生した不適合 | 潜在的なリスク |
| アプローチ | 原因究明 → 対策 | リスク評価 → 事前対策 |
具体例で理解する
是正処置の例: 製品に不良が発生した → 原因を調査したら、設備の調整不足だった → 調整手順を見直し、チェックリストを作成した
予防処置の例: 類似工程で同じ設備を使っている → 同様の不良が発生するリスクがある → 事前に調整手順とチェックリストを導入した
「起きてから直す」のが是正処置、「起きる前に防ぐ」のが予防処置だ。
修正・是正処置・予防処置の関係
「修正」と「是正処置」も混同しやすい。3つの違いを整理しよう。
3つの処置の違い
| 処置 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 修正(応急処置) | 発生した不適合そのものに対処 | 不良品を廃棄する、手直しする |
| 是正処置(恒久対策) | 再発防止のため原因を除去 | 作業手順を改訂する、設備を修理する |
| 予防処置(未然防止) | 潜在的な問題を事前に防ぐ | リスクを評価し、事前対策を講じる |
3つの処置の流れ
- 修正:まず目の前の問題に対処する(応急処置)
- 是正処置:原因を究明し、再発を防止する(恒久対策)
- 予防処置:類似問題が発生しないよう、事前に手を打つ(未然防止)
修正だけで終わると、同じ問題が繰り返される。是正処置まで行うことが重要だ。
ISO9001:2015での位置づけ
ISO9001:2015では、是正処置と予防処置の扱いが変わった。
是正処置(10.2項)
ISO9001:2015では、是正処置は**10.2項「不適合及び是正処置」**に規定されている。
要求事項の要点:
- 不適合が発生したら、その不適合に対処する(修正)
- 不適合の原因を特定し、除去するための処置をとる(是正処置)
- 是正処置の有効性をレビューする
- 必要に応じて、品質マネジメントシステムを変更する
- 是正処置の記録を保持する
予防処置(リスク及び機会)
ISO9001:2015では、「予防処置」という条項はなくなった。
代わりに、**6.1項「リスク及び機会への取組み」**として、予防的な考え方が組み込まれた。
要求事項の要点:
- リスクと機会を特定する
- リスクを最小化し、機会を活用する計画を策定する
- 計画を実施し、有効性を評価する
つまり、予防処置は「リスク管理」の一部として、日常業務に組み込むことが求められている。
是正処置の進め方
是正処置を効果的に進めるための手順を紹介する。
是正処置の5ステップ
ステップ1:不適合の特定と記録
- 何が起きたか(事実)を明確にする
- 発生日時、場所、関係者を記録する
- 不良品の数量、影響範囲を把握する
ステップ2:応急処置(修正)
- 不良品の隔離・廃棄
- 出荷停止、回収の判断
- 顧客への連絡
ステップ3:原因分析
- なぜなぜ分析(5Why)で根本原因を特定
- 発生原因(なぜ不良が発生したか)
- 流出原因(なぜ不良が流出したか)
ステップ4:是正処置の実施
- 発生原因への対策(工程の改善)
- 流出原因への対策(検査の強化)
- 作業手順書・チェックリストの改訂
ステップ5:有効性の確認
- 対策後に同じ不良が発生していないか確認
- 一定期間モニタリングする
- 効果がなければ追加対策を検討
是正処置報告書の記入例
【不適合内容】
製品Aのネジ締め付けトルク不足により、客先で部品脱落が発生
【発生日】2025年1月10日
【発生場所】組立ライン2号機
【影響】出荷済み製品100個(ロット番号:25010)
【応急処置】
・出荷済み製品の回収・交換
・在庫品の全数検査
【原因分析】
・発生原因:トルクレンチの校正期限切れにより、規定トルクが出ていなかった
・流出原因:完成品検査でトルク確認項目が抜けていた
【是正処置】
・発生対策:トルクレンチの校正管理表を作成し、期限管理を徹底
・流出対策:完成品検査チェックリストにトルク確認項目を追加
【有効性確認】
・2025年2月10日まで同一不良の再発なし → 対策有効
予防処置(リスク管理)の進め方
ISO9001:2015では、予防処置はリスク管理として行う。
リスク管理の4ステップ
ステップ1:リスクの特定
- 過去の不適合データを分析
- 類似工程・類似製品のリスクを洗い出す
- ヒヤリハット情報を収集
ステップ2:リスクの評価
- 発生確率と影響度を評価
- 優先順位をつける
- 対策が必要なリスクを決定
ステップ3:対策の計画と実施
- リスクを低減する対策を計画
- 担当者と期限を決める
- 対策を実施する
ステップ4:有効性の確認
- 対策後のリスクを再評価
- 問題が発生していないか確認
- 必要に応じて追加対策
予防処置の具体例
例1:新製品の立ち上げ 過去の類似製品で発生した不良を分析し、新製品の製造工程に事前対策を組み込む
例2:設備の導入 過去のトラブル事例を参考に、新設備の保全計画を策定する
例3:季節変動への対応 夏季に発生しやすい不良(温度・湿度の影響)を事前に把握し、対策を講じる
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まとめ
是正処置と予防処置は、品質管理の両輪だ。
是正処置と予防処置の違い:
- 是正処置:問題発生後に再発を防止
- 予防処置:問題発生前に未然に防止
ISO9001:2015での位置づけ:
- 是正処置:10.2項で規定
- 予防処置:6.1項「リスク及び機会」に統合
是正処置の5ステップ:
- 不適合の特定と記録
- 応急処置(修正)
- 原因分析
- 是正処置の実施
- 有効性の確認
予防処置(リスク管理)の4ステップ:
- リスクの特定
- リスクの評価
- 対策の計画と実施
- 有効性の確認
是正処置だけでは「モグラ叩き」になりがちだ。予防処置(リスク管理)を組み合わせて、問題を未然に防ぐ体制を構築しよう。
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