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FMEAとは?やり方・RPNの計算方法・対策立案の手順【2026年入門ガイド】

17品質管理
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「設計段階で不具合を予測したい」

製品の市場クレームや工程不良は、発生してからでは対応コストが大きくなる。事前に問題を予測し、対策を打つ手法が求められている。

この記事では、FMEA(故障モード影響解析)の目的と進め方を解説する。RPN(リスク優先度)の算出方法と、対策立案の手順を紹介する。


FMEAとは

FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)は、製品や工程で発生しうる故障モードを事前に予測し、対策を考える品質管理手法だ。

FMEAの起源

FMEAは、もともと米軍が信頼性確保のために開発した手法だ。1949年に米軍が発行したMIL-P-1629(手順書)がその起源とされる。

その後、1960年代にNASAがアポロ計画をはじめとする宇宙開発プログラムに採用し、航空宇宙分野で広く活用された。こうした実績が評価され、現在では自動車、医療機器、電子機器など幅広い業界で使われている。特に車載製品を扱う製造現場では、コアツールの一つとして活用が求められる。

FMEAの種類

FMEAには、分析対象によって2つの種類がある。

種類 分析対象 目的
設計FMEA(DFMEA) 製品設計 設計段階で製品の故障モードを予測
工程FMEA(PFMEA) 製造工程 製造段階で工程の故障モードを予測

RPNとは

RPN(Risk Priority Number:リスク優先度数)は、故障モードのリスクの大きさを数値化したものだ。

RPNの計算式

RPNは、3つの評価指標を掛け合わせて算出する。

RPN = 影響度(S) × 発生度(O) × 検出度(D)

評価指標 内容
影響度(Severity) 故障が発生した場合の影響の大きさ
発生度(Occurrence) 故障が発生する頻度
検出度(Detection) 故障を検出する難しさ

評価基準(10段階)

各指標は1〜10の10段階で評価する。

影響度(Severity)

スコア 影響の程度
1〜2 軽微(ユーザーが気付かないレベル)
3〜4 軽度(ユーザーが不満を感じる)
5〜6 中程度(機能低下を招く)
7〜8 重度(製品が使用不能になる)
9〜10 致命的(安全・法規制に関わる)

発生度(Occurrence)

スコア 発生頻度
1〜2 非常に稀(ほぼ発生しない)
3〜4 稀(時々発生)
5〜6 中程度(定期的に発生)
7〜8 高い(頻繁に発生)
9〜10 非常に高い(ほぼ確実に発生)

検出度(Detection)

スコア 検出の難しさ
1〜2 容易(ほぼ確実に検出できる)
3〜4 高い(高確率で検出できる)
5〜6 中程度(検出できることが多い)
7〜8 低い(検出が難しい)
9〜10 非常に低い(ほぼ検出できない)

RPNの判断基準

算出されたRPNの数値が大きいほど、リスクが高い。一般的な目安として以下のような基準が使われることが多い。ただし閾値は業界や企業ごとに異なるため、自社基準に合わせて設定することが重要だ。

RPN リスクレベル 対応
100以上 高リスク 改善必須
50〜99 中リスク 改善推奨
50未満 低リスク 経過観察

AIAG-VDA FMEAにおけるAP評価への移行

2019年にAIAG(米国自動車産業協会)とVDA(ドイツ自動車工業会)が共同で発行した「AIAG-VDA FMEAハンドブック」では、従来のRPN方式が廃止された。代わりに導入されたのが、AP(Action Priority:対応優先度)方式だ。

APは影響度・発生度・検出度の組み合わせをテーブル参照して、High / Medium / Low の3段階で優先度を判定する。数値の掛け算ではないため、評価のバラつきが生じにくく、意思決定のシンプル化につながるとされている。

AP評価 意味 対応
High 高優先度 改善策を必ず実施する
Medium 中優先度 改善策の実施を検討する
Low 低優先度 改善の余地があれば対応する

現在も多くの現場でRPN方式が使われているが、自動車業界では新ハンドブックへの移行が進んでいる。どちらの方式を使うかは、取引先や業界団体の要件を確認したうえで決定したい。


FMEAの進め方

FMEAを効果的に進めるための5ステップを紹介する。

ステップ1:対象の明確化

分析対象となる製品または工程を明確にする。

確認事項:

  • 分析対象(製品名、工程名)
  • 分析範囲(どこからどこまで)
  • 変化点(新規設計、設計変更、工程変更など)

変化点がある部分は特にリスクが高いため、重点的に分析する。

ステップ2:故障モードの洗い出し

対象で発生しうる故障モードを洗い出す。

故障モードの例:

  • 設計FMEA:破損、変形、腐食、摩耗、剥離、短絡など
  • 工程FMEA:欠品、誤組付け、締め忘れ、寸法不良など

洗い出しのポイント:

  • 過去の不具合データを参照する
  • 類似製品・類似工程の実績を確認する
  • チームで複数人がブレインストーミングを行う

ステップ3:影響・原因・現行管理の記入

各故障モードについて、以下を記入する。

項目 内容
故障の影響 故障が発生した場合、どのような影響があるか
故障の原因 なぜその故障が発生するか(潜在的な原因)
現行の管理方法 現在どのような管理で故障を防止・検出しているか

ステップ4:RPNの算出

影響度・発生度・検出度を評価し、RPNを算出する(AIAG-VDA方式の場合はAP評価を行う)。

評価のポイント:

  • 評価基準を統一し、一貫した基準で評価する
  • 複数人で評価し、バラつきを確認する
  • 過去データがあれば参考にする

ステップ5:改善対策の立案と実施

RPNが高い(またはAPがHighの)故障モードに対して、改善対策を立案する。

対象 改善方法
発生度を下げる 故障が起きにくくする 作業手順の改善、自動化、教育訓練
検出度を下げる 故障を見つけやすくする センサー導入、検査項目の追加、測定精度向上

注意点:影響度は、製品や工程の目的が変わらない限り下げることが難しい。発生度と検出度を下げることに注力するのが実際的だ。


FMEAフォーマット例

工程FMEAのフォーマット例を示す。

工程 故障モード 影響 S 原因 O 現行管理 D RPN 対策
ネジ締め 締め忘れ 部品脱落 8 作業者の確認漏れ 4 目視検査 6 192 トルクレンチでカウント管理
はんだ付け はんだ不足 導通不良 7 温度設定ミス 3 外観検査 5 105 温度センサーで自動管理

FMEA実施のポイント

チームで実施する

FMEAは一人で行うのではなく、チームで実施するのがよい。

チーム構成の例:

  • 設計担当者
  • 製造担当者
  • 品質担当者
  • 保全担当者

複数人で実施することで、故障モードの抽出に抜け漏れが少なくなる。

評価基準を統一する

評価対象が複数ある場合は、評価基準を統一することが重要だ。

統一すべき項目:

  • 影響度・発生度・検出度の評価基準
  • RPNの判断基準(またはAP評価の運用ルール)
  • 対策の優先順位

継続的に見直す

FMEAは一度作成して終わりではない。定期的に見直すことが重要だ。

見直しのタイミング:

  • 設計変更時
  • 工程変更時
  • 市場クレーム発生時
  • 定期レビュー(年1回など)

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AIAG-VDA方式への移行ポイント

2019年にAIAG(米国自動車産業協会)とVDA(ドイツ自動車工業会)が共同発行した「AIAG-VDA FMEAハンドブック」は、旧来のAIAG FMEA(第4版)やVDA FMEA方式から大きく変わった。自動車業界でサプライヤーに移行を求める動きが続いており、主な変更点と移行時の注意点を整理する。

新ハンドブックの主な変更点

1. 5ステップ→7ステップへの拡張

旧AIAG方式では5ステップで実施されていたFMEAが、新ハンドブックでは以下の7ステップに拡張された。

ステップ 内容 旧方式との主な変更
Step 1 計画とプロジェクト定義 新設(スコープと前提条件を明確化)
Step 2 構造分析 新設(システム構造の視覚化)
Step 3 機能分析 新設(機能・要求事項の明確化)
Step 4 故障分析 従来の「故障モードの洗い出し」に相当
Step 5 リスク分析 RPNからAP(Action Priority)評価へ移行
Step 6 最適化 対策立案・実施(内容は同様)
Step 7 結果の文書化 新設(承認・トレーサビリティの強化)

Step 1〜3は「予防的FMEAのための基礎固め」として新設されたステップだ。スコープを明確にし、システム構造を階層的に整理してから故障分析に入ることで、分析の網羅性と再現性が向上する。

2. RPNからAP(Action Priority)評価への転換

最大の変更点は、リスク評価方式の転換だ。旧方式では「S×O×D」の積算によりRPN(数値)を算出していたが、新方式ではS・O・Dの組み合わせをルックアップテーブルで参照し、High / Medium / Low の3段階で優先度(AP)を判定する。

この変更により、「重篤度が高いのに発生頻度が極めて低いためRPNが低くなる」という旧方式の欠点が解消された。APがHighの故障モードは、発生度や検出度によらず必ず対策が求められる。

3. フォーカス要素(FC)の導入

新ハンドブックでは、新設計・新工程・新環境など特定のリスク要因を「フォーカス要素(Focus Category:FC)」として明示し、分析の重点化を図る枠組みが設けられた。

移行時の主な準備事項

既存FMEAの棚卸しと優先順位付け

全製品・工程のFMEAを一度に新方式に移行することは現実的ではない。まず新規プロジェクト・設計変更時から新ハンドブックを適用し、既存FMEAは改訂タイミング(市場クレーム発生・設計変更・定期レビュー)に合わせて順次移行するアプローチが実務的だ。

評価基準テーブルの社内標準化

AIAG-VDA方式ではS・O・DのスコアリングとAPテーブルを社内標準として定め、評価者間のバラつきを最小化することが求められる。評価基準の統一なしに新方式を適用しても、APの判定がメンバーにより異なるという新たな問題が発生するため注意が必要だ。

取引先要件の確認

完成車メーカーによってAIAG-VDA方式への移行時期や要求の厳格さが異なる。移行前に取引先のサプライヤー要件書を確認し、求められる形式・テンプレートを把握しておくことが不可欠だ。

FMEAワークシートの具体的な記入方法についてはFMEAワークシートの書き方ガイドで詳しく解説している。


FMEA実施時のよくある失敗5選

FMEAは正しく実施すれば強力な品質予防ツールだが、現場での実施には典型的な落とし穴がある。よくある失敗パターンとその対処法を解説する。

失敗1:「書類作成」目的になってしまう

FMEA書を作成することが目的化し、実態を反映しない「優等生な書類」が出来上がるパターンだ。審査対応のためだけにFMEAを作成し、実際の設計レビューや工程改善に活用されていない場合が該当する。

対処法:FMEAを設計レビューの公式インプットとして位置付け、FMEA上のRPN(またはAP)High案件が解決されるまで設計承認が下りない運用ルールを設ける。

失敗2:担当者1人が「全部やる」

FMEAを品質担当者や設計担当者が単独で作成し、他部門がレビューしないパターンだ。単独作成では専門外の故障モードや現場での実態を見落としやすい。

対処法:設計・製造・品質・保全の4職種が最低限参加するクロスファンクショナルチームを設置し、各ステップでの合意形成を議事録に残す。

失敗3:評価スコアが「なんとなく」付けられる

S・O・Dの評価基準が社内で統一されておらず、担当者や部署によってスコアの基準がバラバラになっているパターンだ。同じ故障モードでもRPNが評価者によって2倍以上異なることも珍しくない。

対処法:S・O・Dの評価基準表を社内標準として制定し、評価者向けの訓練(過去事例を用いた評価練習)を実施する。評価後は複数人でクロスチェックを行う。

失敗4:一度作成したら「更新しない」

製品設計や工程内容が変更された際に、FMEAが更新されずに陳腐化するパターンだ。旧FMEAが実態と乖離したまま使い続けられ、新たなリスクが分析されないまま見落とされる。

対処法:4M変更(Man・Machine・Material・Methodの変更)が発生した際にFMEAの見直しを必須とするルールを変更管理手順書に明記する。また市場クレームや工程不良が発生した際も見直しのトリガーとする。

失敗5:対策後のRPNを再評価しない

対策を実施した後、改善後のS・O・DとRPNを算出せずに終わるパターンだ。対策の効果が数値で確認されないため、改善活動の成果が見えにくく、再発時に前回の対策との比較ができない。

対処法:FMEAシートに「改善後S」「改善後O」「改善後D」「改善後RPN(またはAP)」の列を設け、対策実施後に必ず再評価を記入するルールを運用基準に組み込む。対策前後のRPN比較が、継続的な改善の根拠として機能する。

慢性的な不良に対するFMEAと連携した分析手法についてはPM分析による慢性不良対策ガイドもあわせて参照されたい。


よくある質問(FAQ)

Q. FMEAとFTAはどちらを先に実施すべきですか?

一般的にはFMEAを先に実施することが推奨される。FMEAで製品・工程全体の故障モードを網羅的に洗い出し、その中で特に重大な故障モード(RPNが高い、またはAPがHighのもの)をFTAのトップ事象として設定するという流れが効率的だ。

Q. 中小製造業でもFMEAは必要ですか?

自動車・航空・医療機器などの業界以外でも、品質クレームが多い製品や、重大な事故につながる可能性がある工程では、FMEAの実施が品質リスク管理として有効だ。規模が小さい場合は、重要工程に絞ったシンプルなFMEAから始め、徐々に適用範囲を広げるアプローチが現実的だ。

Q. FMEAの実施頻度はどのくらいが適切ですか?

新製品開発・設計変更・工程変更のタイミングが基本的な実施タイミングだ。また、市場クレーム・工程不良の発生時、および年1回程度の定期レビューも推奨される。一度作成したFMEAは「生きた文書」として継続的に更新・管理することが重要だ。


まとめ

FMEAは、故障を事前に予測し対策を打つ手法だ。

FMEAの種類:

  • 設計FMEA(DFMEA):製品設計が対象
  • 工程FMEA(PFMEA):製造工程が対象

RPNの計算:

  • RPN = 影響度(S) × 発生度(O) × 検出度(D)
  • 各指標は1〜10の10段階で評価
  • RPN 100以上は改善必須(目安。業界・企業により異なる)
  • AIAG-VDA方式ではRPNに代わりAP(High/Medium/Low)評価を採用

FMEAの5ステップ:

  1. 対象の明確化
  2. 故障モードの洗い出し
  3. 影響・原因・現行管理の記入
  4. RPNの算出(またはAP評価)
  5. 改善対策の立案と実施

実施のポイント:

  • チームで実施する
  • 評価基準を統一する
  • 継続的に見直す

FMEAを活用して、設計段階から品質を作り込もう。


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國分 良太

著者

國分 良太

制御設計エンジニア → AI・IoT・DX推進|東京の製造業メーカー開発部門

製造業の現場で設備設計・改善プロジェクト・品質向上施策に従事。なぜなぜ分析(RCA)やリスクアセスメントの実務経験をもとに、現場DXを支援するアプリケーションの開発と情報発信に取り組んでいます。

※ 本サイトは所属企業とは関係のない個人活動です。記載の見解は筆者個人のものです。

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