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FMEA入門|RPNの計算方法と対策立案の手順

10品質管理
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「設計段階で不具合を予測したい」

製品の市場クレームや工程不良は、発生してからでは対応コストが大きくなる。事前に問題を予測し、対策を打つ手法が求められている。

この記事では、FMEA(故障モード影響解析)の目的と進め方を解説する。RPN(リスク優先度)の算出方法と、対策立案の手順を紹介する。


FMEAとは

FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)は、製品や工程で発生しうる故障モードを事前に予測し、対策を考える品質管理手法だ。

FMEAの起源

FMEAは、もともと米軍が信頼性確保のために開発した手法だ。1949年に米軍が発行したMIL-P-1629(手順書)がその起源とされる。

その後、1960年代にNASAがアポロ計画をはじめとする宇宙開発プログラムに採用し、航空宇宙分野で広く活用された。こうした実績が評価され、現在では自動車、医療機器、電子機器など幅広い業界で使われている。特に車載製品を扱う製造現場では、コアツールの一つとして活用が求められる。

FMEAの種類

FMEAには、分析対象によって2つの種類がある。

種類 分析対象 目的
設計FMEA(DFMEA) 製品設計 設計段階で製品の故障モードを予測
工程FMEA(PFMEA) 製造工程 製造段階で工程の故障モードを予測

RPNとは

RPN(Risk Priority Number:リスク優先度数)は、故障モードのリスクの大きさを数値化したものだ。

RPNの計算式

RPNは、3つの評価指標を掛け合わせて算出する。

RPN = 影響度(S) × 発生度(O) × 検出度(D)

評価指標 内容
影響度(Severity) 故障が発生した場合の影響の大きさ
発生度(Occurrence) 故障が発生する頻度
検出度(Detection) 故障を検出する難しさ

評価基準(10段階)

各指標は1〜10の10段階で評価する。

影響度(Severity)

スコア 影響の程度
1〜2 軽微(ユーザーが気付かないレベル)
3〜4 軽度(ユーザーが不満を感じる)
5〜6 中程度(機能低下を招く)
7〜8 重度(製品が使用不能になる)
9〜10 致命的(安全・法規制に関わる)

発生度(Occurrence)

スコア 発生頻度
1〜2 非常に稀(ほぼ発生しない)
3〜4 稀(時々発生)
5〜6 中程度(定期的に発生)
7〜8 高い(頻繁に発生)
9〜10 非常に高い(ほぼ確実に発生)

検出度(Detection)

スコア 検出の難しさ
1〜2 容易(ほぼ確実に検出できる)
3〜4 高い(高確率で検出できる)
5〜6 中程度(検出できることが多い)
7〜8 低い(検出が難しい)
9〜10 非常に低い(ほぼ検出できない)

RPNの判断基準

算出されたRPNの数値が大きいほど、リスクが高い。一般的な目安として以下のような基準が使われることが多い。ただし閾値は業界や企業ごとに異なるため、自社基準に合わせて設定することが重要だ。

RPN リスクレベル 対応
100以上 高リスク 改善必須
50〜99 中リスク 改善推奨
50未満 低リスク 経過観察

AIAG-VDA FMEAにおけるAP評価への移行

2019年にAIAG(米国自動車産業協会)とVDA(ドイツ自動車工業会)が共同で発行した「AIAG-VDA FMEAハンドブック」では、従来のRPN方式が廃止された。代わりに導入されたのが、AP(Action Priority:対応優先度)方式だ。

APは影響度・発生度・検出度の組み合わせをテーブル参照して、High / Medium / Low の3段階で優先度を判定する。数値の掛け算ではないため、評価のバラつきが生じにくく、意思決定のシンプル化につながるとされている。

AP評価 意味 対応
High 高優先度 改善策を必ず実施する
Medium 中優先度 改善策の実施を検討する
Low 低優先度 改善の余地があれば対応する

現在も多くの現場でRPN方式が使われているが、自動車業界では新ハンドブックへの移行が進んでいる。どちらの方式を使うかは、取引先や業界団体の要件を確認したうえで決定したい。


FMEAの進め方

FMEAを効果的に進めるための5ステップを紹介する。

ステップ1:対象の明確化

分析対象となる製品または工程を明確にする。

確認事項:

  • 分析対象(製品名、工程名)
  • 分析範囲(どこからどこまで)
  • 変化点(新規設計、設計変更、工程変更など)

変化点がある部分は特にリスクが高いため、重点的に分析する。

ステップ2:故障モードの洗い出し

対象で発生しうる故障モードを洗い出す。

故障モードの例:

  • 設計FMEA:破損、変形、腐食、摩耗、剥離、短絡など
  • 工程FMEA:欠品、誤組付け、締め忘れ、寸法不良など

洗い出しのポイント:

  • 過去の不具合データを参照する
  • 類似製品・類似工程の実績を確認する
  • チームで複数人がブレインストーミングを行う

ステップ3:影響・原因・現行管理の記入

各故障モードについて、以下を記入する。

項目 内容
故障の影響 故障が発生した場合、どのような影響があるか
故障の原因 なぜその故障が発生するか(潜在的な原因)
現行の管理方法 現在どのような管理で故障を防止・検出しているか

ステップ4:RPNの算出

影響度・発生度・検出度を評価し、RPNを算出する(AIAG-VDA方式の場合はAP評価を行う)。

評価のポイント:

  • 評価基準を統一し、一貫した基準で評価する
  • 複数人で評価し、バラつきを確認する
  • 過去データがあれば参考にする

ステップ5:改善対策の立案と実施

RPNが高い(またはAPがHighの)故障モードに対して、改善対策を立案する。

対象 改善方法
発生度を下げる 故障が起きにくくする 作業手順の改善、自動化、教育訓練
検出度を下げる 故障を見つけやすくする センサー導入、検査項目の追加、測定精度向上

注意点:影響度は、製品や工程の目的が変わらない限り下げることが難しい。発生度と検出度を下げることに注力するのが実際的だ。


FMEAフォーマット例

工程FMEAのフォーマット例を示す。

工程 故障モード 影響 S 原因 O 現行管理 D RPN 対策
ネジ締め 締め忘れ 部品脱落 8 作業者の確認漏れ 4 目視検査 6 192 トルクレンチでカウント管理
はんだ付け はんだ不足 導通不良 7 温度設定ミス 3 外観検査 5 105 温度センサーで自動管理

FMEA実施のポイント

チームで実施する

FMEAは一人で行うのではなく、チームで実施するのがよい。

チーム構成の例:

  • 設計担当者
  • 製造担当者
  • 品質担当者
  • 保全担当者

複数人で実施することで、故障モードの抽出に抜け漏れが少なくなる。

評価基準を統一する

評価対象が複数ある場合は、評価基準を統一することが重要だ。

統一すべき項目:

  • 影響度・発生度・検出度の評価基準
  • RPNの判断基準(またはAP評価の運用ルール)
  • 対策の優先順位

継続的に見直す

FMEAは一度作成して終わりではない。定期的に見直すことが重要だ。

見直しのタイミング:

  • 設計変更時
  • 工程変更時
  • 市場クレーム発生時
  • 定期レビュー(年1回など)

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まとめ

FMEAは、故障を事前に予測し対策を打つ手法だ。

FMEAの種類:

  • 設計FMEA(DFMEA):製品設計が対象
  • 工程FMEA(PFMEA):製造工程が対象

RPNの計算:

  • RPN = 影響度(S) × 発生度(O) × 検出度(D)
  • 各指標は1〜10の10段階で評価
  • RPN 100以上は改善必須(目安。業界・企業により異なる)
  • AIAG-VDA方式ではRPNに代わりAP(High/Medium/Low)評価を採用

FMEAの5ステップ:

  1. 対象の明確化
  2. 故障モードの洗い出し
  3. 影響・原因・現行管理の記入
  4. RPNの算出(またはAP評価)
  5. 改善対策の立案と実施

実施のポイント:

  • チームで実施する
  • 評価基準を統一する
  • 継続的に見直す

FMEAを活用して、設計段階から品質を作り込もう。


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國分 良太

著者

國分 良太

制御設計エンジニア → AI・IoT・DX推進|東京の製造業メーカー開発部門

製造業の現場で設備設計・改善プロジェクト・品質向上施策に従事。なぜなぜ分析(RCA)やリスクアセスメントの実務経験をもとに、現場DXを支援するアプリケーションの開発と情報発信に取り組んでいます。

※ 本サイトは所属企業とは関係のない個人活動です。記載の見解は筆者個人のものです。