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FMEAとは?やり方・RPNの計算方法・対策立案の手順【2026年入門ガイド】

約18分品質管理
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「設計段階で不具合を予測したい」

製品の市場クレームや工程不良は、発生してからでは対応コストが大きくなる。事前に問題を予測し、対策を打つ手法が求められている。

この記事では、FMEA(故障モード影響解析)の目的と進め方を解説する。RPN(リスク優先度)の算出方法と、対策立案の手順を紹介する。


FMEAとは

FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)は、製品や工程で発生しうる故障モードを事前に予測し、対策を考える品質管理手法だ。

FMEAの起源

FMEAは、もともと米軍が信頼性確保のために開発した手法だ。1949年に米軍が発行したMIL-P-1629(手順書)がその起源とされる。

その後、1960年代にNASAがアポロ計画をはじめとする宇宙開発プログラムに採用し、航空宇宙分野で広く活用された。こうした実績が評価され、現在では自動車、医療機器、電子機器など幅広い業界で使われている。特に車載製品を扱う製造現場では、コアツールの一つとして活用が求められる。

FMEAの種類

FMEAには、分析対象によって2つの種類がある。

種類 分析対象 目的
設計FMEA(DFMEA) 製品設計 設計段階で製品の故障モードを予測
工程FMEA(PFMEA) 製造工程 製造段階で工程の故障モードを予測

RPNとは

RPN(Risk Priority Number:リスク優先度数)は、故障モードのリスクの大きさを数値化したものだ。

RPNの計算式

RPNは、3つの評価指標を掛け合わせて算出する。

RPN = 影響度(S) × 発生度(O) × 検出度(D)

評価指標 内容
影響度(Severity) 故障が発生した場合の影響の大きさ
発生度(Occurrence) 故障が発生する頻度
検出度(Detection) 故障を検出する難しさ

評価基準(10段階)

各指標は1〜10の10段階で評価する。

影響度(Severity):

スコア 影響の程度
1〜2 軽微(ユーザーが気付かないレベル)
3〜4 軽度(ユーザーが不満を感じる)
5〜6 中程度(機能低下を招く)
7〜8 重度(製品が使用不能になる)
9〜10 致命的(安全・法規制に関わる)

発生度(Occurrence):

スコア 発生頻度
1〜2 非常に稀(ほぼ発生しない)
3〜4 稀(時々発生)
5〜6 中程度(定期的に発生)
7〜8 高い(頻繁に発生)
9〜10 非常に高い(ほぼ確実に発生)

検出度(Detection):

スコア 検出の難しさ
1〜2 容易(ほぼ確実に検出できる)
3〜4 高い(高確率で検出できる)
5〜6 中程度(検出できることが多い)
7〜8 低い(検出が難しい)
9〜10 非常に低い(ほぼ検出できない)

RPNの判断基準

算出されたRPNの数値が大きいほど、リスクが高い。一般的な目安として以下のような基準が使われることが多い。ただし閾値は業界や企業ごとに異なるため、自社基準に合わせて設定することが重要だ。

RPN リスクレベル 対応
100以上 高リスク 改善必須
50〜99 中リスク 改善推奨
50未満 低リスク 経過観察

AIAG-VDA FMEAにおけるAP評価への移行

2019年にAIAG(米国自動車産業協会)とVDA(ドイツ自動車工業会)が共同で発行した「AIAG-VDA FMEAハンドブック」では、従来のRPN方式が廃止された。代わりに導入されたのが、AP(Action Priority:対応優先度)方式だ。

APは影響度・発生度・検出度の組み合わせをテーブル参照して、High / Medium / Low の3段階で優先度を判定する。数値の掛け算ではないため、評価のバラつきが生じにくく、意思決定のシンプル化につながるとされている。

AP評価 意味 対応
High 高優先度 改善策を必ず実施する
Medium 中優先度 改善策の実施を検討する
Low 低優先度 改善の余地があれば対応する

現在も多くの現場でRPN方式が使われているが、自動車業界では新ハンドブックへの移行が進んでいる。どちらの方式を使うかは、取引先や業界団体の要件を確認したうえで決定したい。


FMEAの進め方

FMEAを効果的に進めるための5ステップを紹介する。

ステップ1:対象の明確化

分析対象となる製品または工程を明確にする。

確認事項:

  • 分析対象(製品名、工程名)
  • 分析範囲(どこからどこまで)
  • 変化点(新規設計、設計変更、工程変更など)

変化点がある部分は特にリスクが高いため、重点的に分析する。

ステップ2:故障モードの洗い出し

対象で発生しうる故障モードを洗い出す。

故障モードの例:

  • 設計FMEA:破損、変形、腐食、摩耗、剥離、短絡など
  • 工程FMEA:欠品、誤組付け、締め忘れ、寸法不良など

洗い出しのポイント:

  • 過去の不具合データを参照する
  • 類似製品・類似工程の実績を確認する
  • チームで複数人がブレインストーミングを行う

ステップ3:影響・原因・現行管理の記入

各故障モードについて、以下を記入する。

項目 内容
故障の影響 故障が発生した場合、どのような影響があるか
故障の原因 なぜその故障が発生するか(潜在的な原因)
現行の管理方法 現在どのような管理で故障を防止・検出しているか

ステップ4:RPNの算出

影響度・発生度・検出度を評価し、RPNを算出する(AIAG-VDA方式の場合はAP評価を行う)。

評価のポイント:

  • 評価基準を統一し、一貫した基準で評価する
  • 複数人で評価し、バラつきを確認する
  • 過去データがあれば参考にする

ステップ5:改善対策の立案と実施

RPNが高い(またはAPがHighの)故障モードに対して、改善対策を立案する。

対象 改善方法 例
発生度を下げる 故障が起きにくくする 作業手順の改善、自動化、教育訓練
検出度を下げる 故障を見つけやすくする センサー導入、検査項目の追加、測定精度向上

注意点:影響度は、製品や工程の目的が変わらない限り下げることが難しい。発生度と検出度を下げることに注力するのが実際的だ。


FMEAフォーマット例

工程FMEAのフォーマット例を示す。

工程 故障モード 影響 S 原因 O 現行管理 D RPN 対策
ネジ締め 締め忘れ 部品脱落 8 作業者の確認漏れ 4 目視検査 6 192 トルクレンチでカウント管理
はんだ付け はんだ不足 導通不良 7 温度設定ミス 3 外観検査 5 105 温度センサーで自動管理


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FMEA実施のポイント

チームで実施する

FMEAは一人で行うのではなく、チームで実施するのがよい。

チーム構成の例:

  • 設計担当者
  • 製造担当者
  • 品質担当者
  • 保全担当者

複数人で実施することで、故障モードの抽出に抜け漏れが少なくなる。

評価基準を統一する

評価対象が複数ある場合は、評価基準を統一することが重要だ。

統一すべき項目:

  • 影響度・発生度・検出度の評価基準
  • RPNの判断基準(またはAP評価の運用ルール)
  • 対策の優先順位

継続的に見直す

FMEAは一度作成して終わりではない。定期的に見直すことが重要だ。

見直しのタイミング:

  • 設計変更時
  • 工程変更時
  • 市場クレーム発生時
  • 定期レビュー(年1回など)

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AIAG-VDA方式への移行ポイント

2019年にAIAG(米国自動車産業協会)とVDA(ドイツ自動車工業会)が共同発行した「AIAG-VDA FMEAハンドブック」は、旧来のAIAG FMEA(第4版)やVDA FMEA方式から大きく変わった。自動車業界でサプライヤーに移行を求める動きが続いており、主な変更点と移行時の注意点を整理する。

新ハンドブックの主な変更点

1. 5ステップ→7ステップへの拡張

旧AIAG方式では5ステップで実施されていたFMEAが、新ハンドブックでは以下の7ステップに拡張された。

ステップ 内容 旧方式との主な変更
Step 1 計画とプロジェクト定義 新設(スコープと前提条件を明確化)
Step 2 構造分析 新設(システム構造の視覚化)
Step 3 機能分析 新設(機能・要求事項の明確化)
Step 4 故障分析 従来の「故障モードの洗い出し」に相当
Step 5 リスク分析 RPNからAP(Action Priority)評価へ移行
Step 6 最適化 対策立案・実施(内容は同様)
Step 7 結果の文書化 新設(承認・トレーサビリティの強化)

Step 1〜3は「予防的FMEAのための基礎固め」として新設されたステップだ。スコープを明確にし、システム構造を階層的に整理してから故障分析に入ることで、分析の網羅性と再現性が向上する。

2. RPNからAP(Action Priority)評価への転換

最大の変更点は、リスク評価方式の転換だ。旧方式では「S×O×D」の積算によりRPN(数値)を算出していたが、新方式ではS・O・Dの組み合わせをルックアップテーブルで参照し、High / Medium / Low の3段階で優先度(AP)を判定する。

この変更により、「重篤度が高いのに発生頻度が極めて低いためRPNが低くなる」という旧方式の欠点が解消された。APがHighの故障モードは、発生度や検出度によらず必ず対策が求められる。

3. フォーカス要素(FC)の導入

新ハンドブックでは、新設計・新工程・新環境など特定のリスク要因を「フォーカス要素(Focus Category:FC)」として明示し、分析の重点化を図る枠組みが設けられた。

移行時の主な準備事項

既存FMEAの棚卸しと優先順位付け

全製品・工程のFMEAを一度に新方式に移行することは現実的ではない。まず新規プロジェクト・設計変更時から新ハンドブックを適用し、既存FMEAは改訂タイミング(市場クレーム発生・設計変更・定期レビュー)に合わせて順次移行するアプローチが実務的だ。

評価基準テーブルの社内標準化

AIAG-VDA方式ではS・O・DのスコアリングとAPテーブルを社内標準として定め、評価者間のバラつきを最小化することが求められる。評価基準の統一なしに新方式を適用しても、APの判定がメンバーにより異なるという新たな問題が発生するため注意が必要だ。

取引先要件の確認

完成車メーカーによってAIAG-VDA方式への移行時期や要求の厳格さが異なる。移行前に取引先のサプライヤー要件書を確認し、求められる形式・テンプレートを把握しておくことが不可欠だ。

FMEAワークシートの具体的な記入方法についてはFMEAワークシートの書き方ガイドで詳しく解説している。


FMEA実施時のよくある失敗5選

FMEAは正しく実施すれば強力な品質予防ツールだが、現場での実施には典型的な落とし穴がある。よくある失敗パターンとその対処法を解説する。

失敗1:「書類作成」目的になってしまう

FMEA書を作成することが目的化し、実態を反映しない「優等生な書類」が出来上がるパターンだ。審査対応のためだけにFMEAを作成し、実際の設計レビューや工程改善に活用されていない場合が該当する。

対処法:FMEAを設計レビューの公式インプットとして位置付け、FMEA上のRPN(またはAP)High案件が解決されるまで設計承認が下りない運用ルールを設ける。

失敗2:担当者1人が「全部やる」

FMEAを品質担当者や設計担当者が単独で作成し、他部門がレビューしないパターンだ。単独作成では専門外の故障モードや現場での実態を見落としやすい。

対処法:設計・製造・品質・保全の4職種が最低限参加するクロスファンクショナルチームを設置し、各ステップでの合意形成を議事録に残す。

失敗3:評価スコアが「なんとなく」付けられる

S・O・Dの評価基準が社内で統一されておらず、担当者や部署によってスコアの基準がバラバラになっているパターンだ。同じ故障モードでもRPNが評価者によって2倍以上異なることも珍しくない。

対処法:S・O・Dの評価基準表を社内標準として制定し、評価者向けの訓練(過去事例を用いた評価練習)を実施する。評価後は複数人でクロスチェックを行う。

失敗4:一度作成したら「更新しない」

製品設計や工程内容が変更された際に、FMEAが更新されずに陳腐化するパターンだ。旧FMEAが実態と乖離したまま使い続けられ、新たなリスクが分析されないまま見落とされる。

対処法:4M変更(Man・Machine・Material・Methodの変更)が発生した際にFMEAの見直しを必須とするルールを変更管理手順書に明記する。また市場クレームや工程不良が発生した際も見直しのトリガーとする。

失敗5:対策後のRPNを再評価しない

対策を実施した後、改善後のS・O・DとRPNを算出せずに終わるパターンだ。対策の効果が数値で確認されないため、改善活動の成果が見えにくく、再発時に前回の対策との比較ができない。

対処法:FMEAシートに「改善後S」「改善後O」「改善後D」「改善後RPN(またはAP)」の列を設け、対策実施後に必ず再評価を記入するルールを運用基準に組み込む。対策前後のRPN比較が、継続的な改善の根拠として機能する。

慢性的な不良に対するFMEAと連携した分析手法についてはPM分析による慢性不良対策ガイドもあわせて参照されたい。


よくある質問(FAQ)

Q. FMEAとFTAはどちらを先に実施すべきですか?

一般的にはFMEAを先に実施することが推奨される。FMEAで製品・工程全体の故障モードを網羅的に洗い出し、その中で特に重大な故障モード(RPNが高い、またはAPがHighのもの)をFTAのトップ事象として設定するという流れが効率的だ。

Q. 中小製造業でもFMEAは必要ですか?

自動車・航空・医療機器などの業界以外でも、品質クレームが多い製品や、重大な事故につながる可能性がある工程では、FMEAの実施が品質リスク管理として有効だ。規模が小さい場合は、重要工程に絞ったシンプルなFMEAから始め、徐々に適用範囲を広げるアプローチが現実的だ。

Q. FMEAの実施頻度はどのくらいが適切ですか?

新製品開発・設計変更・工程変更のタイミングが基本的な実施タイミングだ。また、市場クレーム・工程不良の発生時、および年1回程度の定期レビューも推奨される。一度作成したFMEAは「生きた文書」として継続的に更新・管理することが重要だ。


まとめ

FMEAは、故障を事前に予測し対策を打つ手法だ。

FMEAの種類:

  • 設計FMEA(DFMEA):製品設計が対象
  • 工程FMEA(PFMEA):製造工程が対象

RPNの計算:

  • RPN = 影響度(S) × 発生度(O) × 検出度(D)
  • 各指標は1〜10の10段階で評価
  • RPN 100以上は改善必須(目安。業界・企業により異なる)
  • AIAG-VDA方式ではRPNに代わりAP(High/Medium/Low)評価を採用

FMEAの5ステップ:

  1. 対象の明確化
  2. 故障モードの洗い出し
  3. 影響・原因・現行管理の記入
  4. RPNの算出(またはAP評価)
  5. 改善対策の立案と実施

実施のポイント:

  • チームで実施する
  • 評価基準を統一する
  • 継続的に見直す

FMEAを活用して、設計段階から品質を作り込もう。


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著者

國分 良太

制御設計エンジニア → AI・IoT・DX推進|AIコンサルタント|東京の製造業メーカー開発部門

製造業の現場で設備設計・改善プロジェクト・品質向上施策に従事。なぜなぜ分析(RCA)やリスクアセスメントの実務経験をもとに、現場DXを支援するアプリケーションの開発と情報発信に取り組んでいます。AIコンサルタントとして、企業のAI・生成AI活用や現場DX導入の支援も行っています。

※ 本サイトは所属企業とは関係のない個人活動です。記載の見解は筆者個人のものです。

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