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【2026年版】根本原因分析(RCA)完全ガイド - 7つの手法と選び方

著者: WhyTrace編集部19品質管理
#根本原因分析#RCA#なぜなぜ分析#FTA#FMEA#特性要因図#8D#DMAIC#品質管理#問題解決

「問題が起きた。対策を打った。でも、また同じ問題が発生した」

このサイクルから抜け出せないのは、根本原因に到達していないからだ。

根本原因分析(RCA: Root Cause Analysis)は、問題の表面的な症状ではなく、本質的な原因を特定するための体系的なアプローチである。本記事では、代表的な7つのRCA手法を網羅的に解説し、現場で最適な手法を選ぶための判断基準を提供する。


根本原因分析(RCA)とは

RCAとは、問題や事故の「真の原因」を特定し、再発防止策を立案するための分析手法の総称である。

RCAの3つの原則

  1. 再発防止が目的:犯人探しではなく、仕組みの改善を目指す
  2. 事実ベース:推測ではなく、データと証拠に基づいて分析する
  3. システム思考:個人のミスではなく、システムやプロセスの問題として捉える

RCAが必要な場面

  • 製造現場での品質不良
  • ITシステムの障害・インシデント
  • 医療現場での医療事故
  • サービス業での重大クレーム
  • 安全事故・労働災害

7つのRCA手法一覧

手法 特徴 適した場面 難易度
なぜなぜ分析(5Why) シンプル、迅速 日常的な問題解決 ★☆☆
FTA(故障の木解析) 網羅的、定量的 複雑なシステム障害 ★★★
FMEA 予防的、体系的 設計・製造段階のリスク評価 ★★☆
特性要因図(魚骨図) 可視化、チーム向け ブレインストーミング ★☆☆
パレート分析 優先順位付け 多数の問題から重要課題を特定 ★☆☆
8D 包括的、標準化 顧客クレーム対応、品質問題 ★★☆
DMAIC 統計的、継続的 プロセス改善、品質向上 ★★★

1. なぜなぜ分析(5Why)

概要

なぜなぜ分析は、問題に対して「なぜ?」を繰り返し問いかけることで根本原因を特定する手法である。1930年代にトヨタ自動車の豊田佐吉氏が考案し、大野耐一氏がトヨタ生産方式(TPS)の中核手法として体系化した。

特徴

  • シンプル:特別な道具や知識が不要
  • 迅速:30分〜1時間で完了
  • 汎用性:あらゆる業種・問題に適用可能
  • 現場向け:専門家でなくても実施できる

実施手順

  1. 問題を明確に定義する
  2. 「なぜ?」を問いかける
  3. 答えに対してさらに「なぜ?」を繰り返す(通常5回程度)
  4. 根本原因に到達したか確認する
  5. 対策を立案・実行する

向いている場面

  • 製造現場での不良品発生
  • サービス業でのクレーム対応
  • IT運用でのインシデント対応
  • 日常業務での改善活動

注意点

  • 「人のせい」で止めない
  • 対策は「注意する」ではなく仕組みで
  • 複数原因は分岐して深掘りする

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2. FTA(故障の木解析)

概要

FTA(Fault Tree Analysis)は、1961年にベル研究所のH.A. Watsonがミニットマンミサイルの安全性評価のために開発した。その後、ボーイング社や原子力産業で広く採用された。

特徴

  • トップダウン:想定する障害から原因を分解
  • 論理的:AND/ORゲートで原因関係を表現
  • 定量的:故障確率を数値で算出可能
  • 網羅的:すべての障害経路を可視化

ANDゲートとORゲート

  • ORゲート:いずれかの原因で障害が発生(論理和)
  • ANDゲート:すべての原因が重なった場合のみ発生(論理積)

向いている場面

  • 航空宇宙産業の安全性分析
  • 原子力発電所のリスク評価
  • 自動車の機能安全(ISO 26262)
  • 医療機器の故障分析

関連規格

  • IEC 61025(フォルトツリー解析)
  • ISO 26262(自動車機能安全)

3. FMEA(故障モード影響解析)

概要

FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)は、1940年代に米国軍で開発され、その後NASAや自動車産業で標準的な品質管理手法となった。設計段階で潜在的な故障モードを特定し、その影響を事前に評価する。

特徴

  • 予防的:問題が発生する前にリスクを評価
  • 体系的:故障モードを網羅的にリストアップ
  • 優先順位付け:RPN(リスク優先度数)で対策の優先度を決定

RPN(Risk Priority Number)の計算

RPN = 深刻度(S) × 発生頻度(O) × 検出難易度(D)

各項目は1〜10で評価し、RPNが高い項目から優先的に対策を講じる。

項目 評価内容 スケール
深刻度(Severity) 故障が発生した場合の影響度 1(軽微)〜10(致命的)
発生頻度(Occurrence) 故障が発生する可能性 1(稀)〜10(頻繁)
検出難易度(Detection) 故障を検出できる可能性 1(確実に検出)〜10(検出不可)

FMEAの種類

  • DFMEA(Design FMEA):設計段階での故障分析
  • PFMEA(Process FMEA):製造工程での故障分析
  • SFMEA(System FMEA):システム全体の故障分析

向いている場面

  • 新製品の設計段階
  • 製造工程の品質管理
  • 自動車・航空宇宙産業
  • 医療機器開発

4. 特性要因図(フィッシュボーン/石川ダイアグラム)

概要

特性要因図は、1943年に石川馨博士(東京大学)が考案した。魚の骨に似た形状から「フィッシュボーンダイアグラム」、考案者の名前から「石川ダイアグラム」とも呼ばれる。

特徴

  • 可視化:原因と結果の関係を一目で把握
  • チーム向け:ブレインストーミングに最適
  • 分類整理:原因を体系的にカテゴリ分け
  • シンプル:専門知識なしで実施可能

4M / 5M / 6M フレームワーク

原因を分類する代表的なフレームワーク:

4M

  • Man(人):作業者のスキル、教育、意識
  • Machine(機械):設備、装置、工具
  • Material(材料):原材料、部品の品質
  • Method(方法):作業手順、標準作業

5M(4M + Measurement)

  • Measurement(測定):検査方法、測定精度

6M(5M + Mother Nature)

  • Mother Nature(環境):温度、湿度、騒音など

作成手順

  1. 問題(特性)を右側に記載
  2. 主要なカテゴリ(4M等)を大骨として描く
  3. 各カテゴリに原因を中骨・小骨として追加
  4. チームでブレインストーミングして原因を洗い出す
  5. 重要な原因を特定し、対策を検討

向いている場面

  • 品質管理サークル活動
  • チームでの問題解決
  • 原因の洗い出しと整理
  • 教育・研修での活用

5. パレート分析

概要

パレート分析は、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した「80:20の法則」に基づく分析手法である。問題の80%は原因の20%から生じることが多いという経験則を活用する。

特徴

  • 優先順位付け:重要な問題に集中できる
  • データ駆動:数値データに基づく客観的分析
  • 可視化:棒グラフと累積曲線で直感的に理解
  • 効率的:限られたリソースで最大の効果

作成手順

  1. 問題をカテゴリ別に分類
  2. 各カテゴリの発生件数または影響度を集計
  3. 降順にソートして棒グラフを作成
  4. 累積比率を折れ線グラフで重ねる
  5. 上位20%(累積80%以下)の問題に優先対応

向いている場面

  • 不良品の種類別分析
  • クレームの原因別分析
  • コスト削減の優先順位付け
  • 改善活動のテーマ選定

6. 8D(8つの規律)

概要

8D(Eight Disciplines)は、1987年にフォード・モーター社が開発した問題解決手法である。顧客クレーム対応や製品品質問題の解決に広く使用され、自動車業界では標準的な手法となっている。

8つのステップ

ステップ 内容 目的
D0 準備 問題の重要性評価、8Dが必要か判断
D1 チーム編成 適切なメンバーを選定
D2 問題の定義 5W2Hで問題を明確化
D3 暫定対策 顧客への影響を最小化
D4 根本原因の特定 なぜなぜ分析、FTAなどを活用
D5 恒久対策の選定 効果的な対策を選択・検証
D6 恒久対策の実施 対策を実行し効果を確認
D7 再発防止 水平展開、標準化
D8 チームの評価 成功を称え、学びを共有

特徴

  • 包括的:問題発見から水平展開まで網羅
  • 標準化:報告書フォーマットが統一
  • 顧客対応:暫定対策で顧客影響を最小化
  • チーム重視:クロスファンクショナルな協力

向いている場面

  • 顧客クレーム対応
  • サプライヤー品質問題
  • 製品リコール対応
  • 重大な品質問題

7. DMAIC(シックスシグマ)

概要

DMAICは、1980年代にモトローラが開発し、GE(ゼネラル・エレクトリック)が世界に広めたシックスシグマの中核手法である。データ駆動型のプロセス改善アプローチで、統計的手法を駆使して品質向上を図る。

5つのフェーズ

フェーズ 内容 主なツール
Define(定義) プロジェクト範囲、目標を明確化 プロジェクト憲章、VOC
Measure(測定) 現状を数値で把握 データ収集、プロセスマップ
Analyze(分析) 根本原因を特定 パレート図、魚骨図、回帰分析
Improve(改善) 解決策を実施 DOE(実験計画法)、ブレスト
Control(管理) 改善を維持 管理図、標準作業手順書

特徴

  • データ駆動:統計的手法に基づく意思決定
  • 継続的改善:PDCAとの連携
  • プロジェクト型:明確な目標とスケジュール
  • 認定制度:ベルト制度(イエロー、グリーン、ブラック)

向いている場面

  • 製造プロセスの品質改善
  • サービス業の業務効率化
  • コスト削減プロジェクト
  • 大規模な組織変革

手法選択の具体的な判断フロー

フローチャートの前に、判断の核心となる3つの問いを確認しておこう。この問いに答えることで、適切な手法を素早く絞り込める。

問い1:問題はすでに発生しているか、予防したいか?

  • 発生済み → なぜなぜ分析・FTA・8D・特性要因図
  • 予防(設計段階)→ FMEA・FTA

問い2:問題はシンプルか、複雑か?

  • シンプル(原因が1〜2つ程度と推測)→ なぜなぜ分析、特性要因図
  • 複雑(複数の原因が絡み合っている)→ FTA・DMAIC

問い3:顧客・外部への報告が必要か?

  • 顧客クレーム・サプライヤー問題 → 8D(報告書フォーマットが標準化されている)
  • 社内改善 → なぜなぜ分析・特性要因図・パレート分析

現場で迷ったときは、以下の判断基準を参考にしよう。

問題が発生した?
    │
    ├─ YES → 緊急対応が必要?
    │           │
    │           ├─ YES → 8D(暫定対策 + 恒久対策)
    │           │
    │           └─ NO → 問題の複雑さは?
    │                       │
    │                       ├─ シンプル → なぜなぜ分析
    │                       ├─ 中程度 → 特性要因図 + なぜなぜ
    │                       └─ 複雑 → FTA
    │
    └─ NO → 予防的分析?
                │
                ├─ YES → 設計段階?
                │           │
                │           ├─ YES → FMEA
                │           └─ NO → FTA
                │
                └─ NO → 継続的改善?
                            │
                            ├─ YES → DMAIC
                            └─ NO → パレート分析で優先度を決定

各手法の所要時間・難易度・必要人数の比較

手法を選ぶ際には、「効果」だけでなく**現場のリソース(時間・人・スキル)**も考慮する必要がある。以下の比較表を参考に、自社の状況に合った手法を選んでほしい。

手法 所要時間の目安 難易度 必要人数 専門知識
なぜなぜ分析 30分〜2時間 ★☆☆ 2〜5名 不要
特性要因図 1〜3時間 ★☆☆ 3〜8名 不要
パレート分析 2〜4時間(データ収集含む) ★☆☆ 1〜2名 統計基礎
8D 1〜2週間 ★★☆ 5〜10名(クロスファンクション) 中程度
FMEA 1〜4週間 ★★☆ 3〜8名(技術者中心) 設計・製造知識
FTA 3日〜2週間 ★★★ 2〜5名(技術者) システム工学
DMAIC 1〜6ヶ月 ★★★ 5〜15名(専任チーム) 統計解析

現場でよく使われる組み合わせパターン

中小製造業での定番:特性要因図(原因の洗い出し)→ なぜなぜ分析(根本原因の深掘り)→ パレート分析(対策の優先順位付け)

自動車サプライヤーでの対顧客対応:8D(顧客報告用)+ なぜなぜ分析(D4の根本原因特定で活用)

IT・システム開発:なぜなぜ分析(障害ポストモーテム)+ パレート分析(再発防止の優先順位付け)

新製品開発・設備導入時:FMEA(設計・製造リスクの予防的評価)+ FTA(重大故障モードの詳細分析)

関連記事:FMEAワークシートの書き方と記入例8Dレポートの書き方と記入例


判断基準まとめ

状況 推奨手法
日常的な問題解決 なぜなぜ分析
チームでの原因洗い出し 特性要因図
複雑なシステム障害 FTA
設計段階のリスク評価 FMEA
顧客クレーム対応 8D
多数の問題から優先課題を特定 パレート分析
プロセスの継続的改善 DMAIC

AIを活用した効率化

従来のRCA手法には、以下の課題があった。

  • 時間がかかる:特にFTAやFMEAは数日〜数週間
  • 専門知識が必要:統計やシステム工学の知識
  • 属人的:ファシリテーターのスキルに依存
  • 管理が複雑:分岐や関連性の整理が困難

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まとめ

根本原因分析(RCA)は、問題の再発を防ぐための必須スキルである。

7つの手法はそれぞれ特徴が異なり、状況に応じて使い分けることが重要だ。

  • シンプルな問題:なぜなぜ分析、特性要因図
  • 複雑なシステム:FTA、FMEA
  • 顧客対応:8D
  • 継続的改善:DMAIC
  • 優先順位付け:パレート分析

1つの手法に固執せず、問題の性質に合わせて柔軟に選択し、必要に応じて複数の手法を組み合わせることで、より効果的な根本原因分析が可能になる。


よくある質問

Q. RCA(根本原因分析)はどんな業界で使われていますか?

RCAは製造業・建設業・IT・医療・航空宇宙など幅広い業界で使われている。特に品質管理(ISO 9001)や安全管理(ISO 45001)の規格ではRCAの実施が求められており、業界を問わず再発防止の基本手法として定着している。

Q. なぜなぜ分析とFTAはどう使い分ければいいですか?

シンプルな問題にはなぜなぜ分析(5Why)、複雑なシステム障害にはFTA(故障の木解析)が適している。なぜなぜ分析は30分〜1時間で完了する手軽さが強みで、FTAはAND/ORゲートで複数原因の組み合わせを網羅的に分析できる。両方を組み合わせて使うケースも多い。

Q. RCAを行ったのに同じ問題が再発するのはなぜですか?

主な原因は3つ。(1)根本原因ではなく表面的な原因で分析を止めてしまった、(2)対策が「注意する」「気をつける」等の精神論で終わっている、(3)対策の実施状況を追跡・検証していない。RCAでは「仕組み」で再発を防ぐ対策を立て、PDCAで効果を検証することが重要である。

Q. RCA初心者が最初に学ぶべき手法はどれですか?

なぜなぜ分析(5Why)から始めるのがおすすめ。特別な道具や統計知識が不要で、「なぜ?」を繰り返すだけで実施できる。慣れてきたら特性要因図(魚骨図)でチーム分析に挑戦し、さらにFTAやFMEAへとステップアップするのが効果的な学習順序である。

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國分 良太

著者

國分 良太

制御設計エンジニア → AI・IoT・DX推進|東京の製造業メーカー開発部門

製造業の現場で設備設計・改善プロジェクト・品質向上施策に従事。なぜなぜ分析(RCA)やリスクアセスメントの実務経験をもとに、現場DXを支援するアプリケーションの開発と情報発信に取り組んでいます。

※ 本サイトは所属企業とは関係のない個人活動です。記載の見解は筆者個人のものです。

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