「夜間に入居者が転倒した」 「誤薬が発覚した」
介護施設を運営していると、こうした事故報告は避けて通れない。しかし、事故が起きてからの対応では遅い。重要なのは、事故の前兆となるヒヤリハットを収集・分析し、未然に防ぐことだ。
厚生労働省の調査によると、介護施設で発生する事故の65.6%が転倒・転落・滑落で最多、次いで**誤嚥・誤飲が13%**を占める。これらの事故の約9割が介護施設内で発生している。
この記事では、介護施設での事故防止に向けたヒヤリハット収集から根本原因分析までのDX化について解説する。
介護事故の現状と課題
介護事故の統計データ
厚生労働省老健局に報告された重大な介護事故の内訳を見ると、以下のような傾向がある。
| 事故類型 | 割合 |
|---|---|
| 転倒・転落・滑落 | 65.6% |
| 誤嚥・誤飲・むせこみ | 13.0% |
| その他(異食、誤薬など) | 21.4% |
また、高齢者の介護が必要となった原因として「骨折・転倒」は、認知症、脳血管疾患、高齢による衰弱に次いで**4番目(13.0%)**に多い。転倒防止は、介護予防の観点からも重要な課題だ。
介護現場でヒヤリハット報告が集まらない理由
介護施設でも、ヒヤリハット報告が十分に集まらないケースが多い。
原因1:業務の多忙さ 介護記録、身体介助、見守り、レクリエーション。介護職員の業務は多岐にわたる。紙の報告書を書く時間を確保するのが難しい。
原因2:報告=責任追及という認識 「報告したら自分の責任になる」という心理的障壁。特に事故につながりそうだったケースは、報告を躊躇してしまう。
原因3:報告しても改善につながらない 報告しても、具体的な対策が講じられない。「気をつけましょう」で終わる。これでは報告するモチベーションが上がらない。
解決策:報告収集×根本原因分析の2段階アプローチ
介護事故を防ぐためには、ヒヤリハットを効率的に収集し、根本原因を分析して対策につなげることが重要だ。
第1段階:報告収集の効率化
QRコード報告システムの導入
フロア、居室前、食堂、浴室などにQRコードを設置。ヒヤリハットに気づいたら、その場でスマホをかざして報告する。
報告の流れ:
- QRコードをスマホでスキャン
- 音声で状況を説明(「〇〇さんが廊下でふらついていた」)
- AIが自動でテキスト化、4M分類を実施
- 必要に応じて写真を添付
この方法のメリット:
- 所要時間30秒:介護業務の合間に報告可能
- 匿名化:AIが個人特定情報を自動で伏せ字化
- 音声入力:両手がふさがっていても報告できる
- リアルタイム反映:ダッシュボードで傾向を即座に把握
第2段階:根本原因分析の実施
収集したヒヤリハットのうち、重要なものを深掘り分析する。
分析対象の優先順位:
- 重傷につながりそうだったもの(骨折リスクなど)
- 同じ入居者で繰り返されているもの
- 同じパターンが複数の入居者で発生しているもの
介護施設での具体的な導入イメージ
QRコード設置場所
| 設置場所 | 報告しやすいインシデント |
|---|---|
| 各フロア入口 | フロア全体での気づき |
| 居室前 | 居室内でのヒヤリハット |
| 食堂 | 誤嚥、食事介助関連 |
| 浴室・脱衣所 | 入浴時の転倒、皮膚状態 |
| トイレ | 排泄介助時の転倒 |
| 休憩室 | 勤務終了後の振り返り報告 |
事例:夜間転倒を防いだケース
【収集されたヒヤリハット】
「Aさんが深夜2時頃、一人でトイレに向かおうとしていた」
「Bさんが夜間、ベッドサイドに座り込んでいた」
「Cさんが明け方、廊下でふらついて壁にもたれていた」
【ダッシュボードでの傾向把握】
→ 夜間(0時〜5時)のトイレ関連ヒヤリハットが集中
→ 特に認知症の入居者で多い
【5層分析(WhyTraceで実施)】
インシデント:Aさんが深夜、一人でトイレに向かい転倒しそうになった
なぜ?→ ナースコールを押さずに一人で行動した
なぜ?→ 「迷惑をかけたくない」と思った
なぜ?→ 以前「忙しいから待って」と言われた経験がある
なぜ?→ 夜間の人員配置が手薄で、対応が遅れることがある
なぜ?→ 夜勤体制が入居者数に対して不十分
【根本原因】
- Man(当事者):遠慮の心理
- Method(手順):ナースコール対応の遅れ
- management(管理):夜間の人員配置
【対策】
1. センサーマット導入(ベッドから降りたら自動検知)
2. 排泄パターンの把握と先回り対応
3. 夜間巡回頻度の見直し(2時間→1時間)
4. 入居者への声かけ「遠慮なく呼んでください」
【効果】
夜間転倒事故が前年比60%減少
📱 WhyTrace + 安全ポスト+で介護安全を効率化
**安全ポスト+**でヒヤリハットを効率的に収集し、WhyTraceで根本原因を分析する。この組み合わせで、介護事故防止の取り組みを効率化できる。
| ツール | 役割 | 介護現場での活用 |
|---|---|---|
| 安全ポスト+ | 報告収集 | 各フロアにQRコード設置、30秒報告 |
| WhyTrace | 根本原因分析 | 重要案件の5層分析、対策自動生成 |
導入効果(参考値):
- 月間報告件数:5件 → 50件以上(10倍)
- 報告所要時間:5〜10分 → 30秒(大幅に削減)
- 分析所要時間:2〜3時間 → 45分(大幅に削減)
最小コスト: 安全ポスト+ Free(0円)+ WhyTrace Professional(980円/月)= 月額980円から開始可能
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介護事故の4M分析
介護事故の原因を分析する際、4Mフレームワークが有効だ。
Man(人的要因)
入居者側:
- 認知機能の低下
- 身体機能の変化
- 服薬の影響(睡眠薬、降圧薬など)
- 心理状態(焦り、遠慮、不安)
職員側:
- 経験不足
- 疲労
- コミュニケーション不足
- 観察不足
Machine(設備・機器)
- ベッドの高さ
- 手すりの配置
- 車いすの状態
- ナースコールの位置
- 照明の明るさ
Material(材料・環境)
- 床の滑りやすさ
- 段差
- 障害物
- 温度・湿度
- 騒音
Method(方法・手順)
- 介助手順の不明確さ
- 申し送りの不備
- 記録の不足
- マニュアルの未整備
- 教育体制
転倒防止の具体的対策
対策レベル別アプローチ
| レベル | 対策内容 | 例 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 1. 環境改善 | 物理的にリスクを除去 | 段差解消、手すり設置 | ◎ |
| 2. 機器導入 | システムで検知 | センサーマット、見守りカメラ | ◎ |
| 3. ケアプラン | 個別対応 | 排泄パターン把握、福祉用具 | ○ |
| 4. 職員教育 | 知識・技術向上 | 研修、OJT | △ |
| 5. 注意喚起 | 意識づけ | 声かけ、ポスター | × |
具体的な対策例
環境改善:
- 居室からトイレまでの動線に手すり設置
- 夜間照明の明るさ調整
- 床材の見直し(滑りにくい素材)
機器導入:
- センサーマット(離床検知)
- 見守りカメラ(プライバシー配慮型)
- ナースコール位置の見直し
ケアプラン:
- 排泄パターンの把握と先回り対応
- 服薬タイミングの見直し(降圧薬、睡眠薬)
- 福祉用具の適切な選定
誤薬防止の具体的対策
誤薬が発生しやすいパターン
- 人の取り違え:類似した名前、確認不足
- 薬の取り違え:類似した外観、配薬ミス
- 時間の間違い:食前と食後、朝と夕
- 量の間違い:1錠と2錠、半錠と1錠
- 与薬漏れ:忘れ、引き継ぎミス
対策例
環境改善:
- 配薬カートの整理
- 薬袋の色分け(朝・昼・夕・眠前)
- 類似名称の入居者の配薬場所を離す
システム導入:
- バーコード照合
- 配薬チェックシート
- 電子薬歴との連携
手順見直し:
- ダブルチェック体制
- 声出し確認
- 配薬時の指差し確認
リスクマネジメント委員会での活用
月次報告の効率化
安全ポスト+のダッシュボードを使えば、月次報告資料の作成時間を大幅に短縮できる。
従来の流れ: 紙の報告書を集計 → Excelで集計 → グラフ作成 → 報告書作成 所要時間:3時間以上
DX化後の流れ: ダッシュボードで傾向を確認 → そのまま報告資料として使用 所要時間:30分
委員会での議論の質向上
収集されたヒヤリハットの傾向を把握した上で、重要案件をWhyTraceで深掘り分析。
議論の流れ:
- 今月のヒヤリハット傾向を共有(ダッシュボード)
- 重要案件の分析結果を報告(WhyTrace)
- 対策案を検討・決定
- 前月の対策の効果を確認
これにより、「何となく気をつけましょう」ではなく、データに基づいた具体的な対策を議論できる。
行政監査・実地指導への対応
2024年11月、厚生労働省は介護施設の事故報告様式を改訂した。チェックボックス形式への変更など、データ化が容易になるよう工夫されている。
安全ポスト+でヒヤリハットを収集・管理しておくことで、行政監査や実地指導の際にも、体系的な安全管理体制を示すことができる。
まとめ:報告収集×分析のDX化で介護事故を防ぐ
介護施設での事故防止には、ヒヤリハットを効率的に収集し、根本原因を分析して対策につなげることが重要だ。
報告収集の効率化:
- QRコード報告で30秒完結
- AI匿名化で心理的障壁を除去
- 音声入力で両手がふさがっていても報告可能
- ダッシュボードで傾向を可視化
根本原因分析の効率化:
- 4M分析で要因を体系的に整理
- 5層分析で根本原因を特定
- 「注意する」ではなく「仕組みで解決」
- AIによる分析支援で時間削減
介護職員の本来の役割は、入居者の生活を支えること。報告と分析のDX化により、その役割に集中できる環境を整えてほしい。
現場改善に役立つ関連アプリ
GenbaCompassでは、WhyTrace以外にも現場のDXを支援するアプリを提供している。
| アプリ名 | 概要 | こんな課題に |
|---|---|---|
| WhyTrace | AIなぜなぜ分析・RCA分析ツール | 介護事故の根本原因を特定したい |
| 安全ポスト+ | QRコードで簡単報告、AI自動分析 | 報告収集・匿名化・傾向分析を効率化 |
| AnzenAI | 安全書類作成を効率化 | 記録作成の時間を削減したい |
| PlantEar | 設備異音検知AIで予兆保全 | 設備の予防保全をしたい |
詳しくは GenbaCompass をチェック。
参考文献
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」(令和7年11月)
- 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1332」(令和6年11月29日)
- 公益財団法人介護労働安定センター「介護サービスの利用に係る事故の防止に関する調査研究事業」報告書
- 消費者庁「高齢者の転倒事故に関する注意喚起」
よくある質問(FAQ)
Q. 介護施設でもQRコード報告は使えますか?
はい。スマートフォンがあれば利用可能です。アプリのインストールも不要で、QRコードをスキャンするだけで報告画面が開きます。音声入力にも対応しているので、両手がふさがっている場面でも報告できます。
Q. 入居者の個人情報は守られますか?
はい。安全ポスト+では、AIが報告内容から個人を特定できる情報を自動的に伏せ字化します。「田中さん」は「入居者A」のように匿名化されます。
Q. 夜勤帯でも報告できますか?
はい。24時間いつでも報告可能です。特に夜勤帯は人員が少なく、記録を書く時間が取りにくいため、30秒で完了するQRコード報告が有効です。
Q. 小規模な施設でも導入メリットはありますか?
はい。むしろ小規模施設こそ、限られた人員で安全管理を効率化する必要があります。安全ポスト+ Freeプランは0円から始められます。
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導入ステップ:
- 安全ポスト+でQRコードを発行(無料から開始可能)
- 各フロアにQRコードを設置
- 報告収集を開始、傾向を把握
- WhyTraceで重要案件を深掘り分析
- リスクマネジメント委員会で共有
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