「類似名称の薬を取り違えそうになった」 「規格違いに気づかず調剤しかけた」
こうしたヒヤリハットを経験したことのある薬剤師は少なくないだろう。
日本医療機能評価機構の調査によると、医療機関で報告されるヒヤリハット事例の34.4%が薬剤関連で最多となっている。調剤過誤は患者の健康に直接影響を与えるため、未然防止の重要性は極めて高い。
この記事では、調剤過誤を防ぐためのヒヤリハット収集と根本原因分析の方法を解説する。
調剤過誤の現状と分類
調剤ミスの3つの分類
日本薬剤師会では、調剤ミスを以下の3つに分類している。
| 分類 | 定義 | 患者への影響 |
|---|---|---|
| 調剤事故 | 調剤行為に関わる事故で、患者に健康被害が発生したもの | あり |
| 調剤過誤 | 調剤事故のうち、薬剤師の過失によって発生したもの | あり |
| インシデント事例 | 患者に健康被害は出なかったが、「ヒヤリ」「ハッ」としたミス | なし |
重要なのは、インシデント事例(ヒヤリハット)を積極的に収集・分析することで、調剤事故を未然に防ぐという考え方だ。
調剤過誤の主な発生パターン
調剤過誤が発生しやすいパターンを把握しておくことで、予防策を講じやすくなる。
1. 類似名称による取り違え
- アムロジピン vs アムロジン
- プレドニン vs プレドニゾロン
- サインバルタ vs シンバルタ
2. 規格・含量の間違い
- 5mg vs 10mg
- 0.5錠 vs 1錠
- mg vs μg
3. 剤形の間違い
- 錠剤 vs カプセル
- 普通錠 vs OD錠
- 粉砕可 vs 粉砕不可
4. 患者の取り違え
- 同姓同名
- 類似した氏名
- 順番の入れ替わり
5. 数量の間違い
- 日数の誤り
- 1回量と1日量の混同
- 端数の計算ミス
なぜヒヤリハット報告が集まらないのか
調剤薬局・病院薬剤部でも、ヒヤリハット報告が十分に集まらないケースが多い。その原因を分析する。
原因1:業務の多忙さ
調剤、監査、服薬指導、在庫管理、保険請求。薬剤師の業務は多岐にわたる。報告書を書く時間を確保するのが難しい。
特に繁忙時間帯は、「とりあえず業務を回す」ことが優先され、ヒヤリハットの記録は後回しになりがちだ。
原因2:「報告=失敗の証拠」という認識
「ミスを報告すると評価に影響する」という心理的障壁がある。特に調剤薬局では、処方箋枚数や売上が評価指標になることもあり、ミスの報告に慎重になるケースがある。
原因3:報告しても改善につながらない
報告したヒヤリハットが分析されず、対策も立てられない。このような状況では、「報告しても無駄」という空気が生まれる。
解決策:報告収集×根本原因分析の2段階アプローチ
調剤過誤を防ぐためには、ヒヤリハットを効率的に収集し、根本原因を分析して対策につなげることが重要だ。
第1段階:報告収集の効率化
QRコード報告システムの導入
調剤室、監査台、払出窓口などにQRコードを設置。ヒヤリハットに気づいたら、その場でスマホをかざして報告する。
報告の流れ:
- QRコードをスマホでスキャン
- 音声で状況を説明(「アムロジピンとアムロジンを取り違えそうになった」)
- AIが自動でテキスト化、4M分類を実施
- 必要に応じて写真を添付
この方法のメリット:
- 所要時間30秒:業務の合間に報告可能
- 匿名化:AIが個人特定情報を自動で伏せ字化
- 4M自動分類:Man/Machine/Material/Methodに自動分類
- リアルタイム反映:ダッシュボードで傾向を即座に把握
第2段階:根本原因分析の実施
収集したヒヤリハットのうち、重要なものを深掘り分析する。
分析対象の優先順位:
- 患者に影響が出そうだったもの(高リスク)
- 同じパターンが繰り返されているもの
- ハイリスク薬(抗がん剤、インスリン、抗凝固薬など)に関するもの
分析手法:4M×5層分析
【インシデント】アムロジピン5mgをアムロジピン10mgで調剤しそうになった
なぜ?→ 規格の確認が不十分だった
なぜ?→ 類似した外観の薬剤が隣り合わせに配置されていた
なぜ?→ 棚の配置が規格別ではなく薬品名順だった
なぜ?→ 配置ルールが明文化されていなかった
なぜ?→ 薬局開設時のルールがそのまま踏襲されていた
【根本原因】
Machine(設備):規格違いの薬剤配置が取り違えを誘発する設計
Method(手順):棚配置のルールが整備されていなかった
【対策】
1. 同一薬品の異なる規格を離して配置
2. 規格違いを視覚的に区別するラベル導入
3. 棚配置ルールのマニュアル化
このように、**「注意する」ではなく「仕組みで解決する」**対策を立てることが重要だ。
調剤室での具体的な導入イメージ
QRコード設置場所
| 設置場所 | 報告しやすいインシデント |
|---|---|
| 調剤台 | 取り揃えミス、規格間違い |
| 監査台 | 監査漏れ、確認ミス |
| 払出窓口 | 患者取り違え、説明不足 |
| 薬品棚 | 補充ミス、期限切れ発見 |
| 休憩室 | 勤務終了後の振り返り報告 |
日常の運用フロー
【調剤中】
薬剤師がヒヤリハットを経験
↓
その場でQRスキャン、音声報告(30秒)
↓
AIが匿名化・4M分類・ダッシュボード反映
【週次】
薬剤部長がダッシュボードを確認
↓
傾向を把握(「規格間違いが多い」「特定の薬品に集中」など)
↓
重要案件を抽出し、5層分析を実施
↓
対策を立案
【月次】
薬剤部会議で報告
↓
対策を全員で共有
↓
効果をモニタリング
📱 WhyTrace + 安全ポスト+で調剤安全を効率化
**安全ポスト+**でヒヤリハットを効率的に収集し、WhyTraceで根本原因を分析する。この組み合わせで、調剤過誤防止の取り組みを効率化できる。
| ツール | 役割 | 調剤現場での活用 |
|---|---|---|
| 安全ポスト+ | 報告収集 | 調剤室各所にQRコード設置、30秒報告 |
| WhyTrace | 根本原因分析 | 重要案件の5層分析、対策自動生成 |
導入効果(参考値):
- 月間報告件数:5件 → 30件以上(6倍)
- 報告所要時間:5〜10分 → 30秒(大幅に削減)
- 分析所要時間:2〜3時間 → 45分(大幅に削減)
最小コスト: 安全ポスト+ Free(0円)+ WhyTrace Professional(980円/月)= 月額980円から開始可能
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調剤過誤防止の4つの対策レベル
分析結果をもとに対策を立てる際、効果の高い順に検討することが重要だ。
| レベル | 対策内容 | 例 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 1. 排除・代替 | エラーの原因をなくす | ハイリスク薬の棚を完全分離 | ◎ |
| 2. 工学的対策 | システムで防ぐ | バーコード照合、アラート | ◎ |
| 3. 管理的対策 | ルールで防ぐ | ダブルチェック体制 | ○ |
| 4. 教育・訓練 | 知識で防ぐ | 研修、勉強会 | △ |
| 5. 注意喚起 | 意識で防ぐ | ポスター、口頭注意 | × |
「注意する」「気をつける」は対策として最も効果が低いことを認識しておく必要がある。
調剤薬局と病院薬剤部での違い
調剤薬局での特徴
- 処方箋枚数に応じた人員配置
- 患者対応と調剤の同時進行
- 繁忙時間帯の集中(昼前後、夕方)
- 薬歴管理との連携
対策のポイント: 繁忙時間帯こそヒヤリハットが発生しやすい。報告のハードルを極限まで下げ、「忙しくても30秒で報告できる」環境を整える。
病院薬剤部での特徴
- 病棟薬剤業務との両立
- 注射薬調剤の比重
- 医師・看護師との連携
- 24時間体制(当直)
対策のポイント: 部門横断的なインシデント報告と分析が重要。看護部門と薬剤部門で共通のプラットフォームを使用することで、連携ミスの分析も可能になる。
ヒヤリハット報告を定着させるポイント
ポイント1:「報告=貢献」という文化を醸成
ヒヤリハットを報告することは、将来の事故を防ぐ貢献であることを組織全体で共有する。
具体的な施策:
- 報告件数の多い薬剤師を表彰
- 報告から改善につながった事例を共有
- 「この報告のおかげで事故を防げた」という成功体験を広める
ポイント2:フィードバックを必ず行う
報告された内容がどう分析され、どう改善につながったかを報告者に伝える。フィードバックがないと、「報告しても無駄」という空気が生まれる。
ポイント3:管理者が率先して報告する
薬剤部長や管理者自身がヒヤリハットを報告する姿勢を見せることで、「報告しても良いんだ」という安心感を与える。
まとめ:報告収集×分析で調剤過誤をゼロに近づける
調剤過誤を防ぐためには、ヒヤリハットを効率的に収集し、根本原因を分析して対策につなげることが重要だ。
報告収集の効率化:
- QRコード報告で30秒完結
- AI匿名化で心理的障壁を除去
- 4M自動分類でデータ化
根本原因分析の効率化:
- 5層分析で根本原因を特定
- 「注意する」ではなく「仕組みで解決」
- AIによる分析支援で時間削減
薬剤師の本来の役割は、患者の安全を守ること。報告と分析の効率化により、その役割に集中できる環境を整えてほしい。
現場改善に役立つ関連アプリ
GenbaCompassでは、WhyTrace以外にも現場のDXを支援するアプリを提供している。
| アプリ名 | 概要 | こんな課題に |
|---|---|---|
| WhyTrace | AIなぜなぜ分析・RCA分析ツール | 調剤過誤の根本原因を特定したい |
| 安全ポスト+ | QRコードで簡単報告、AI自動分析 | 報告収集・匿名化・傾向分析を効率化 |
| AnzenAI | 安全書類作成を効率化 | 記録作成の時間を削減したい |
| PlantEar | 設備異音検知AIで予兆保全 | 調剤機器の予防保全をしたい |
詳しくは GenbaCompass をチェック。
参考文献
- 日本薬剤師会「調剤事故報告制度について」
- 日本医療機能評価機構「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」
- 日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業 2024年報告」
よくある質問(FAQ)
Q. 調剤薬局でもQRコード報告は使えますか?
はい。スマートフォンがあれば利用可能です。アプリのインストールも不要で、QRコードをスキャンするだけで報告画面が開きます。
Q. 報告は本当に匿名ですか?
はい。安全ポスト+では、AIが報告内容から個人を特定できる情報を自動的に伏せ字化します。報告者情報はシステムにも保存されません。
Q. 既存の薬歴システムと連携できますか?
現時点では独立したシステムとして動作します。既存システムとの干渉はありませんが、データ連携については個別にご相談ください。
Q. 小規模な薬局でも導入メリットはありますか?
はい。むしろ小規模薬局こそ、限られた人員で安全管理を効率化する必要があります。安全ポスト+ Freeプランは0円から始められます。
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導入ステップ:
- 安全ポスト+でQRコードを発行(無料から開始可能)
- 調剤室にQRコードを設置
- 報告収集を開始、傾向を把握
- WhyTraceで重要案件を深掘り分析
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