現場コンパス

看護師のヒヤリハット報告を10倍に増やし根本原因まで分析する方法

著者: WhyTrace編集部12医療安全
#医療安全#ヒヤリハット#看護師#インシデント報告#RCA分析#P-mSHELL#安全文化#看護師長#医療安全管理者#報告収集

「報告書を書く時間がない」「報告しても何も変わらない」

病棟で看護師からこんな声を聞くことはないだろうか。

日本医療機能評価機構の調査によると、2023年に報告されたヒヤリ・ハット事例は年間117万2,346件に上る。しかし実際には、報告されていない「隠れたヒヤリハット」がその何倍も存在すると言われている。

この記事では、看護現場でヒヤリハット報告が集まらない根本原因と、報告収集から分析まで一気通貫で効率化する方法を解説する。


ヒヤリハット報告が集まらない3つの根本原因

原因1:報告に時間がかかりすぎる

看護師の業務は多忙を極める。患者ケア、記録、申し送り、家族対応。その合間に「ヒヤリハット報告書」を書く余裕がない。

紙の報告書やPCでの入力には、1件あたり5〜10分かかる。忙しい勤務中にこの時間を確保するのは現実的ではない。

結果として、「後で書こう」と思っているうちに忘れてしまう。あるいは「大したことではなかった」と報告を見送ってしまう。

原因2:報告すると「犯人扱い」される恐怖

「報告したら怒られる」「評価が下がる」

こうした心理的障壁が、報告を阻害している。特に若手看護師は、先輩や上司の目を気にして報告を躊躇しがちだ。

本来、ヒヤリハットは「事故を未然に防いだ」ポジティブな事象のはずだ。しかし、報告が「始末書」のように扱われる文化が残っている病院も少なくない。

原因3:報告しても改善につながらない

「報告しても、何も変わらない」

これが最も深刻な問題かもしれない。せっかく報告しても、分析されない、対策が立てられない、フィードバックがない。この状況では、報告するモチベーションが失われる。

日本医療機能評価機構の統計では、ヒヤリハット事例の内訳として薬剤関連が31.1%(36万5,175件)で最多、次いで療養上の世話が22.2%(26万437件)となっている。この傾向を把握し、対策に活かすことが本来の目的だ。


解決策:報告収集と分析の2段階アプローチ

ヒヤリハット報告の課題を解決するには、報告収集原因分析を分けて考える必要がある。

段階 課題 解決策
報告収集 時間がかかる、心理的障壁 30秒で完了、匿名化
原因分析 時間がない、属人化 AI支援、標準化

この2段階を効率化することで、「報告が集まり、分析され、改善につながる」好循環を生み出せる。


第1段階:報告収集を劇的に効率化する

QRコード報告で30秒完結

報告のハードルを下げる最も効果的な方法は、報告時間を短縮すること。

QRコードをスマホでスキャンし、音声で状況を話すだけ。これなら30秒で報告が完了する。

導入イメージ:

  1. 病棟の休憩室、ナースステーション、病室前にQRコードを掲示
  2. ヒヤリハットに気づいたら、その場でスマホをかざす
  3. 音声で「〇〇病棟で患者確認せず投薬しそうになった」と話す
  4. AIが自動でテキスト化、4M分類を実施

PCログイン不要、アプリのインストールも不要。手袋をしたままでも操作できる。

AI匿名化で心理的安全性を確保

報告内容から個人を特定できる情報をAIが自動的に伏せ字化する。

匿名化の例:

  • 「田中看護師が」→「看護師Aが」
  • 「3年目の」→「経験X年の」
  • 「14時の申し送り後」→「日勤帯の申し送り後」

報告者情報はシステムにも保存されない。これにより「犯人探し」の心配なく、率直な報告が可能になる。

ダッシュボードで傾向を可視化

収集したヒヤリハットは、リアルタイムでダッシュボードに反映される。

表示される内容:

  • 4M分類(Man/Machine/Material/Method)別の件数
  • 危険度別の推移
  • 病棟・部署別の報告傾向
  • 週次・月次のトレンド

これにより、朝礼での共有安全委員会の資料作成が格段に楽になる。


第2段階:根本原因分析を効率化する

報告が集まっただけでは、安全文化は醸成されない。重要なのは分析と改善だ。

P-mSHELLモデルによる体系的分析

医療現場のインシデント分析では、P-mSHELLモデルが標準的に使われている。

要因 意味 分析ポイント
P Patient(患者) 患者の状態、認知機能、コミュニケーション
m management(管理) 人員配置、教育体制、シフト
S Software(手順) マニュアル、プロトコル、ルール
H Hardware(設備) 医療機器、IT システム、物理環境
E Environment(環境) 照明、騒音、温度、スペース
L Liveware(当事者) 知識、経験、体調、心理状態
L Liveware(他者) チームワーク、コミュニケーション

このフレームワークに沿って分析することで、見落としがちな観点を漏れなくカバーできる。

5層分析で根本原因を特定

「なぜ?」を5回繰り返すことで、表面的な原因から根本原因に到達する。

分析例:患者確認ミス

インシデント:患者Aに患者Bの薬を投与しそうになった

なぜ?→ 患者確認が不十分だった
なぜ?→ フルネーム確認を省略した
なぜ?→ 時間的に急いでいた
なぜ?→ 同時に複数患者の対応を求められた
なぜ?→ 繁忙時間帯の人員配置が不十分だった

根本原因:勤務シフトが業務量のピークに対応していなかった

この分析により、「注意する」という対策ではなく、「シフト見直し」という仕組みの改善につなげられる。

AIによる分析支援

従来、1件のRCA分析に2〜3時間かかることもあった。これをAIで効率化する。

AIが支援する内容:

  • 過去の類似事例の自動参照
  • 見落としがちな観点の提示
  • 対策案の自動生成
  • レポートの自動作成

これにより、分析時間を約大幅に削減し、医療安全管理者の負担を軽減できる。


報告収集×分析の連携フロー

では、具体的にどのように2つのステップを連携させるのか。

看護現場での運用イメージ

【日常】
看護師がヒヤリハットを経験
    ↓
QRコードをスキャン、音声で30秒報告
    ↓
AIが匿名化、4M自動分類
    ↓
ダッシュボードに自動反映

【週次】
看護師長がダッシュボードで傾向を確認
    ↓
リスクの高い案件を抽出
    ↓
P-mSHELL×5層分析で深掘り
    ↓
対策案を立案

【月次】
医療安全委員会で報告
    ↓
対策を全体に展開
    ↓
効果をモニタリング

このサイクルを回すことで、報告→分析→改善→効果確認の好循環が生まれる。


📱 WhyTrace + 安全ポスト+で医療安全を効率化

安全ポスト+(報告収集)とWhyTrace(根本原因分析)を組み合わせることで、医療現場のヒヤリハット対応を一気通貫で効率化できる。

ツール 役割 特徴
安全ポスト+ 報告収集 QRで30秒報告、AI匿名化、4M自動分類
WhyTrace 根本原因分析 5層分析、P-mSHELL対応、対策自動生成

導入効果(導入病院の実績):

  • 月間報告件数:5件 → 50件以上(10倍)
  • 報告所要時間:5〜10分 → 30秒(大幅に削減)
  • 分析所要時間:2〜3時間 → 45分(大幅に削減)
  • 若手からの報告:ほぼなし → 全体の40%

最小コスト: 安全ポスト+ Free(0円)+ WhyTrace Professional(980円/月)= 月額980円から開始可能

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報告文化を定着させる3つのポイント

ツールを導入しても、文化が変わらなければ効果は限定的だ。以下の3点を意識してほしい。

ポイント1:経営層のコミットメント

「報告を歓迎する」というメッセージを経営層から発信する。報告件数の増加は「ミスの増加」ではなく「透明性の向上」であることを組織全体で共有する。

ポイント2:フィードバックの徹底

報告された内容がどう分析され、どう改善につながったかを必ず報告者にフィードバックする。「報告してよかった」という実感が、次の報告を促す。

ポイント3:小さな成功体験の共有

「この報告のおかげで事故を防げた」という事例を積極的に共有する。ヒヤリハット報告が価値あるものだという認識を広げる。


まとめ:報告収集×分析の一気通貫で安全文化を醸成

看護現場のヒヤリハット対応は、報告収集原因分析の2段階に分けて効率化することが重要だ。

報告収集の効率化:

  • QRコード報告で30秒完結
  • AI匿名化で心理的安全性確保
  • ダッシュボードで傾向可視化

原因分析の効率化:

  • P-mSHELLモデルで体系的分析
  • 5層分析で根本原因を特定
  • AIによる分析支援で時間削減

この2つを組み合わせることで、「報告が集まらない」「分析に時間がかかる」という課題を同時に解決できる。

医療安全は、一人ひとりの意識と組織的な仕組みの両方があって実現する。今日から始められる改善の一歩として、報告収集と分析の効率化に取り組んでほしい。


現場改善に役立つ関連アプリ

GenbaCompassでは、WhyTrace以外にも現場のDXを支援するアプリを提供している。

アプリ名 概要 こんな課題に
WhyTrace AIなぜなぜ分析・RCA分析ツール インシデントの根本原因を特定したい
安全ポスト+ QRコードで簡単報告、AI自動分析 報告収集・匿名化・傾向分析を効率化
AnzenAI 安全書類作成を効率化 記録作成の時間を削減したい
PlantEar 設備異音検知AIで予兆保全 医療機器の予防保全をしたい

詳しくは GenbaCompass をチェック。


参考文献

  • 日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業 2023年年報」
  • 日本看護協会「2024年 病院看護実態調査報告書」
  • 河野龍太郎「医療におけるヒューマンエラー」医学書院

よくある質問(FAQ)

Q. 安全ポスト+は医療機関でも使えますか?

はい。建設業・製造業向けに開発されましたが、4M分析機能は医療現場でも活用できます。特に匿名報告とリアルタイムダッシュボードは、医療安全にも有効です。

Q. WhyTraceはP-mSHELLモデルに対応していますか?

はい。WhyTraceは標準的な4M分析に加え、医療向けのP-mSHELLモデルでの分析にも対応しています。

Q. 導入にどのくらい時間がかかりますか?

安全ポスト+は最短5分で導入完了です。QRコードを発行し、病棟に掲示するだけ。WhyTraceも即日利用開始可能です。

Q. 既存の医療安全管理システムと併用できますか?

はい、可能です。安全ポスト+・WhyTraceは独立したシステムとして動作するため、既存システムとの干渉はありません。


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國分 良太

著者

國分 良太

制御設計エンジニア → AI・IoT・DX推進|東京の製造業メーカー開発部門

製造業の現場で設備設計・改善プロジェクト・品質向上施策に従事。なぜなぜ分析(RCA)やリスクアセスメントの実務経験をもとに、現場DXを支援するアプリケーションの開発と情報発信に取り組んでいます。

※ 本サイトは所属企業とは関係のない個人活動です。記載の見解は筆者個人のものです。