交通誘導のKYは、「車にはねられないように注意する」のような一般論になりやすい。現場で役に立つKYにするには、その日の誘導の場面(片側交互通行・車両の出入り・歩行者の誘導・夜間など)を決めてから、危険を「〜して〜になる」の形で具体的に書くことが大切だ。
本記事では、交通誘導のKY例文を場面別に20個紹介し、KYシートへの書き方と4ラウンド法の記入例を示す。例文はそのまま使うのではなく、自分の現場の道路・車両・時間帯に合わせて書き換えて使ってほしい。
交通誘導のKY例文20選|一覧表
| No | 場面 | 危険のポイント(〜して〜になる) | 対策(〜する) |
|---|---|---|---|
| 1 | 片側交互通行 | 対向側の誘導員と合図が食い違い、両側から車両が進入して正面衝突する | 無線で「止めた」「流す」を声に出して確認し、確認が取れるまで車両を進ませない |
| 2 | 片側交互通行 | 最後尾の車両を見落として通行を切り替え、対向車と工事区間内ですれ違えなくなる | 最後尾の車両の車種・色を無線で伝え、通過を確認してから切り替える |
| 3 | 片側交互通行 | 停止の合図に気づかない車両が工事区間に進入し、作業員に接触する | 停止位置の手前に予告看板を置き、早めに停止の合図を出す |
| 4 | 片側交互通行 | 車道側に立って誘導し、車両のミラーが体に当たる | 立ち位置を路肩側に決め、車両の進路に体を出さない |
| 5 | 片側交互通行 | 渋滞でいら立った運転者が合図を無視して進行し、はねられる | 無理に止めようと車両の前に出ず、退避場所を決めてから誘導する |
| 6 | 工事車両の出入り | ダンプの後退を誘導中、死角に入って後輪にひかれる | 運転者から見える位置に立ち、姿が見えなくなったら停止の合図を出す |
| 7 | 工事車両の出入り | 工事車両を公道に出すとき、一般車両の確認が不十分で出合い頭に衝突する | 左右の一般車両を目視で確認し、通行を止めてから工事車両を出す |
| 8 | 工事車両の出入り | バックホウの旋回範囲に入って誘導し、アームに接触する | 旋回範囲の外から誘導し、範囲内に入るときは運転者に合図して作業を止めてもらう |
| 9 | 工事車両の出入り | 誘導中に後ろ向きで歩き、段差につまずいて転倒する | 後ろ向きで歩かない。移動するときは誘導を中断して足元を確認する |
| 10 | 歩行者・自転車 | 歩行者を車道側に迂回させ、通行車両と接触させる | 歩行者通路をコーンとバーで区切り、車道に出さずに通す |
| 11 | 歩行者・自転車 | 自転車が工事区間に速度を落とさず進入し、作業員と接触する | 自転車には手前で降りて押すよう声をかけ、進入口を狭くしない |
| 12 | 歩行者・自転車 | 高齢者や子どもが合図を見ずに横断し、車両と接触する | 横断時は車両を完全に止めてから、声をかけて渡ってもらう |
| 13 | 夜間 | 運転者から誘導員が見えず、はねられる | 反射材つきのベストと誘導灯を使い、照明の当たる位置に立つ |
| 14 | 夜間 | 誘導灯の振り方が小さく合図が伝わらず、車両が停止せずに進入する | 合図の動作を大きく、はっきり行い、停止位置の手前に照明つきの看板を置く |
| 15 | 夜間 | 規制の予告が近すぎて、車両が急ブレーキで追突する | 規制の予告看板と矢印板を十分手前から段階的に置く |
| 16 | 天候・体調 | 炎天下で長時間立ち続け、熱中症で倒れる | 交代と休憩の時間を決め、水分・塩分をとる。体調の変化を無線で伝え合う |
| 17 | 天候・体調 | 雨で視界が悪くなり、運転者が合図を見落として進入する | 雨の日は反射材つきの雨具を着用し、合図と予告看板を早めに出す |
| 18 | 天候・体調 | 冬の早朝に路面の凍結で足を滑らせ、転倒する | 立ち位置の路面を確認し、滑りにくい靴を履く |
| 19 | 交差点・カーブ | カーブの先で規制に気づくのが遅れた車両が、誘導員に突っ込む | カーブの手前に予告看板と誘導員を置き、見通しのよい位置で止める |
| 20 | 交差点・カーブ | 交差点で右左折してきた車両が、工事区間の誘導に気づかず進入する | 交差点側にも誘導員か看板を置き、右左折車にも合図が見えるようにする |
KYシートに書くときは、この表から当日の場面に合う危険を2〜3個選び、道路名や車両の種類など、自分の現場の言葉に書き換える。
交通誘導のKYの書き方|3つのポイント
1. 場面を1つに決めてから危険を出す
交通誘導の危険は場面ごとに大きく違う。片側交互通行なら「合図の食い違い」、工事車両の誘導なら「後退時の死角」、夜間なら「見えないこと」が中心になる。最初に「今日はどの場面の誘導か」を決めると、危険の洗い出しが具体的になる。
2. 危険は「〜して〜になる」の形で書く
「車に注意」では、何に注意するのかが伝わらない。「ダンプの後退を誘導中、死角に入って後輪にひかれる」のように、**行動(〜して)と結果(〜になる)**を書くと、対策も「死角に入らない位置に立つ」と具体的になる。
3. 対策は「〜する」の行動で書く
「気をつける」「注意する」は対策にならない。「無線で声に出して確認する」「路肩側に立つ」のように、誰が見ても実行できたかどうかが分かる行動で書く。
場面別の危険と対策の考え方
片側交互通行|最大の危険は「合図の食い違い」
片側交互通行では、両端の誘導員が連携して通行を切り替える。どちらか一方の思い込みで車両を流すと、工事区間の中で対向車同士が向き合ってしまう。無線での確認を「声に出す」「相手の返事を待つ」まで決めておくことが対策の中心になる(例文1〜5)。
工事車両の出入り|後退時の死角と旋回範囲
ダンプやバックホウなどの工事車両は、運転席から見えない範囲が広い。誘導員が死角に入ると、運転者は誘導員の位置が分からなくなる。運転者から見える位置に立つ、旋回範囲の外から誘導するのが基本だ(例文6〜9)。
歩行者・自転車|車道に出さない
歩行者や自転車を車道側に迂回させると、通行車両との接触の危険が生まれる。コーンやバーで通路を確保し、車道に出さずに通すことを優先する(例文10〜12)。
夜間|「見える」ことがすべての前提
夜間は、運転者から誘導員が見えないこと自体が最大の危険になる。反射材つきのベスト、誘導灯、照明の当たる立ち位置、十分手前からの予告看板で、見えるようにする対策を重ねる(例文13〜15)。
天候・体調|熱中症・雨・凍結
交通誘導は屋外で長時間立ち続ける仕事で、夏は熱中症、冬は凍結による転倒の危険がある。交代・休憩の時間を事前に決め、体調の変化を無線で伝え合える状態にしておく(例文16〜18)。
4ラウンド法での記入例(片側交互通行)
KYシートに4ラウンド法で書いた例を示す。
| ラウンド | 記入例 |
|---|---|
| 作業内容 | 市道の舗装補修(片側交互通行・誘導員2名・無線使用) |
| 1R どんな危険がひそんでいるか | ①対向側の誘導員と合図が食い違い、両側から車両が進入して正面衝突する ②最後尾の車両を見落として通行を切り替え、工事区間内で対向車とすれ違えなくなる ③車道側に立って誘導し、車両のミラーが体に当たる |
| 2R これが危険のポイントだ | ◎①両側から車両が進入して正面衝突する |
| 3R あなたならどうする | 無線で「止めた」「流す」を声に出して確認し、相手の返事があるまで車両を進ませない |
| 4R 私たちはこうする(行動目標) | 通行の切り替えは、無線の返事を聞いてから行おう |
| 指差し呼称 | 無線確認 ヨシ! |
よくある質問(FAQ)
Q: 交通誘導のKYは、どのくらいの時間で行えばよいか?
A: 作業前のミーティング(TBM)の中で、当日の誘導の場面に絞って行う。危険を2〜3個に絞り、対策と行動目標まで決めれば十分だ。進め方はKY活動の進め方(TBM-KY)を参照。
Q: 毎日同じ場所で誘導していて、KYがマンネリになる
A: 天候・時間帯・交通量・工事車両の種類など、前日と違う点から危険を探すとよい。ほかの現場のヒヤリハットをネタにする方法もある。KY活動のネタ20選も参考にしてほしい。
Q: 誘導員が警備会社の人の場合、KYは誰が行うのか?
A: 作業員と誘導員が別々にKYをすると、合図や退避の約束事が共有されない。工事の作業員と誘導員が一緒にTBM-KYを行い、工事車両の動きと誘導の方法をすり合わせておくのが望ましい。
まとめ
- 交通誘導のKYは、場面(片側交互通行・車両の出入り・歩行者・夜間・天候)を決めてから危険を出す
- 危険は「〜して〜になる」、対策は「〜する」の行動で書く
- 片側交互通行は合図の食い違い、車両の誘導は死角、夜間は「見えること」が中心の危険になる
ほかの作業のKY例文はKY活動の書き方・例文30選に、道路工事全体のリスク管理は道路工事の交通誘導と作業員安全にまとめている。
